第378話 扉に警告文を貼ろうとしたんだが
アダベルの宝物を皆でコンテナに詰め込んでいく。
金貨って色々種類があるのな。
貴重な奴もありそうだが、調べてられないので一緒にしてじゃらじゃら入れる。
宝石類も磨いたやつもあれば原石の塊もあって雑多であるな。
価値のありそうな大粒のもあれば、価値が低そうな濁った原石もある。
これらも、コンテナにポーイである。
「な、なんだか、お金の価値が狂いそうですわ」
「そうですわね、この宝石一つあれば幾つドレスを作れるやら」
子供のお宝をちょろまかしてはいけないぞ~。
監視してるからな~。
カーチス兄ちゃんと剣術部、あと鍛冶部が武具防具を振り分けている。
ほとんどが廃棄場所に送られるな。
「良さそうな物も有るんだが保存状態がなあ。ドラゴンのお宝ってこんなもんか」
「基本的に攻めて来た奴の遺産だろうからなあ、色々だな」
お宝は基本的に金貨、宝石、わずかばかりの武具になりそうだな。
あとはスベスベした巨岩とかあるが、そんな物はここで置いておこう。
まだ、若い竜の財宝だから、しょんぼりした物のようだね。
千年を経た古竜の宝などは凄いらしいぞ。
竜がなんでお宝をため込むかというと、キラキラしてるかららしい。
カラスとか一緒だね。
価値とか解って無いから雑多だし、下の方は砂にまみれてるしで、動物の溜めた物感が凄いね。
「面倒くさい~~!」
アダベルがごごごごと音をたてて、でっかい竜になった。
意外に変身早いな。
「!!」
あ、学園長がアダベルを見て固まった。
「学園長、中身は子供です」
「あ、ああ、そうだったな」
学園長は気を取り直した。
『どうした、学園長』
「古語! い、いや、余りに綺麗なので見惚れてしまったよ、アダベル」
『……わ、我にお世辞を言ったとて、何もあたらぬぞ。……この宝石は要らぬか、我の鱗と同じ色だ』
「要らないよ、アダベルの大事な物なんだろう」
『う、うむ』
というかアダベルは竜になってもチョロいな。
お洒落組も目を丸くしてビビってるな。
「こ、こんなに大きな……」
「ふわあ……」
『どうした? メリッサ、マリリン。我に見惚れておるのか?』
「え、ええ、凄く綺麗ですわ、アダベルさま」
「キラキラと鱗が輝いていますわ」
『ふふふ、そうだろうそうだろう。宝石は要るか?」
「要りませんわ、アダベルさまが大事になすってくださいな」
「そうですわそうですわ」
アダベルはにんまりとした。
竜なのに表情が豊かだな。
『この大きさならば仕事も楽だ』
アダベルはでかい手で金貨とか宝石とかを適当にじゃらじゃら箱に入れた。
「これ、分別しなさい」
『面倒くさいのである』
「だめですよ、アダベルさま」
アダベルの足下で、学園長とお洒落組でわちゃわちゃしておる。
踏むなよ、アダベル。
「こういうのを入り口に張るのはどうか」
コリンナちゃんが大きめの羊皮紙に『ここから教会施設につき、立ち入りを禁ず』と書いた物を持って来た。
「いいねえ、効力は解らないけど牽制にはなりそうね」
飛空艇の格納庫までは二重の光魔法での封鎖を解かないといけないから、まあ、普通の冒険者だったら無理なんだけど、えらく攻撃力の高いパーティだと破られる危険性があるからね。
格納庫の壁はアダマンタイトだけど、地下教会との扉は普通の石造りだし。
「一緒に行って貼ってこよう」
「たすかる。糊のたぐいはあるかい?」
うーん手持ちにないなあ。
と思ってポケットを探していたら、カロルがやってきて何かの瓶を出してきた。
「糊よ」
「錬金術士というのは何でも持ってるの?」
「瓶にラベルを貼るからね、収納袋にあるわよ」
おお、そうなのか。
筆も貸してくれた。
そしてカロルはまた、武具や防具の鑑定に戻った。
一緒に来てくれないのかあ。
残念。
「何でもカロルと一緒に行こうとすんな」
「そ、そんな事は思ってないよ」
「ウソばっか」
コリンナちゃんも良く見てるな。
気をつけねば。
通路を歩いて、迷宮側まで行く。
短い階段を上って、ドアのプレートに光魔力を流し込んだ。
がちゃりと戸があいた。
開いたら、向こうでキャンプしていた冒険者と目があった。
「うおおおおっ!!!」
「きゃあああっ!!!」
もう話を聞きつけて迷宮にベテラン冒険者がきてんのかよっ!
結構怖そうな顔で、AランクかBランクぐらいだぞ、あのパーティ!
急いで戸を閉める。
が、冒険者に足を入れられた。
やべえっ!
「へっへっへっ、魔法学園の小娘かっ、こりゃあ運が向いてきたぜっ」
「なんでこんな地下に小娘が」
「しらねえよっ!! 色々分捕った後、楽しんで迷宮に食わせようぜっ!」
「ばっか、こんだけ綺麗な娘だ、こいつも売ろうぜっ!」
な、なんという程度の低い冒険者か!
ゴロツキか!!
貫禄からいうと、ゴールドカードは持ってそうなのにっ。
「コリンナちゃん!! 逃げてっ!!」
「わかった、カーチスさまを呼ぶ!」
だだだとコリンナちゃんは走り去る。
私は必死でドアを閉めようとする。
冒険者どもは押し開けようとする。
くっそー、力が強い。
【船の警報を鳴らしますか】
ブローチが光って、エイダさんが声をかけてきた。
「鳴らしてっ!」
ワーンワーンワーンと通路の奥でサイレンが響き渡った。
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