第374話 森の木霊亭のフルコース 肉料理からデザート
魚料理が終わったので、口直しにソルベが出た。
「コケモモのソルベです」
ガラス容器に入れられた赤いソルベは綺麗だなあ。
パクリ。
おー、すっぱい。
すっぱ甘いぞ。
「すっぱいなあ」
コリンナちゃんがソルベを一匙、口に入れてすっぱい顔をした。
「コケモモだからね」
「どんな木の実だっけ?」
「低木で、小さい赤い実がいっぱい付くやつだよ、コリンナちゃん」
「そうかそうか」
酸っぱい顔をしながらもコリンナちゃんはパクパクソルベを食べる。
実は酸っぱい味も好きだな、きみ。
「マーラー牛のステーキ、森の賢者風でございます」
ギャルソンさんが小ぶりのステーキを私の前に置いた。
キノコと木の実が入ったソースがかかってるね。
美味しそう。
魚料理でパンを食べきったので、テーブルの上のバスケットから貰う。
パンも結構美味しい。
良い小麦を使ってるね。
バターを塗って食べる。
ナイフでお肉を切って口に入れる。
モギュモギュ。
ん~~~~~っ!!
おいしいっ!
味わいが深い良い肉だなあ。
キノコと木の実のソースも香ばしくてキノコ味がしてとても良い。
「美味しいお肉ね」
カロルが微笑んだ。
肉料理に合わせて赤ワインを注いで貰ってちびちび飲んでおられる。
「お肉は地方によって色々な味のお肉があって楽しいね」
「マーラー牛も良い味わいよね、私は好きだわ」
マーラー牛は山間地に適応した寒さに強い種類の牛なので、よく脂がのるんだよね。
お肉は流通に乗せられないので、地方地方で違う味がする。
ご当地の味なんだよね。
フルコースは色々な料理がでて、少しずつ食べるので満足感があるね。
なんだかんだで一時間ぐらい掛かるのだが。
あ、帰りにホルボス山基地でアダベルのお宝を回収するつもりだったけど、どうしようかなあ。
今からだと、学園に帰るのが遅くなるなあ。
まあ、学園長がいるので、門限に関しては問題なさそうだけどね。
書き付けを貰えば一発ですよ。
連れてきて良かった、学園長。
冒険者にお宝を盗まれて、アダベルが悲しむのは可哀想だから、寄るかね。
……、しまった、船の貨物室が空いて無いぞ。
なにかコンテナ的な物に入れて上甲板に乗せるかな。
色々場当たりでいかんね。
肉料理の皿が下げられて、みんながまったりとした空気を発生させている。
美味しい物を食べるとまったりと幸せだよねえ。
「こちら本日のデーセルになります。三種のベリーのプチケーキです」
ギャルソンさんが一皿に三つのプチケーキが乗ったお皿を出してきた。
イチゴとラズベリーと黒スグリがちょこんと乗ってて可愛い。
コーヒーもついでくれる。
良い匂いだなあ。
「料理長はまた腕をあげましたね、とても美味しかったと伝えてくださいね」
「御領主さまにお褒めいただくと、料理長もとても喜ぶと思います。ありがとうございます」
ヒルダさんがギャルソンに料理長さんへの伝言を頼んだ。
ギャルソンさんも嬉しそうだな。
なによりなにより。
パクパクとプチケーキを食べる。
甘酸っぱくて美味しいね。
マーラー領あたりだとイチゴの種類が違うね。
小さくて甘い感じだ。
「マコト、服はいつ頃できる?」
アダベルがプチケーキを頬張りながら聞いてきた。
「土曜日にできあがるわよ」
「じゃあ、また飛空艇でここにくるのか?」
「飛空艇で来るわよ」
「いっしょに行く、そして、またここの料理を食べる!」
「あはは、一緒にくる?」
「行くっ!」
まあ良いんだが、なんだかお洒落組もまた来たそうにしてるなあ。
「さて、皆さん、我々聖女派閥はマーラー領のドレスを手に入れました。新入生歓迎ダンスパーティは今度の日曜の夜です。場所は講堂ですか? 学園長」
「そうだよ、キンボールさん。一年生はデビュタントの場だ、是非楽しんでくれたまえ」
学園のデビュタントを済ませば、そこから夜会解禁になる。
記念の行事なんだな。
まあ、こっそり夜会に紛れ込んでいる一年生も結構いるんだがね。
夜会というのは、貴族にとって大事な社交の場だ。
普通のお家でも、半年に一度ぐらいは夜会を主催して知り合いの貴族と親睦を深めるのだよ。
キンボール男爵家でも年に二回ぐらい夜会を催して下級貴族の学者さんたちを招いてわいわいやっていた。
美味しい物を食べる事が出来るので楽しみだったなあ。
夜会が大事なのは、そこが結婚相手を探す場である事と、派閥の構成員を探す場でもある事だね。
ほら、貴族の関心はお家の存続だから。
皆に誇れる立派な結婚は大事なのだ。
コリンナちゃんも、きっと在学中に婚約者を見つけて卒業と同時に嫁いで行くのだろうなあ。
……行政府に入ると言うことは、彼女は、サーヴィス先生とかバッテン先生の職業女性ルートなのか?
うーん、どっちが幸せかねえ。
まあ、コリンナちゃんぐらい有能ならお仕事に頑張るのも良いか。
うんうん。
「それでは、あと、五日、ドレスの着付け、ダンスの練習にはげみ、聖女派閥として恥ずかしく無いデビュタントにいたしましょう」
私が宣言すると、皆が拍手してくれた。
ありがとうありがとう。
コーヒーをかぷりと飲む。
「ああ、楽しみですわね、マリリン。私、学園のデビュタントが夢でしたの」
「そうですわね、メリッサさま。私もちゃんとしたエスコートの相手を見つけられて嬉しいですわ」
「まあ、マリリンったら、うらやましいわ」
デビュタントのエスコートのお相手というのは色々と難しくて、婚約者がいればいいんだけど、居ないと友達の男性に頼む感じになる。
んで、どうしても見つからない場合、兄弟とかに頼む感じになる。
それでも見つからない場合は、ダンスパーティ自体に出られない、という感じになるよ。
まあ、派閥の長が所属の騎士を回してくれる事が多いし、そこから恋が始まる時もあるんだけどさ。
カトレアさんと、コイシちゃんが、カーチス兄ちゃんの関係の騎士にエスコートしてもらうのがそれよね。
よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。
また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。




