第372話 破廉恥メイド服をデザインする
うはうは笑いながらデザイン画を描いていたら、上の階からゆりゆり先輩が降りてきた。
そういや、ショッピングチームに居なかったな、この人。
「ユリーシャ先輩は何をやってたんですか?」
ドレスは学園で採寸済だし。
「ミーシャの採寸を済ませてきましたわ、つきましてはミーシャのメイド服をデザインしてくださいませ」
「メイド服かあ、良いなあ」
この世界のメイドさんは本格メイドさんなのでロングスカートなんだよね。
まあ、男性用エロゲーじゃないからね。
さらさらさら。
「まーっ、まーっ!!」
「ちょと、マコト、スカートが短すぎない?」
「ドロワースが見えるぞ」
「これは見せるドロワース」
「「「「「!!」」」」」
その時、採寸室に衝撃が走った!
「は、はずかしいですー、こまりますようマコトさまー」
「作りましょうミーシャ、大丈夫、ペントハウス内で着ればいいわっ」
ゆりゆり先輩がふんすと宣言した。
ミーシャさんの目から光が消える。
「は、破廉恥な服だなあ、こんなに短いスカートだなんて」
「まったく、ゆるせんな」
学園長がお冠だが、バルドル部長はまんざらではないようだ。
カロルはそっぽを向いているし、コリンナちゃんは苦笑している。
「そうだ、アダベルこれをあげよう」
私はアダベルの首に、聖心教のシンボルをかけた。
「なんだこれ? 魔力あるけど」
「聖心教のシンボルよ、魔除けになるわよ」
「ほーん」
アダベルはペンダントのシンボルをいじっている。
あんまり喜んでないな。
「アダベル、それは皆が持ってるものだ、ほら私も持ってる」
学園長が胸元からシンボルを出した。
「ん、ガクエンチョのは魔力が薄いぞ」
「そうかい? 魔力?」
「あ、アダベルにあげたやつはさっき聖別したので」
「ほう、マコトくんはシンボルに聖別ができるのかね?」
「ええ、一応正式な聖心教の司祭ですので」
……、まずいな、これはまた聖別をおねだりされる流れ。
「なあなあ、マコト、ガクエンチョの奴も魔力つけてやってよ。可哀想だよ」
「アダベル、君はなんて優しいんだっ」
「ガクエンチョ死んだらやだもんなあ」
ええい、ドラゴンの癖に爺転がしな奴め。
効果は抜群だ。
カロルが部屋にあった水差しを持って来てくれた。
聖別して欲しい奴らが学園長の後ろに並んだ。
しゃーない。
私は水差しの水を祝福した。
「おお、光る!」
「とてもありがたい感じになりますわね」
聖なる光だからなあ。
人間の心の迷いを消す効果があるとか無いとか。
学園長の銀の高そうなシンボルに聖水をちょちょっと垂らして聖別する。
「おおっ!! お揃いの魔力だ、ガクエンチョ!」
「そうか、それは嬉しいな、アダベル」
二人は嬉しそうにシンボルを打ち合わせてチーンと澄んだ音を立てさせた。
まったく学園長もアダベルにだだ甘だな。
「あー、何をやってますの?」
「マコトがシンボルに聖別してる」
やや、買い物組が帰ってきおった。
面倒くさい所に。
「ここに並べばいいんですの?」
「ここが最後尾でーす」
コリンナちゃんが列を仕切っているな。
そして、列を見ると、セバス爺ちゃんとか、舘のメイドさんなんかもならんでやがる。
まあいい、まあいい、聖水をちょっと垂らすだけだからな。
さくさく列を消化して、メリッサちゃんの番になった。
「なにか良い物あった?」
「ありましたありました、ハンカチーフやスカーフの良い物が安いですわ。やっぱりこういう物は産地で買うにかぎりますね」
「メリッサさまはめざといのですわ。掘り出し物を沢山お見つけに」
「おほほ、いやですわマリリン」
買い物のおばはんかあんたらは。
「聖別が終わったら食事にいこう」
「そうだなあ、コリンナちゃん」
くそう、カロルはオスカーと楽しそうに談笑しておる。
ぐぬぬ。
セバス爺ちゃんのシンボルが最後であった。
真鍮のメッキのハゲハゲシンボルであった。
「先代のマーラー伯に戴いた宝物でしてな。安物ですが、愛着がありますです」
「そういうのが本当の宝物よね」
シンボルは高ければ良いという物では無いからね。
セバス爺さんを末永くお守りくださいね。
女神様。
さて、聖別も終わった。
皆の女神シンボルも聖なるエネルギー満タンである。
きっと良い事があることでしょう。
たぶん。
女神様の恩寵って、なんだか遠回りでわかりにくいんだよねえ。
有ると思えばある。
の、精神でありますよ。
「マコトおつかれさま」
カロルがねぎらいの言葉をくれた。
「まあ、たまにはね」
みんな聖別したシンボルを持ってニコニコしてるしね。
そういうのは好きなんだ。
「さあ、ヒルダさん晩餐に行こう」
窓の外が暗くなってきた。
「はい、街の中心部ですから、すぐそこですわ」
「なんと、御領主さま、言ってくだされば、舘での晩餐会を催しましたのに」
「急な事だしね、セバス。森の木霊亭よ」
「ああ、あそこならば、予約はなされましたか」
「ぬかりはないわ、あと、王都へお針子を三人連れていきたいの、皆さんの服を調整しなくてはならないから」
「かしこまりました、腕利きのお針子を呼びます。飛空艇に乗せていただけるので?」
「はい、領袖にはおねがいしましたよ」
「それはそれは、王都行き、しかも飛空艇と言えば、誰も文句は言いますまい」
そりゃあ、そうだよね。
夢の王都、三食宿付き、飛空艇送迎は好条件だな。
「泊まりはどうするの? ホテル?」
「タウンハウスに泊めますわ。食事もそちらで。作業場に集会室を使わせていただくとありがたいです」
「ああ、丁度良いや、アダベルが寂しくなくて良いでしょ」
「一石三鳥ですね」
私たちは笑い合った。
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