第370話 冒険者ギルド、マーラータウン支部
マーラータウンのギルド支部は、中央通りから、ちょっと入った所にあった。
「こんにちはー」
王都のギルドしか知らないから新鮮だな。
割と小さくて、なんか老舗っぽいインテリアだね。
酒場が併設してあって、目つきが悪い冒険者がいるのもお約束だ。
「まあまあ、これはこれは、御領主さまではありませんか、何か御用ですかな?」
「今日は私じゃないわよギルド長。聖女さまが小間物魔物を売りたいそうです」
なんだかにこやかなはげ頭がやってきて揉み手でヒルダさんに対応しておる。
「これはこれは、聖女さま、お越しいただけて光栄の至りです。私は冒険者ギルド、マーラー支部の支部長、エンゾと申します、以後お見知りおきを」
エンゾさんは綺麗にお辞儀をした。
どうも、冒険者あがりっぽいね。
にこやかにしてるけど、あちこちに傷痕がある。
「買い取りはどうなってますか?」
「あちらの買い取りカウンターでお願いします」
よし、行ってみる。
トコトコと歩くと、地味なお姉さん職員が頭を下げてきた。
「買い取りはここですか?」
「はい、魔石ですか、死骸ですか?」
「死骸を売ります。角兎とカピパラです」
「はい、承りますよ。毛皮の動物は需要が高いのであるだけいただけますか」
私は収納袋から、角兎とカピパラの死骸を全部出した。
カウンターの上に山になったね。
「あらあら、王都近郊の種類ですね。ちょっと色が付きますよ」
お姉さんはアバカスをパチパチと叩いてこちらに提示した。
コリンナちゃんを見ると、彼女はうなずいている。
「では、それでお願いします」
金貨一枚と、銀貨数枚を貰った。
自動的に出てきたダルシーの差し出すお財布の中にお金を入れた。
さて、ギルドの用事は終わった。
カーチス兄ちゃんとエルマーが、マーラー領らしい地図を見上げていた。
「なんの地図?」
「近隣のダンジョンの地図だな。結構数があるな」
「Eダンジョンから……、Aダンジョンまで……ある」
Aダンジョンは結構難しいやつだな。
近くに大きめの街があるね。
「おう、学生、泊まり込みでダンジョンアタックに来たのか? 案内してやろうか」
酒を飲んで赤ら顔のおっちゃんが寄ってきおった。
「いえ、もう帰るので、また今度ね」
「えー、良いダンジョンが多いんだぜ、マーラー領は、あははは」
「そうみたいね、今度来るから、その時はお願いね」
「おうおう、おっちゃんに任せておけ」
昼間から酒を飲んでるおっちゃんは駄目だろうなあ。
「今度一緒に行こうぜ、マコト」
「あんまり気がすすまないね」
とはいえ、ダンジョンの走破数は成績に加算されるから二年生になったらやっておきたいところだね。
ギルドを出て、中央通りに戻る。
ショーウインドウを見ながら、ぶらぶらと歩く。
「あのカピバラ帽、かわいいね」
カピバラの顔が付いた可愛い帽子が飾ってあった。
「これから暑くなるぞ、マコト」
「いやあ、寒い日もあるしさあ」
「またにしておきなさいよ、マコト」
なぜ私の友達は理性的でしわいのだろうか。
まあ、私もあまりお金使う方じゃないけどね。
類は友を呼ぶか。
「エルザ、何かアクセサリーでも買うか?」
「いえ、結構ですわカーチス様、私はあなたの隣で歩けるこの時間が嬉しいのです」
「な、なにをいうか」
わっはっは、カーチス兄ちゃんが照れておるぞ。
エルザさんも幸せそうだな。
しかし、王都とは違う空気で、建物の雰囲気も違う街だね。
北なので、王都より二三度気温が低いし。
夕方の空が高いね。
山国って感じだ。
銀のアクセサリー屋さんがあるな。
聖心教のシンボルのアクセサリーもある。
カロルに、これ欲しい? って目で言ったら、黙って胸元からシンボルのペンダントを出された。
ちなみに、聖心教のシンボルは二重円だ、内側の円が自分の魂で、外側の円が女神様だと言われている。
コリンナちゃんは? と見ると、彼女もシンボルを出した。
みな、敬虔な聖心教徒だねえ。
もちろん私も胸に下げておる。
アダベルにでも買っていってやるか。
「このペンダントをください」
「はい、お包み……」
お姉さんは私を見て固まってしまった。
「あ、あの、すごく聖女候補さまに似ていらっしゃいますね、ご、ご姉妹様ですか?」
「いえ、本物ですよ、良く解りましたね」
「去年の暮れに、大聖堂まで行って参拝してきまして、その時にご挨拶に立ったマコトさまを見ていて、その、あの、すごいです、嬉しいです」
お姉さんはバタバタした。
いや、売って下さいよ。
「あ、お水ありますか、聖別してから送りたいので」
「は、はいっ!! あのあの、私のシンボルも聖別してくださいませんかっ! そ、そのシンボルはさしあげますのでっ!」
「そんな、わるいよっ」
ああ、お姉さんは慌てて店に引っ込んでしまった。
敬虔な教徒さんは、すぐ私に物をくれようとするので困るなあ。
「聖別は思いつかなかった」
「ああいうのは司祭様がしてくれる……、マコトは司祭さまだったわ」
「ははは、まいったか」
「参ったので、私のも聖別して」
「わたしもー」
カロルとコリンナちゃんが、自分のシンボルを出してきた。
そして、カーチス兄ちゃんとエルザさんと、ヒルダさんと、エルマーまで。
貴様ら、敬虔だなっ。
お姉さんがいそいそと水瓶を抱えてきた。
「普通の生活用水で大丈夫ですか、教会まで行ってきます?」
「水ならなんでも大丈夫よ」
エルマーに出してもらうべきだったか。
『その水、生命の深淵を循環する母なる水よ、我はあなたに祝福を与え、邪悪や汚れから解き放ちたもう。願わくばあなたが良き人の間を流れ、縁を繋いでくださるように』
私は願いを込めて水瓶の水に聖句を唱え、光魔力を染みこませた。
ふわっと水が光輝いた。
あとは、水瓶の水をそれぞれのシンボルにちょっとずつ垂らしたら聖別の完了だ。
ちょいちょいちょいとな。
「あ、ありがとうございます、感激です聖女さまっ。あの飛空艇でいらっしゃったんですね」
「うん、王都から来ましたよ」
「また是非お越しください、またサービスしますからっ」
「い、いや、お金払うよ」
「とんでもないとんでもない、王都でシンボルを聖別して貰うのだって寄進がいりますからっ」
「ダルシー」
「はい、マコトさま」
「無理矢理払って」
「かしこまりました」
ダルシーは重々しくうなずき、懐から財布を出した。
「半分! 半分は寄進させてくださいっ! 後生ですからっ!!」
ダルシーがこっちを見た。
しゃーないか。
私はうなずいた。
「では、半分で、おいくらですか」
「二千五百ドランクです」
五千円のシンボルか。
銀製だし妥当だな。
ダルシーはお金を払った。
お姉さんはシンボルを胸に抱いて、何度も何度も頭を下げた。
嬉しそうだなあ。
ありがたや。
派閥員のみんなもシンボルを手に挟んで私を拝んだ。
やめろ。
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