第361話 錬金教室の女子たちとお風呂に行く
新しい入浴剤を詰め終わって、実習組のみんなに小瓶を配った。
それでは、錬金実習の女子だけを集めて移動であるね。
私以外はみんな土属性であるな。
校舎内をぞろぞろと移動する。
今日はあちこちに移動する日だなあ。
昇降口を出て、女子寮に向かう。
変な時間に外にでるのは新鮮だなあ。
「サーヴィス先生、無理しないでくださいね。もう、若くないのだから」
「うるさいね、キンボールくん。学者には無理をしなければならない時があるのだ」
「借りて帰れば良かったじゃないですか」
「キンボール教授が持ち出しを許可してくれなかったんだ」
お養父様も本の事になるとうるさそうだしなあ。
入り口をくぐり、詰め所の護衛女騎士に挨拶をして女子寮の中に入る。
「女子寮での毎日をかみしめるようにして楽しみなさい」
「はあ、なんでですか?」
「大人になっても、ずっと夢に見るから。本当に懐かしいわね」
サーヴィス先生も魔法学園出身なのか。
どんな生活だったんだろうなあ。
「私の頃は料理が不味い業者の頃で、本当に酷い目にあったわ」
「ご飯が美味しく無いのは困りますね」
どうやら、女子寮食堂のスタッフは時々変わるので、美味しい時期と、不味い時期があるらしい。
まあ、予算の関係とか色々あるんだろうね。
階段を降りて、地下大浴場の前に着く。
脱衣所に入るが、今は誰もいないっぽい。
時間によっては、洗濯所の人とか、学園のレストランのスタッフとかが入っている時もあるらしいね。
サーヴィス先生はあくびをしながら服を脱ぎ始めた。
私も脱ごう。
カロルも脱ぎはじめる。
人前に裸になるのは、上位貴族ほど恥ずかしがらない。
なんでかというと、メイドさんに脱がして貰って世話をしてもらうのが日常になってるからだね。
わりと下級貴族の子女の方が恥ずかしがるね。
収納袋から、新作入浴剤の中瓶だけを持って大浴場に入る。
やっぱり二十四時間お風呂に入れるのは良いねえ。
「では、入浴剤を入れますよ」
「ああ、やっておくれ」
全裸のサーヴィス先生は威厳が無くなるねえ。
そんな事を考えながら、瓶の中のオレンジ色の薬液をお湯に注いだ。
ふわりとタイムの良い匂いがして、一瞬お湯と反応して白濁し、そのまま湯船に広がっていった。
「白濁系なのね」
「前のは透明になったのに、いろいろと違うわね」
さて、観察をしててもしょうがないので、かけ湯をして湯船に入る。
「あ”あ”あ”あ”あ”」
「年寄りっぽいぞ、マコト」
「ほっといてちょうだいよ」
なかなかピリピリした肌触りで効きそうな感じ。
お湯がとろりとしている感じがあるね。
「あ”~~~~~~~」
サーヴィス先生がとろけたような表情で湯船に肩まで浸かった。
「きくねえ~~、このお湯、いいわ~~」
先生は全身でお風呂を楽しんでおるな。
「お、肌がすべすべになるな」
「本当ね、コリンナ」
「美肌効果、あるかしら」
タビサさんが顔にパシャパシャお湯をかけた。
真似をしてガスコインさんも頬にお湯をかける。
「あら、頬がつるつる」
「良いですわね、疲れが抜けて行くようですわ」
サーヴィス先生は大きいおっぱいをお湯に浮かせて、小声であ”~~あ”~~言っていた。
なんとも年寄りくさいなあ。
「皆さんが午後の授業をしている時にお風呂に入れて、なにやら嬉しいですわね」
「役得という物ね」
タビサさんとガスコインさんがしみじみと語っていた。
本当にね。
「うん、疲労回復は確かに効果があるね。肌も湿潤になり、つるつるするし」
サーヴィス先生も顔にパシャパシャお湯を掛けた。
私もやってみよう。
パシャパシャ。
……。
よく考えたら、いつもヒールを掛けてる私の肌には関係が無かった。
いつも通り!
でも、前の入浴剤よりも、肌への効きが良いみたいね。
リラックス効果は前の方が上か。
こんなにはっきり効果が現れるんだね。
雑菌由来の皮膚疾患とかにも効果がありそうだ。
みんな思い思いにお風呂の中でリラックスしているな。
暖まったので、洗い場でダルシーに洗って貰った。
いつまでも慣れないなあ。
照れくさい。
髪を洗ってもらう時は気持ちよくて良いのだけれど。
隣でカロルがアンヌさんに洗って貰っていた。
生まれながらの伯爵令嬢は堂々としているね。
湯船に戻って暖まり直した。
なんだか、みなの肌が前以上につやつやになっているな。
おそるべき効果。
「ふう、元気が戻った、ありがとうキンボールくん、これで放課後も本が読めるよ」
「家に帰って寝て下さいよ」
「ははは、ここしばらく自宅には帰っていない。魔法塔の仮眠室が自室だよ」
「帰りましょーよ」
「いろいろ忙しくてね」
ウソだ、無精なだけだろうなあ。
研究女子はこれだからいけないな。
お風呂から上がって、ダルシーにバスタオルで拭いてもらい、新しい下着に着替えた。
ドライヤーでブイーンと髪を乾かしてもらう。
結構ドライヤーを持ってる人が多いね。
簡易型の人も多い。
「そうだ、これを渡そうと思ったのだ」
サーヴィス先生が大きい革袋を渡してきた。
「なんですか、これ?」
「簡易ドライヤーのロイヤリティだよ。二百万ドランクぐらいになった。ケーベロスさんには伝票を渡そう」
「ひゃー、売れましたね」
「まだまだこれから。毎月曜日に持ってくるよ」
「はい、カロル、立て替え分」
「ありがとうコリンナ」
コリンナちゃんは二十万ドランクほどをカロルに渡した。
「何の立て替え?」
「ランチクルーズの支払い。どうせドライヤーの儲けが入ってくるからと思って、カロルに立て替えてもらってた」
「あ、忘れてた」
そうか、女子寮食堂のスタッフの賃金と食材の支払いがあるんだった。
「気にすんな、マコトは適当にやってろ、困ったら言うから」
「そうよそうよ、マコトは好きなことしなさい」
「あ、ありがとう。二人とも」
「聖女派閥の事務はしっかりしてていいね」
サーヴィス先生はにっこり笑ってそう言った。
「ほんと助かってます」
本当に助かるなあ。
いつもありがとう。
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