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第357話 アダベルをつれてひよこ堂へ行く

 ひよこ堂を目指して階段を降りていく。

 一階に着いたら、ヒルダさんと、ライアンくんと、オスカーがいた。


「あれ、オスカー、もう良いの?」

「はい、領袖、もう大丈夫です、ご心配をおかけしました」


 カロルが笑って前に出た。


「オスカーさま、良かったわ、でも、あまり無理をしてはいけませんよ」

「はい、解りました、マイレィディ」


 ぐぬぬ。

 カーチス兄ちゃんが私に寄って来た。


「マコト、お前、あれはいいの?」

「いくないが、しかたがない」

「しかし、白騎士オスカーが派閥に入ったのか」

「有名人?」

「ああ、マイケル卿と並ぶ豪の者だ、剣術部の先輩でもあるな」


 そうだったのか。


 三人を交えて、昇降口に向かうと、ゆりゆり先輩が待っていた。

 なんだろう、目が怒ってるぞ。


「マコトさま、あれはどういう事なんですの?」

「いやあ、その、仲良し?」


 ゆりゆり先輩の視線の先には、談笑するカロルとオスカーの姿があった。


「百合の間に挟まりに来る男子には死あるのみですわっ」

「んまあ、そのー、カロルを信じて、ほっといてあげて」

「そうですかー?」


 まったく、ゆりゆり先輩は百合原理主義だなあ。

 私も割って入りたいけれど、オスカーの事情が事情だし、割り込めん。

 カロルを信じるよ、私は。

 私の嫁は誰にだって優しいんだ。

 しくしく。


 悲しみの心を抱いて私たちは校舎を出た。


「あら、あの子はなぜ中庭で寝てらっしゃるのかしら」

「中等舎……、小等舎の子ですかしら」


 なんだか、中庭の方がざわざわしてるな。

 目をやると、アダベルが中庭の木陰で寝ていた。

 何をしているのか、あの邪竜は。


「あら、アダベルさまですわ」

「マコトさま、ランチに誘ってきてもよろしいですか?」

「うん、連れて行こう、話も聞きたいし」


 メリッサさんと、マリリンのお洒落組が、とととととアダベルの元へいった。


「アダベルさま、こんにちは」

「何してらっしゃるの?」

「! おおっ、メリッサ、マリリンっ!! 探してたよ、あ、マコトにカロルも居る!」


 アダベルは立ち上がり、メリッサにハグをして、マリリンに飛びついて頬ずりした後、こちらに駆け込んできた。


「なあなあっ、マコト! どこ行くのどこ行くの?!」

「お昼ご飯を買いに行くよ、アダベルもついてきなさいよ、おごるよ」

「ごはん、ごはんかっ! 人の食べ物は色んな味がして面白いなっ、行くよっ!」


 よし、アダベルは暴れん坊なので、手を繋いで引いていこう。

 人化してると手が温かいな。

 青竜なのに。


「昨日は大丈夫だった?」

「大丈夫、ガクエンチョは良くしてくれたよ。美味しい物沢山食べたっ」

「そうかそうか、それは良かったね」

「なんか、ふわふわのベットで寝た。小さい湯船でお風呂に入った。朝からマコトたちを探しに行こうとしたら、お昼まで待ちなさいって言われたよ」


 学園長、グッジョブ。

 午前中に来られてもかまってあげられないからね。

 ちゃんとおもてなしをしてくれたようだね。


 なんだかアダベルは小さいから、妹が出来たみたいで楽しい。

 ワクワクするね。


「今日はどこに行く?」

「パン屋でパンを買って、公園でみんなで食べるのよ」

「おー、パンって、あの白くてふわふわだな?」

「色々と種類があるわよ」

「色々あるのか、すごいっ!」


 みんなの目もアダベルに優しいね。

 わいわいと、おしゃべりしながら、ひよこ堂に着いた。


「これがパン屋か!」

「はい、ちゃんと列を作って並んでね」

「お、おう、凄いな」


 クリフ兄ちゃんが寄って来た。


「よう、マコト。ええと、この角と尻尾が生えてるのは誰?」

「アダベル!!」

「そ、そうか、僕はクリフだよ、よろしくね」

「クリフ!! マコトと似てる!」

「兄妹だからね」

「おー、兄妹なのかーっ」

「クリフ兄ちゃん、この子はアダベルと言って、北方の竜人族の子供よ」

「そうかー、王都にようこそ、アダベルちゃん」

「うんっ、王都面白いっ」


 べつに本体はでかい竜だと兄ちゃんには言わなくても良いだろう。

 列が動いて、私たちはお店の中に入った。


「おおーっ!! これが全部パンかっ!!」

「全部パンだよ、色々な味があるのよ」

「色々な味!! どれだ、どれが美味しい? クリフ!」

「そうだねえ、アダベルちゃんは甘いのが好きかい? それともお肉っぽいのが好きかい?」

「両方好きだ! 甘いのは最近好きになった。肉は昔から好きだ」

「よし、では、聖女パンと、厚切りベーコンサンドだね」

「そうか、解った、それを食べる。すぐ食べて良いのか?」

「みんなが買って、公園に行って食べようよ」

「そうか、楽しみだなあ、楽しみだなあ」


 もう、よだれよだれ。

 どれだけ食いしん坊か、この竜は。

 私はハンカチでアダベルの口元を拭いてあげた。


「マコトはどうする?」

「私は聖女パンと、ナポリタンパン」

「わかった」


 クリフ兄ちゃんが、アダベルのパンと、私のパン、それからソーダを亜麻袋にそれぞれ入れてくれた。

 二人分のお金を払う。


「あったかい! すごい良い匂い! 早く食べたい!」

「まってまって、みんなで一緒に食べるともっと美味しいから」

「そ、そうなのか、うん、そうかっ!」


 私はアダベルの手を引いて、お店の外に出た。


「パン屋楽しいなっ」

「気に入ってくれて嬉しいよ」

「お腹がすいたらパン屋に行けば食べ放題なのか?」

「だめよ、お金を払わないと」

「お金? あの丸くてキラキラしたやつか?」

「そういえば洞窟に沢山あったわね」

「お金さえあれば、食べ放題か?」

「まーね」

「ご飯が終わったら取りに行ってくる」


 まあ、お金は持ってても問題は無いでしょう。

 だが、問題が一つあるな。


「アダベルの宝はどこか別の所に隠さないと駄目ね」

「なんでだ?」

「ホルボス山ダンジョンから飛空艇が出たとなると、腕が立つ冒険者が来るかもだから、お宝を取られちゃうよ」


 アダベルはショックを受けた表情を浮かべた。


「それは、困る。取られるのはいやだ」

「ドラゴンになれば、一気にお宝は運べるの?」

「ちょっとずつ手に持って運ばないといけないから、時間が掛かるよ」

「とりあえず、今日、飛空艇でマーラー領に行くから、帰りにホルボス山によってお宝を積んじゃおう。隠し場所は後でみんなで考えよう」

「それはいいな、マコトありがとうっ!」


 そう言ってアダベルはにっぱり笑った。

 財宝はアダベルの財産だからね、誰かに盗られると可哀想だしね。

 どこか安全な隠し場所は無いかな?

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― 新着の感想 ―
[一言] まあ実際百合というかレズは簡単に男に寝取られたりするみたいだしなぁ、こういう世界観で同性同士だと将来性全く無いし。
[良い点] うん、超同意!百合百合を邪魔しては行けないですw オスカーさん、有名のほどの剣士ですかよ!?ああも不覚を取られたのに? しかしまぁ、マイケルさんと並べなら確かに大した事が無いでしょうw
[一言] 王子どころか竜まで来るひよこ堂 オスカーはカロル愛で暴走するだろうか
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