第355話 ランチクルーズ計画が始まる
甘々ポリッジを平らげて、みんなで登校である。
昇降口の魔法学園新報の壁新聞が更新されているな。
どれどれ
『学園に麻薬の魔の手が! スラム街への拠点攻撃に金的令嬢大活躍!!』
先週の麻薬捜査系の記事が載ってるな。
うんうん、なかなか正確な記事だね。
「マコトさま、酷いです!」
いつの間にかレイラ先輩に後ろを取られていた。
さすが新聞記者さんは距離を詰めるのが上手い。
「なんでよ」
「日曜日にあんな大事件を起こしたら記事がかすむじゃないですかっ」
「しょうが無いよう、日曜日にしかダンジョンアタック出来ないし」
どうやら、日曜日に蒼穹の覇者号で乗り付けたのでニュースがかすむと怒っているらしい。
しらんがな。
「水曜日に飛空艇特集を組むので、ご協力願えますか?」
「いいけど、王都一周ランチクルーズでもする?」
「良いですねえ」
レイラ先輩はニマニマした。
女子寮食堂のみんなはお昼は暇なはずだから協力してくれないか頼んでみよう。
ギャラはどれくらい払えば良いかな?
「新聞部って何人いるの?」
「そうですね、メインは八人ぐらい、見習いが四人ぐらいです」
十二人か、丁度良い感じだね。
ランチだから三十分ぐらいで周遊して学園に帰ってくれば良いか。
「面白そう、まかせろマコト」
「コリンナちゃんが事務やってくれる?」
「マコトは計算甘いから。手配の方もお洒落組と一緒にやってみるよ」
おお、ランチクルーズを手伝ってくれるとありがたいな。
「じゃあ、明日のお昼にやってみよう。良いよね、レイラさん」
「あ、あの、ご料金はいかほどに……?」
「一万か、二万ドランクぐらいかな。ランチだしね」
「うう、お手頃だけど、一万からかあ……」
「あ、明日のは、ただで良いよ、ランチクルーズの実験だし」
「え、本当にっ!! それはみんな喜ぶわ」
「あんまり、報道機関を接待するのは良くないんだけどね」
「ま、まあ、それは、そうですけど、えーと、学生だしっ」
そこらへんで妥協しておくのが良いかもね。
うるさい事を言い始めたらきりが無いし。
「大体十二人で計画してみるよ」
「おねがいね、コリンナちゃん」
「コストがどれくらい掛かるか見ないとな。わりと強気の値段でもいけそうだけど。そうすると庶民は手がでなくなってしまうしね」
「そうだねー」
できればお小遣いを溜めたら、ランチクルーズに行ける、ぐらいが良いと思うんだが。
コストも普通の飛空艇よりも安いしね。
だが、あんまり人気で押すな押すなになっても良くないなあ。
商売は色々と難しいね。
階段を上がって教室に向かう。
B組前で、コリンナちゃんと、お洒落組と、エルザさんとお別れ。
また、お昼にね。
A組に入って、エルマーにおはようである。
「おはよーエルマー」
「おはよう……、マコト……、カロル」
「おはよう、エルマー」
そしてジェラルドが、ケビン王子と一緒に寄ってくる。
なんじゃ、おまえらっ。
「物は相談だが」
「なんだよ?」
「黄金の暁号のクルーが、蒼穹の覇者号を見たいと言って来ているそうだ」
「え、なんでまた?」
「伝説の飛空艇を見たいらしい。というのは建前で、お前の操縦が大丈夫か品定めをしたいらしいぞ、交通局が」
「あー、確かにねえ」
「キンボールさんは、ちゃんと操縦を習ってないのだろう、よく飛行できたね」
「魔導頭脳がいろいろと教えてくれるからね」
「また、そんな、博物館級の秘宝を独り占めにしているな」
「しょうが無い、船の備品だし」
「まったく、そんな素晴らしい物は国家に所属するのが筋なのに。とりあえず、本日の放課後はどうか?」
「本日はマーラー領でドレスを取ってこないと。明日、ランチクルーズの試験飛行を行うのだけれど、そっちでどうかな?」
「面白い事を始めるね、さすがキンボールさんだ」
「飲食クルーズの免許はどうなるのか? 船なら免許制だが……、飛空艇でやるのは前例が無いな」
「僕らも行ってもいいかな」
「むう……」
王子様はナチュラルにおねだりをしてくるな。
まあ、良いか、席は空いてるしな。
「解った、その代わり実験クルーズだから手際悪くても怒っちゃやだよ」
「料理人はどうするのだ?」
「女子寮の食堂スタッフにお願いしようかと思ってるよ」
「ふむ、彼らに断られたら、王宮の食堂スタッフに話を通してやろう」
「そうだね、王宮のスタッフも一流だから良いね……。王宮のスタッフはお昼は忙しいだろう?」
「なに、上級スタッフは大丈夫だ。彼らは晩餐会要員だしな」
あ、なるほど。
王宮食堂には、スタッフ用の人員と、晩餐会や舞踏会用のスタッフがいるのか。
外交成果にも関係するから、上級は超一流なんだな。
「明日のお昼となると早めに食堂に連絡しておいた方が良いわよ」
「そうだね、手紙を書くかな」
「そうだな、料理は準備もいるだろうし」
私は羊皮紙に、イルダさん宛ての依頼状を書いた。
カロルとジェラルドがそれを見て、助言をしてくれたので、訂正して、ダルシーに渡した。
なんか、流れでランチクルーズする事になったが、なにげに楽しいな。
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