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第350話 晩餐の席に命令さんがいない

 分かれ道まで戻り、女子寮方向への通路を歩く。

 ここまでくれば学者さんの興味を引くものはないから早いだろう。


 最後の魔力ドアに光魔力を注いで開く。

 よく考えたら私以外開くことがない扉は厳重だよね。

 ぶち抜こうにも、分厚いアダマンタイト合金板だしね。

 よほどの魔導工具がないと無理だろう。


 先の通路の灯りが消えていたので、魔力を投げつけて灯す。


「この、灯りのシステムもシンプルに見えて高級だね」

「そうなんですか?」

「そうとも、光魔力にだけ対応する灯りは触媒が特殊なんだ」


 さようですか、あまり興味が無いですよ。


「マコトさま、これを」


 ダルシーが現れて鍵を出してきた。


「これは?」

「地下階から通路に行くドアの合鍵です。マルゴットが作りました」

「ありがとう、使わせてもらうわ」


 私は部屋の鍵とかをまとめたキーホルダーをポケットから出して地下の鍵を付けた。

 いつでも地下道に入れるのは良いね。

 カロルをさそって夜間飛行とかするかね。

 きししっ。


 通路の端の階段を使って女子寮の地階に上がる。

 こっちからなら、ドアは開くのよね。


「ほう、こんな所に出るのか」

「そうなんです、助かってますよ」


 地階のエレベーターホールの方へ歩いて行く。

 お、みんな居るね。


「あ、マコトさま、地下道を通っていらっしゃったのね」

「みんな集まってるね」

「ジュリエットさまは今日はロイドさまとデートみたいですから、王宮で晩餐じゃないですかね」


 じゃあ、みんな揃ってるね。

 今日はゆりゆり先輩の監視日だから彼女もいる。


「マコトさん、私も飛空艇に乗りたいですわ」

「明日の放課後マーラー領に飛びますから、よろしかったらどうぞ」

「まあ、それは素敵ね、是非ご一緒したいわ」


 聖女派閥が全員乗り込みそうな勢いだけど、搭乗定員的には大丈夫でしょう。


 みんなで食堂に入った。


 クララと手を上げて挨拶を交わす。


「すごいの掘り出してきたんだって」

「うん、キッチンついてるから、そのうちディナークルーズとか企画するよ」

「わっ、それは凄いね。こんど食堂のみんなと行くから中を見せてよ」

「イルダさんが作ってくれれば、美味しいから成功間違いなしだよ」

「そうだねえ」


 二人でにまにま笑い合った。

 ディナークルーズは良いかもね、儲かりそう。

 王族とか上流貴族とかに宣伝して巨額の運賃を請求してやろう。


 さて、トレイを取って今日の料理を乗せていく。

 今日のメインは、鳥のホワイトシチューに、根菜サラダ、コンソメスープに黒パンだね。

 お茶をケトルからカップについでテーブルに持っていく。


 あー、明日はマーラー領に飛ぶんだけど、その前に聖女の湯を仕込んでいかないと。

 飛行前にお風呂行っておくかな。


「何を考えているの?」


 カロルが隣に座りながら私に聞いてきた。


「ん? 明日の準備の事。来週は麻薬退治もしないとだし、忙しそう」

「もうすぐ新入生歓迎ダンスパーティだしね、がんばらないと」

「早めにドレスを持ってこよう」


 向かいにヒルダさんが座った。


「そういえば、明日、マーラー領でドレスとか礼服を注文すると、ダンスパーティまでに出来るかな」

「……、ええ、大急ぎでやれば出来なくはありませんよ」

「ほら、ジュリちゃんとか、オスカーにも作ってあげられるなって。あとアダベルにも」


 ヒルダさんはにっこりと笑った。


「領袖はお優しくていらっしゃいますね。ええ、そういう事ならば縫製組合に掛け合って急がせますわ」

「ダンスパーティの前日に飛べば持ってこれるしね」

「飛空艇が使えると、自由度が高くなりますね」


 よしよし、私も礼服を一着作ろう。

 ふふふ。


 皆が席に付いたので、食事の前の挨拶である。


「いただきます」

「「「「女神に日々の粮を感謝します」」」」


 ぱくり、と鳥のシチューを口に入れる。

 あー、甘くて美味しい。

 ほっこりホワイトシチューだね、ミルクが良く利いている。

 そういや、ホルボス村のお野菜と地酒はリンダさんに持って行ってもらったけど、孤児院の子供たちが食べてるかな。

 美味しく食べていたら良いね。


 ジャガイモと人参がミルクと良く合って甘い甘い。

 んー、美味しい。


「今日も美味しいね」

「イルダさんは偉大だ」


 酸っぱい黒パンをかじって、根菜サラダを食べる。

 シャクシャクした歯触りが良いね。

 口が良い感じにリセットされるね。

 うまうま。


 コンソメスープも透明で黄金色で味わいが深い。

 おいしいねえ。


 毎日美味しい物を食べさせて貰って、食堂スタッフには感謝しか無いね。

 本当にありがとうね。


 心の中でイルダさんたちに手を合わせて、パクパクと食べる。


 あー、美味しかった。


 ダルシーが食後のお茶を入れてくれる。

 うんうん、また美味しくなってるね。

 だんだんとダルシーのお茶の腕が上がるので楽しい。


 ヒルダさんが立ち上がった。


「定時諜報報告をします」


 今の所、スラムに行く生徒はいなくなった模様とのこと。

 その代わり、情緒不安定になっている生徒が何人か増えているらしい。

 なにか事件や事故を起こす前に対応が必要との事だね。

 来週の早いうちに何とかしないとね。

 火曜の放課後ぐらいに動くかな。


「そして、ケリー・ホルスト伯爵令嬢が飛空艇を見た瞬間『やられた』と言って気をうしない、今も寝込んでいるそうです」


 それは何より。

 それで、取り巻き二人だけで命令さんは居ないのね。


 ヒルダさんの報告を聞いた、派閥外の女子生徒がにんまり笑ってサムズアップをしてきた。

 まあ、みなさんで一斉ざまぁだねえ。


「命令さんは結構やばいの?」

「そうですね、衣料への関税十五倍はさすがに衝撃が強かったらしく、現在、ヒルムガルド方面に繊維、衣料の荷がまったくよりつかないようです」

「迂回路を取ってるの?」

「そうですね、さすがにあの関税を払う商会は居ないので、山越えルートや、ホルボス山麓の街道へ流れています」


 まったく、やめときゃいいのになあ。

 早急に鳩通信でも使って関税を解除しないと、被害は広がるばかりだよ。


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― 新着の感想 ―
[一言] >「そうですね、衣料への関税十五倍はさすがに衝撃が強かったらしく、現在、ヒルムガルド方面に繊維、衣料の荷がまったくよりつかないようです」 それってひょっとしなくてもセルフ経済制裁?
[一言] サブタイで命令さんが何か企んでるのかと思ったら、シンプルにぶっ倒れてて草
[一言] >早急に鳩通信でも使って関税を解除しないと、被害は広がるばかりだよ そうやって朝令暮改してると政治的に不安定な領として評判に さらに一度やってしまうとまたやるかも知れないと疑われるので迂回ル…
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