第348話 飛空艇を格納庫に仕舞う
【蒼穹の覇者号、離陸】
プロペラの音が高くなると、おなじみのふわっとした感覚を覚えた。
そのまま、舵輪を引き上げて高度を上げていく。
なんというか、主操縦室に学者さんたちが群れすぎ。
複数のミニエイダさんに、それぞれの先生が始終質問をしているので、騒がしいのであるよ。
ルカっちは長椅子で寝転んでやがるし。
高度が六十クレイドルになった所で出力を上げて前進を開始する。
格納庫入り口まではすぐそこだね。
マップにマークが出るので解りやすい。
渓谷に近づいた所で出力を絞って減速する。
【ビアンカ邸基地の入り口に到達しました。降下を開始してください】
「了解」
というか、正式名称はビアンカ邸基地なのね。
ゆっくりと降下していく。
木々が下からせり上がってくる感じ。
飛空艇は峡谷の間に入り込んでいく。
【基地前の着陸台に到達しました。後退をしてください】
「了解」
後ろが見えないのは怖いな、と思って振りかえると背面の壁に後ろ側の景色が投影されていた。
これは便利だなあ、主操縦席だけの機能かな。
前面のディスプレイの下にも小さく背面映像が映っていた。
舵輪を下に倒して微速後退する。
うむ、白い四角の枠が出ているので解りやすいな。
するすると蒼穹の覇者号は洞窟の中にすべりこんで行った。
幅も高さも、結構余裕がある。
【四番ゲートを封鎖します】
船体が完全に中に入ると、エイダさんの宣言通りにアダマンタイト鋼板のゲートが左右から現れて閉鎖された。
さらに下がる。
【三番ゲートを封鎖します】
音も無く次のゲートが閉鎖される。
さらにするする後退する。
【二番ゲートを封鎖します】
下がる下がる。
【一番ゲートを封鎖します】
さらに下がると円形の広間になっていて、突き当たりだ。
私は着陸脚のボタンを押し下げた
ガチャンと低い音が下から響いた。
【着陸脚展開完了です】
私は舵輪を押し下げる。
とん、という軽い振動がして蒼穹の覇者号は停止した。
【お見事です、マスターマコト】
「結構慣れたよー」
まあ、さっき王都上空遊覧飛行を三回もしたからねえ。
エイダさんに自動操縦してもらっても良かったけど、なんか居ないと悪い気がして私が操縦したのだ。
「おおー、すばらしいよマコト」
「さあ、早く下りて施設内を観察しましょう」
「地下は学園の敷地外にあるようだね。渓谷はどこの権利になっているのか?」
【学園の地上使用権は王国に売られましたが、森や渓谷の権利はビアンカ様のままだと思われます、ここの土地は渓谷と基地がある部分は次世代の光魔力保持者へと権利が譲渡されております】
権利で揉めないように色々手配してくれてるなあ。
さすがビアンカさま。
さすビア。
「なんとも用意周到な、なぜにマリア様の時は飛空艇をお譲りくださらなかったのか」
「マリアさまの時代では、まだビアンカさまの事を覚えてる方がご存命だったので、飛空艇を提供する事による名誉回復を嫌ったのではないですかな?」
ジョンおじさんの疑問に、お養父様が答えた。
「学者さんの間では、ビアンカさまの刑死がウソだったって知られているんですか?」
学者さんたちが、微妙な感じに黙り込んだ。
「いろいろと矛盾する文献があるのでね」
「宰相が馬を飛ばして、ビアンカさまへ意見を聞きに行ったとか、回顧録に書いてあったりね」
「ビアンカさま生存説の本を書くと教会に猛烈な抗議をされるのよ。なので、皆なんとなく書かないわね」
なんとなくのタブーだったわけね。
ガバガバ茶番だったのか。
まあ、庶民をだませればそれでいいんでしょうね。
あの悪役聖女さまは。
【マスターマコト、これをお持ち下さい】
ピッと音がして、計器板横の引き出しが開いた。
中には琥珀色の宝石が付いたブローチが入っていた。
「なにこれ?」
【私、エイダに繋がる専用通信機です。お呼びいただければ、自動でマコト様の元へとまいります】
「それは便利だなあ」
なんだね、女子寮の前で呼べば勝手に蒼穹の覇者号は来てくれるのか。
なんという便利飛空艇なのか。
私はブローチを制服の胸に付けた。
色も合ってるし、いいね。
「わ、私も質問用に欲しいのだが」
「私もお願いしたい」
【申し訳ありませんが、専用通信機の在庫がありません】
学者さんたちが、一斉にしょんぼりしおった。
「エイダさん、現在の操縦士は私だけ?」
【はい、船長であるマスターマコト以外の操縦は受け付けていません】
「カロルとエルマーにも何かあったときの為に操縦士資格を分けたいのだけれど」
【可能です。カロリーヌ・オルブライト様を副操縦士に、エルマー・クレイトン様を機関士に登録いたしますか?】
「おねがいね、エイダさん」
【副操縦士、機関士の登録をいたしました】
「カーチスも武器管制官にしたいけど、あいつ一人で飛空艇に乗って戦争始めそうだからなあ」
「やめておくべき……」
「カーチスは不安だから、黙ってましょう」
それが良いね。
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