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第347話 アダベルの落ち着き先を決める

 それからは大変であった。


 お歴々が中を見せろと言うので、何回にも分けて船内を案内したりだね。

 学者さんたちがエンジンに夢中なのをひっぺがしたり、エイダさんをずうっと質問攻めにしている、主にお養父様とうさまを引っぺがしたりだね。


 王都周遊飛行しろという要望に応えて飛行したりして時間が掛かった。

 入れ替え制で三回飛行したぞ。


 もう夕方になったので飛空艇を格納庫にしまおう。

 そうしよう。

 と、思ったら、やっかいな奴が一人残っている事に気がついた。


「ちょっと、アダベル、あんた巣に帰らないの?」

「まだ人間の世界に居たいんだけど、だめ?」

「いいけど、食事と住むところがいるわよ」

「この船の中に住む~」


 ここに住むのは良いが、食事が無いぞ。

 うーん、あ、そうだ。


 私はいまだに残っている船外の学園長の元へアダベルをひっぱって行った。


「学園長。学園長のお家はどこですか?」

「うん? 学園に隣接しているが、それが何か?」


 学園長はホモだから家族は居ないよな。

 よしよし。


「この子を預かってくれませんか?」

「うん? ……竜人かね?」

「竜人じゃないよ。われは竜。名をアダベルトという」

「は?……」


 学園長はアダベルを見て目を見開いた。


「本当です、ダンジョンで飛空艇を守っていたドラゴンで、人化してついて来てしまいました」

「は?」

「人化解いた方がいいか? マコト」

「や、やめてっ、こんな所で竜にならないで」


 あの図体がいきなり現れたら大災害になるよ。


 学園長は思案顔で考え込んでいる。

 彼に引き取って貰おうかと思ったのだけど、そういや、この人、子供を育てた事ないんだよなあ。

 アダベルは、男爵家の私の部屋に泊まってもらって、お世話は、お養父様とうさまとお養母様かあさまに頼もうかな。


「アダベルトというと王都近郊に住むという邪竜かい?」

「邪竜とはなんだっ!」


 アダベルさんお冠であるよ。


「無理にとは言いません、学園長。駄目でしたらお養父様とうさまに頼みますので」

「いろいろ人間の世界を見てみたいんだよ、ガクエンチョ」

「ふむ、私は事情があって、子供が居ない、すまないが……」


 学園長はふっと言葉を切って、視線を宙にさまよわせた。


「キンボールさん、もしもジェイムズがこの子の事を知ったら……、どう言うだろうね……」

「面白がって家に連れて行くと思いますね」


 あの爺ちゃんも面白がりだったしなあ。

 学園長はふわりと笑った。

 良い笑顔だな。


「そうか、では、私も親友の真似をしようか。アダベルト、私の家にくるかい?」

「いいのか? ガクチョ? ご飯と寝床をくれればありがたい」

「人間の世界を見たいのなら、君もいろいろと覚えないといけないね」


 優しい目をして学園長はアダベルの頭を撫でた。


「しばらく預かって貰えたら助かります」


 私は学園長に頭を下げた。


「いやいや、君には膝を治してもらったしね。それに竜に人間界の事を教えるというのも教育者冥利に尽きるよ」

「これでマコトとはお別れなの……?」


 アダベルの表情が曇った。

 私は安心させようと笑った。


「学園長の家は、ここに近いのよ。だからここに遊びに来れば私はいるよ」

「そっか、カロルも、メリッサも、マリリンも居るなっ」

「みんな、ここに居るよ。明日の放課後においで、また飛空艇で飛ぶから」

「おお、楽しみだ、じゃあ、明日な」

「うん、明日ね、アダベル」

「では、一緒に来なさい、アダベルト」

「わかった、ガクチョ」


 アダベルは学園長に手を引かれて去って行った。

 何回も何回もこちらを振り返った。

 うん、また明日ね、アダベル。


 さて、学者どもを追い出して飛空艇を仕舞おう。

 そろそろ空が暗くなってきたよ。

 王様も教皇さまも帰ったので、残っているのは学者さんたちだけだな。


 飛空艇に近づくとエイダさんがドアを開けてタラップを降ろしてくれた。


「エイダさん、学者さんたちは?」

【全員エンジンルームで研究しています】

「んもう」


 客室ブロックを抜けて、階段を降りて、エンジンルームに入る。

 狭いエンジンルームに学者どもが群れておる。

 カロルとエルマーも居るぞ。

 ルカっちも部屋の隅のベンチで寝転んでやがる。


「どうしたかね、マコト」


 建造ルポを片手にエンジンを見ていたお養父様とうさまが振り返って、そう問いかけてきた。


「もう六時です、そろそろ飛空艇を格納庫に仕舞いたいんですが」

「おおっ! そうか、では一緒に飛行しようではないか」

「格納庫も気になりますね、キンボール教授」


 サーヴィス先生がにこやかに言った。


「ビアンカ様の時代の飛空艇格納庫か、一度見て見たいね」


 ジョンおじさんまで。

 学者どもは駄目かもしれないなあ。


 まあ、良いか、格納庫から図書館へ追い出せば良いか。


「格納庫……、みてみたい……」


 ああ、エルマーは地下道探検の時は居なかったね。


「セキュリティなどは大丈夫なのかね、学園の生徒がいたずらに入ったりしないのかね」

【ご心配には及びません、キンボール教授、アダマンタイト鋼板のゲートが四重にありますので】


 なんだな、ビアンカさまは大金持ち過ぎて頭がおかしいな。

 なんで飛空艇基地のゲートに希少金属板を惜しみなく使っておるのか。


 ……、ひょっとしてホルボス基地のゲートもアダマンタイトなのか?

 ひっぺがして売れば巨万の富が築けそうだな。

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― 新着の感想 ―
[良い点] アダベルという可愛いお友達もできましたな。
[気になる点] アダベルは教会に預けた方が良いのでは? 個人それも貴族に強大な龍を預けるとかトラブルのもとでは?
[一言] >なんだな、ビアンカさまは大金持ち過ぎて頭がおかしいな。 >なんで飛空艇基地のゲートに希少金属板を惜しみなく使っておるのか。 きっとマコトも儲けるようになったらその時には作るのが難しくて高…
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