表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/1512

第34話 冒険者ギルドに行けばハゲマッチョに絡まれるのは必然で

 カロルと一緒に王都を行く。

 良い天気で楽しいなあ。

 ちなみに、カーチスとエルマーは部活に出るので、ゆりゆり先輩たちと一緒に帰りました。

 コリンナちゃんも誘ったんだけど、冒険者ギルドに一ミリも興味が無いので、帰って勉強するそうです。

 というわけで親友のカロルと二人きりで王都デートです。

 わくわくするなあ。


「冒険者ギルドはどこにあるの?」

「裏道にあるのよ、ここを曲がって、そこよ」


 おっ、ゲームの背景のまんまのぼろい建物があった。

 ちなみにゲームでは、冒険者ギルドに行くのもデート扱いだったりする。

 カーチス兄ちゃんとエルマーは冒険者ギルドが好きなんだが、他のキャラは冒険者ギルドに行くと嫌な顔をしてたなあ。


「中にはちょっとガラの悪い人もいるのだけど、マコトは大丈夫?」

「あ、別に平気だよ」

「じゃあ、入りましょう」


 両開きのドアを開けて中に入ると、酒場みたいなテーブル席が並んでいて、悪者っぽい人たちがお酒を飲んでいた。

 その奥に古ぼけたカウンターがあって、綺麗なお姉さんが座っている。

 あそこが受付のようだね。


 ゲームの背景だと、もうちょっと中に入った所から描いているかな。

 ちょと、印象が違う。

 飲み助の悪人どもを描きたくなかったのか、酒場が半分ぐらい写ってないね。

まあ、ゲームで重要なのは受付の方だしな。


 早速、酒場の方からハゲマッチョがやってきた。


「おいおい、ここはお前らみてーなガキの来る場所じゃねえんだ、帰れ帰れっ!」


 うおー、テンプレー、なんか感動的だなあ。

 声優さんと声もにてるのな。

 そういえば、カロルの声も、カーチスも、エルマーも、声優さんの声そのままなんだよね。

 考えてみたら、不思議不思議。


「怖いよう、カロル助けて(棒)」

「え? どうして?」

「うん、私、ハゲマッチョが大の苦手なの」

「それにしては満面の笑顔なんですけど」

「気のせいよっ」


 さあ、カロルの好感度よ、どんどん上がるが良い。


 ジャリジャリジャリーンと、カロルのスカートの中から大量の鎖が落ちてきた。

 本当に、どこに入ってるんだろうか、アレ。


「な、なんだあ、学園のガキどもめ、鎖を出したからって……、鎖?」


 ハゲマッチョはカロルの足下の鎖を二度見した。


「ひいいいいやああああっっっ!! ごめんなさいごめんなさいっ!!」


 受付嬢の人が飛び上がるように立ち上がり、全速力で奇声を上げながら駆け寄ってきた。

 なんだかコワイ。

 受付嬢は、そのまま、カロルの足下へジャンピング土下座した。

 な、なんだ、これ。

 カロルを見てみると、彼女も目を丸くしていた。


「オルブライトさまっ、ごめんなさいごめんなさいっ、うちのギルドマスターがごめんなさいっ!! なにしてるの、ギルマスも土下座よっ!! オルブライトさまの怒りをかって、ポーションの供給を止められたらどうするんですかっ!!」

「あ、いや、その、カロリーヌ・オルブライトさまですか? す、すいません、ギルドマスターのアレン・エドモンズと言います。ごめんなさい、ギルドへのポーションの供給は止めないでください」


 アレン・エドモンズと名乗ったハゲマッチョはカロルに土下座をはじめた。


「ギ、ギルドマスターさんだったんですか?」

「はい、ごめんなさいっ」

「ギルマスには悪い趣味がありまして、魔法学園の生徒さんに絡んでですね。『平民の分際で』とか言われたら、『ふふん、こう見えても俺は伯爵なんだぜ』と言って、冒険者ギルドには身分の上下は無いと、思い知らせる遊びをしていたんですよ。そのうち、偉い人にぶつかって怒られるからやめなさいって、あれほど口を酸っぱく諌言していたのにっ」


 何やってんだ、このハゲマッチョギルマスは。


「い、いやだけどさ、伯爵位より上の魔法学園の生徒さんは、みんな顔を覚えてるしさ」


 ゲームのイベントでは、王子とか、エルマーとか、カーチスに絡んでいたけどなあ。

 ああ、今回と一緒で、私が先に歩いていたからか。


「あの、ポーションの供給を止めたりしませんので、その、立ち上がってください」

「そうですか、助かります、申し訳ありませんでした、オルブライト嬢」

「本当に、馬鹿なギルマスでごめんなさいね」


 大丈夫か、冒険者ギルド王都支部は。


「なに、呆れた顔してんだ。ふん、ここは、お前さんみたいなお嬢ちゃんの来るところじゃあねえんだぞ」


 ああ、ギルマスが、私に絡んできたよ。


「なんだよ、平民の分際で」


 私が乗ってあげると、ギルマスは嬉しそうに笑って。


「へん、実は俺は、伯爵さまなんだぜ、ああん」


 と、言ってどや顔の後、チンピラスマイルを浮かべた。


「ギルマス、やめなさ……」

「うあああっ、おまえっ、ギルマスっ!! 貴様っ!! そのお方が誰か解っているのかーーっ!!」


 怒鳴り声を上げて、酒場の奥から、銀色の甲冑を着込んだ騎士っぽい男が全力ダッシュしてきた。

 あ、やべえ、ブレストプレートにくっきり聖心教のシンボルが彫ってある。

 大神殿うちの関係者だ。


「え、な、なに、サイラス君、この可愛い子は、君の知り合いなの?」

「ギルマス!! 貴様ああっ!! このお方は、聖女様だぞ、頭が、頭が高いっ!!」

「ひいいいいいっ!!」


 再び、ギルマスと、受付嬢と、うちの関係者らしいサイラスさんが、今度は私に土下座を決めた。


「やめろよう」

「そうはいきませんっ!! この愚かなギルマスが、我が大神殿の至宝たる聖女さまを恫喝するなぞ、言語道断っ! このサイラスが無礼打ちをいたしますっ!! ご勅命をいただきたくっ!!」

「いいよう、ただの冗談なんだしさあ。サイラスさんも落ち着いてよ」

「ああ、我が名を覚えてくださるとは、光栄の極み、そして、なんという慈愛に満ちたお言葉っ」


 サイラスさんは感極まって泣き始めた。

 ああもう、だから大神殿うちの関係者はいやなんだよう。

 聖女愛が重すぎるっ。


 カロルと目を合わせてお互い苦笑いを交わした。


「もう、いいから、私たちの用事を済ませたいのです」

「マコトの言うとおりね」

「はい、こちらでお伺いします。ギルマスは邪魔ですから、どっかに行ってください」

「えー」


 不満顔のハゲマッチョギルマスは受付嬢に追っ払われた。

 さて、カウンターについて、用事を……。


「なんでサイラスさんは、私たちの後ろに突っ立ってるんですか?」

「こんなむさ苦しい場所に、聖女さまと、そのお友達を、お二人だけで置いておくわけにはいけません。自分が護衛します」

「いいから、サイラスさんも何か用事があるんでしょ?」

「いえ、自分は魔物退治の依頼を一つ終わらせて、飲んでいただけですので、お気遣い無用です」

「教会騎士の人も、冒険者みたいな事するんですか」

「はっ、我々教会騎士団員は、リンダ隊長から、非番の時は、冒険者ギルドの依頼を受け、魔物を倒し、民を安堵し、実戦の勘をやしなうべしと、言われておりますっ」


 教会騎士は、あまり戦争に出ないので、実戦の機会が無いからなのか。

 訓練だけでは強くなれないからねえ。


 もう、サイラスさんは放っておこう。


「では、オルブライトさま、薬草採取の依頼を百束分、納期は一ヶ月ですね。」

「よろしくお願いいたします。薬草はいつも通り、うちのメイドが取りにきますので」

「はい、うけたまわりました。掲示しておきます。いつもありがとうございます」


 王都の薬草採取の依頼は、錬金術師が出していてくれてたのか。

 大聖堂孤児院の子供たちが、お小遣い稼ぎにやっていたなあ。

 私も護衛がわりに、よく一緒に行って、薬草を摘んだよ。

 私が取った薬草が、回り回ってカロルの手でポーションになったりしたんだな。


 カロルがサインした依頼書を受け取ると、受付嬢さんは、私の方を向いた。


「さて、聖女さまは、いかがいたしましょうか?」

「私は、冒険者登録に来ました」

「ありがとうございます。では、こちらの書類に、必要事項を記入おねがいいたします」


 受付嬢さんが出してきた羊皮紙の用紙に、氏名、住所、連絡先などを書いていく。


「はい、ありがとうございます。こちらがギルドカードになります、血を一滴、ここの四角の所に垂らしてください」


 銀のピンを人差し指に刺して、血を一滴ギルドカードに垂らす。

 カードから、ふわりと柔らかい光が瞬いて、カードの登録は終わった。

 これがあると、王都の城壁の外に出ても、また入るときに通行料がかからなくなるんだよね。


「最初のクラスは鉄色アイアンになります、依頼を何件かこなすと、銅色カッパーに上がれますので、頑張って下さいね」

「はい、がんばります」


 受付嬢さんは、いろいろと注意事項を教えてくれた。

 なるほど、色々約束事があるんだね。

 ギルドカードを無くすと再発行に五千ドランクかかるらしい。

 結構するね。


 さて、これで、依頼を受けて、お金が稼げるぞ。

 っても、鉄色アイアンの間は、そんなに儲かる仕事はないけどね。

 早めに銅色カッパーまで上げたいな。


 冒険の依頼は、酒場と受付の間にある掲示板に貼り付けてある。

 薬草採取の依頼票を貼り付けている受付嬢さんの後ろから、依頼を覗いてみる。


 お昼過ぎだから、あんまり張っていないね。


「新しい依頼は、朝の九時に貼り付けられますので、平日は、学生さんに割の良い依頼は当たらないかもしれませんね」

「学生は、本職の冒険者ではないので仕方が無いですよ」


 本職はこれで食べていくのだから、本気度が違うよね。


 残っている鉄色アイアンの依頼は、薬草採取とか、スライム討伐とか、街の掃除とかだね。

 今度、薬草採取とかやろうかなあ。


「聖女さま、冒険に出られる際は、自分をご用命下さい、この命を捨ててでも、お守りいたします」

「考えておきますね。ありがとう、サイラスさん」

「ありがたきお言葉っ」


 というか、教会騎士さんを冒険に連れて行けば安心だけど、うっとおしいので、やだ。

 検討するだけで、サイラスさんは絶対に連れてはいかんぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ははーん、このギルドギャグ適正高いな?
[良い点] そうか、この主人公を3年間「も」放り込んだのが大神殿なんだもんな…… 主人公に惹かれてるわなそらみんな……
[良い点] ギルドマスターはハゲマッチョ! やっぱこれ系のテンプレは外せませんよね! 大好きです! ウチもそうなんです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ