第345話 飛空艇に最初に駆けつけてきた人は
【マスターマコト、全員下船しました】
「ありがとうエイダさん。私も一回下りるわ」
【はい、おつかれさまでした】
台の上からエイダさんの虚像が消えた。
前世でいう所の立体映像だなあ。
なにげに凝っている、さすがは前期魔導文明の品物だなあ。
まあ、この船のお金の掛かり方も頭がおかしいレベルだけどね。
操縦士席から立ち上がり、ラウンジへのドアを開けて出る。
みな船を下りたみたいで甲板には誰もいないね。
階段を降り、客室ブロックの廊下を歩く。
メインドアのタラップを下りていくと黒山の人だかりであるよ。
「ねえねえ、マコトさん、これなにこれなに?」
「飛空艇よね、小型だわ」
「個人用? どうしたのこれ?」
最初に私につめよって来たのはラクロス三勇士の先輩だった。
部活の邪魔をしてごめんね。
「ダンジョンの奥に埋もれていた、飛空艇ですよ」
「うわあ、凄い、新しい飛空艇が見つかるなんて、百年ぶりぐらいじゃない?」
「直近は誰だっけ、あ、そうそう悪い聖女さんがガドラガで見つけたんだっけ?」
「そうそう、古代の飛空艇エンジンを掘り出して自分用にレストアしたんだよね」
「あ、たぶんそれです。ビアンカ様由来の迷宮にありましたから」
「そうなんだ凄いね~~!!」
きゃあきゃあ騒ぐラクロスさんたちをかき分けてヒルダ先輩がやってきた。
「領袖!」
「あ、ヒルダさん、見つけたよ、飛空艇」
ヒルダさんは顔を赤くしてプルプル震えていた。
珍しいね、クールなヒルダさんが表情を見せるなんて。
「ありがとうございますっ! やりましたねっ!」
「やりました。ほらこっちに来て」
ヒルダ先輩の手を引いて、飛空艇後部へと連れて行く。
「エイダ、後部ハッチを開けて」
【了解いたしました】
後部ハッチが開いた。
中には野菜の箱と地酒の箱が入っている。
「基本的な格納庫はこれくらいの大きさよ。荷馬車二台分ぐらい入るって」
「それだけあれば大丈夫ですね」
そう言うとヒルダさんは私の手をぎゅっと握った。
「領袖、ありがとうございます。これでドレス問題は解決します」
「とりあえず、明日の放課後マーラー領に飛んでドレスを運びましょう。間に合うよね」
「はい、予定では輸送隊商は明後日の朝発なので、その前に押さえられます。感謝します、領袖!」
もう、やめてよ、ヒルダさん喜び過ぎだよ。
「よっこいしょ」
「なにしてんすか?」
「ここに乗っていくからどこかでおろしてくれたまえ」
ナッツ先輩、貨物室に上がらないでくださいよ。
「後でちゃんと乗せてあげますから」
「え、本当っ! マコトちゃん大好きっ!!」
「ごめんねえ、こいつ馬鹿だから」
「すいませんねえ」
「なによっ!」
ナッツ先輩は貨物室からびょんと下りた。
まったく、面白い人だな。
「エイダ、ハッチを閉めて」
【了解いたしました】
「いたた、いたいよヒルダちゃん」
ふりかえると、ヒルダ先輩が目を三角にして、ナッツ先輩の頬をひねっていた。
「お友達なんですか?」
「ちょっと知ってます」
「またまた、親友同士じゃん、ヒルダちゃん」
「ちがいます」
でもなんか物怖じしないナッツ先輩とヒルダ先輩は良い組み合わせかもしれないね。
「ミリアナはあの通り馬鹿なので、マーラーさんがすごんでも聞かなくてまとわりついて仲良くなっちゃったのよ」
ミリアナってのは、ナッツ先輩の名前だな。
ヒルダさんを根負けさせるとは、ナッツ先輩は凄いな。
グランドの前の道に全速力の高級馬車が走ってきて急ブレーキで止まった。
ドアをぶちあけて、ジョンおじさんとサーヴィス先生が飛び出てきて、こちらに疾走してきた。
「なにかねなにかねっ! これはーっ!!」
「なんだねなんだねっ! これはーっ!!」
「蒼穹の覇者号です、今日迷宮から掘り出してきました」
「新しい飛空艇だとーっ!! 馬鹿なーっ!!」
「長官新しくはありません、蒼穹の覇者号は、あの聖女ビアンカさまの乗機ですっ! しかしよくこんなに綺麗に残ってましたねっ!! 新品同様じゃないですかーっ!!」
「父さん……、エンジン凄い……」
「なにー、エルマーはもうエンジンを見たのかーっ!! 私も見たい見たいっ!! 乗せてくれーっ!!」
「私も分解したいです、乗せてください、さあ早くっ!!」
なんだな、学者の人って常識が無いよな。
「マコトーッ!!!」
「あら、お養父様」
魔法塔に居た、ジョンおじさんとサーヴィス先生よりも、図書館の地下にいたお養父様の方が遅いとは何事なのか。
お、ルカッちもやってきた。
あんたは図書館にこもってばかりなので、日の光の下では真っ白だね。
「マコト! 見つかったのかーっ!! これは凄い、早く中を案内しなさいっ!!」
「ちょっと待って下さいよ、お養父様、今、着陸したばっかりなんですから」
「しかし、しかしーっ!!」
アレだな、学者というのは駄々っ子みたいなもんだね。
「まあまあ、キンボール教授、せっかく蒼穹の覇者号の建造ルポを見つけたんですから、まずは外側からチェックしましょうよ」
「そ、そうだな、ルーカスくん」
「なに! 聞き捨てならん、蒼穹の覇者号の建造ルポとはなんだね」
「これは、クレイトン長官。学園の図書館の地下書庫でこんな本を見つけましてね」
「『蒼穹の覇者号、建造の道』そんなレア書物が、学園の図書館にあったのですか」
「そうですよ、サーヴィス先生、これを見ればこの船の全てが解りますぞ」
お養父様は、手に持った青い本を高々と掲げた。
おお、それは私も興味があるな。
だが、お養父様、蒼穹の覇者号はビアンカさまのわがままによって二度の改修工事を受けておるのだよ。
ふふふふー。
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