第342話 ホルボス温泉でビバノンノン
カポーンと温泉である。
わりとボロい木の小屋の中に木製の大きい湯船があった。
趣があるなあ。
白濁したお湯でわずかに硫黄臭がする。
「はー、あったまるわねえ」
「うむうむ。良いお湯だね」
カロルの隣でのんびりとお湯につかる。
外から野鳥の声などが聞こえてきて良い感じ。
みんなで一緒に温泉でまったりであるよ。
「うおー、お湯お湯、なんで浸かってるんだ」
アダベルがばちゃばちゃお湯の中で暴れている。
エプロンドレスは脱げるのか? と思ったのだが普通に脱げた。
けものフレンズ方式なのかもしれない。
「体の汚れをとって、疲れを取るのよ」
「そうかー、変な事するなー、でも面白い~~」
泳ぐな泳ぐな。
迷惑なドラゴンめ。
さて、温まったので、体を洗おう。
洗い場に行くと木の椅子と木の洗面器が置いてあった。
ダルシーが現れて体の隅々まで洗ってくれた。
「なにしてんの? マコト」
「体を洗って貰ってるのよ、あとであんたもやってもらいなさい」
「おー、洗浄?」
ダルシーが丁寧に髪を洗ってリンスもしてくれた。
私が湯船に戻ると、アダベルがかわりのように洗い場に出た。
「あひゃひゃ、くすぐったいくすぐったい」
「暴れてはなりませんよ、アダベルトさま」
「ダルシーの手はくすぐったい、あははは」
しかし、なんだね、ドラゴンが化けているとはいえ、子供が一人交ざると雰囲気が明るくなって良いね。
うんうん。
みんなさっぱりして脱衣所に出る。
私はダルシーにドライヤーをかけてもらう。
ブイーーーン。
「おおっ?」
なんだねアダベルは何でも興味津々だね。
私の髪が乾いたので、ダルシーにアダベルの髪を乾かしてもらう。
「お、おおっ? 熱い、おーーっ!!」
気持ちが良いのか、アダベルは目を閉じてうっとりしておるな。
青髪がふわふわになって異様に可愛くなった。
「可愛いわね、アダベル」
「素敵ですわ-」
「えへへ、やめろよう」
などと言いながらアダベルもまんざらでは無いようだ。
褒められるのが嫌いな女子なんかいないよねえ。
「体が温かくなった、温泉は気持ちがいいな」
「あら、話がわかりますわね、アダベルさん」
「私は違いがわかる女だからな」
アダベルがえっへんとドヤ顔をした。
なんだか、かわいさが何倍か増しになったな。
温泉施設を出ると、カーチス兄ちゃんとエルマーがベンチで暇そうにしてた。
「あら、ごめんね、待った」
「まあな、女子は風呂が長いもんだからなあ」
「温泉は……、いいな……」
ブロウライト家の騎士さんたちも出てきた。
「お前達は馬車をタウンハウスまで戻してくれ」
「わかりました、みなさんは飛空艇でお帰りになられますか?」
「そうだよな、マコト」
カーチス兄ちゃんが聞いてきた。
「学園まで帰るけど、どこに着陸しようか」
「グラウンドで良いんじゃないか? ずっと置いておく場所はあるのか?」
「学園の近くに発着場があるよ。隠してあった」
「そこから歩くのか?」
「いや、地下通路で、図書館と女子寮の地下に通じてる」
「……、なんという完璧な準備なのか。船籍簿もマコト名義だろ」
「そうそう、運命だね」
カーチス兄ちゃんにも、ビアンカさまが全部用意したとは言えないなあ。
悪落ち聖女さまだからなあ。
「早く……、帰ろう……、父が知ったら……、逆上……する」
「私のお養父様も逆上しそう」
「サーヴィス先生も逆上するわね、きっと」
「来週が大変だよ」
騒ぎを想像すると、今から頭が痛い。
ドレスの出荷が終わる前にマーラー領に飛んで積み込まねばならないのだが、早めになんとかしよう。
でも、これで、ドレス関税問題は解決しそうだね。
何よりです。
飛空艇の前に戻ると、村人さんたちがわいわい騒いでいる。
なんぞ?
「あ、聖女さま、お帰りですか」
「はい、なんですかこれ」
飛空艇の前には、野菜とか地酒とかが山になっていた。
「聖女さまへの捧げ物です、よかったら食べてください」
「悪いですよ」
「聖女さまが飛空艇を掘り出した迷宮という事で、この村も人出が多くなりましょう、少し早いのですが、お礼の気持ちです」
いや、だけど野菜とかこんなにもらっても。
大神殿にでも寄付するかな。
「ありがたく頂戴するよ、村長」
「ブロウライト様もまたお越しください。初夏にはお祭りがありますよ」
村祭りは良いねえ。
その頃にまた来ようかな。
飛空艇があればひとっ飛びだし。
みんなでありがたく野菜や地酒を運んだ。
【貨物ハッチを開きます】
「荷物は別なんだ」
【はい、荷馬車二台分ぐらいの収納容量がありますよ】
エイダさんが聞きつけて船体後部のハッチを開けてくれた。
野菜を持って回ってみる。
おお、意外に広い。
六畳ぐらいの収納スペースがあるね。
船内に通じるドアもあった。
「さすがに馬車は入らないか」
「それは無理よ、カーチス」
カーチス兄ちゃんのつぶやきを、カロルが拾った。
輸送用の飛空艇じゃないからね。
上甲板になら三台ぐらいは乗りそうだけど、クレーン系の設備が無いとつり上げられないだろうね。
みんなでお野菜と地酒を運んで固定した。
「お世話になりました、また遊びにきますね」
「はい、お待ちしておりますぞ、聖女さま」
「また、祈祷にきてくださいませね」
「はい、シスターサマンサも頑張ってね」
「はい、頑張ります」
サマンサさんは、頑張り屋さんのシスターみたいだから応援したくなっちゃうね。
私たちは村人さんたちに手を振って、船内に入った。
さあ、学園へ帰ろう。
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