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第340話 田舎宿屋で昼食を

 宿屋に入ると良い匂いがした。


「いらっしゃいませ」

「十六人ですが入れますか?」

「大丈夫ですよ、ようこそ針土竜ハリモグラ亭へ」


 変な名前の宿屋だなあ。


「聖女さま、俺たちも良いんですか?」


 御者をしてくれた、ブロウライト家の騎士さんの一人がそう言った。


「かまわないですよ。帰りの馬車も運んでもらうのですから」

「お言葉に甘えさせていただきます」

「ご馳走になります」

「ありがとうございます」


 ご飯は、みんなで食べた方が美味しいからね。


 四人ぐらいずつ別々の席についた。

 私たちの席には、私と、カロルと、コリンナちゃんと、エルマーと、アダベルだね。


「食事……している……、時間が……勿体ない……、飛空艇の……エンジンが……」

「ご飯食べないとだめよ。エルマーはずっとエンジン調べるでしょ」

「それは……、言える……」

「後で一緒に調べましょう、エルマー」


 カロルが微笑みながら言った。

 エルマーはそうかとうなずいた。


「魔導マニアは業が深いな」

「まったくだね、コリンナちゃん」

「私としては飛空艇の汚水処理をどうしてるか興味がある」

「さすが下水局職員の娘だ」

「コリンナ、お食事前に汚水の話はやめて」

「あ、ごめんカロル」


 まあ、そうだねえ。


 アダベルが興味深そうに酒場のあちこちをキョロキョロしながら観察しているな。


 お、お料理が来た。

 おばちゃん達がお皿を運んでいるね。

 村中の女性が集まってるっぽいね。


「田舎村ですので、聖女さまにお出し出来るような物もございませんが」

「大丈夫ですよ、産地のお食事は特色があって楽しみですよ」

「ありがとうございます、聖女さま」

「お献立はなんですか?」

「イノシシのシチューに山菜のサラダ、ライ麦パンです」


 おおー、ご馳走だな。

 イノシシは野趣があって良いね。


 目の前に置かれたスープ皿にはお肉と根菜がごろごろ入っていた。

 ブラウンシチューだね。


「いただきます」

「「「「「女神に日々の粮を感謝いたします」」」」」


「これ、言わないと食べてはいけないのか?」


 アダベルが不安そうな顔で私に聞いてきた。


「言った方がいいかな」

「ええと、女神に食べ物を感謝だ」

「まあ、そんなんでも良いよ、女神さんは怒らないだろうから」

「そうか、よかった」


 パクリ。

 おーーー、猪肉美味しい、ちょっと堅いけど肉の味が強い感じ。

 ジャガイモも人参も良い味わいだね。

 うまいうまい。

 ライ麦パンもパリパリしていて美味しいね。


「美味しいわね、猪肉は初めてよ」

「ちょっと堅いけど味は良いね」

「豚肉と……、あまり……、変わらない……」

「そりゃ、同じ種類の動物だしね」

「うまーい、うまーい、なんだこれ、肉に火を入れるとこんな味なのかー」


 アダベルは食器の使い方が適当だなあ。

 カロルが手を置いて教えている。

 人の食事が気に入ったようでなによりだな。


 ぱくぱくと食べる。

 山菜サラダも苦みがあって美味しい。

 山の中なのに美味しい料理があって良いねえここは。


「飛空艇が掘り出されたって事で、迷宮に冒険者が来てアダベルの寝床が荒らされたりしないかしら」

「なにっ! 私の宝を盗まれたら困るぞ」

「五層の礼拝堂から下へ行くには光魔法が無いと隠し戸が開かないから大丈夫だろ」

「あ、そうねコリンナ、一安心だわ」

「大丈夫ならよかった。うん」


 アダベルは安心したのか、スプーンでシチューをざぶざぶ食べ始めた。

 うへえ。

 食事マナーから教えないと駄目だねこれは。


「うまいっ! 人間の食事美味しいな、マコト!」

「んもう、ちゃんと食べなさいよ」


 アダベルの顔をナプキンで拭いてあげる。


「ん、ありがとう。人間の食器はむずかしいな」


 どでかいドラゴンの姿で暮らしていたんだから、小さい人間の姿になったら動かすのは難しいのかもね。


 食事がすんだら、お茶が出た。

 あー、美味しかったね。


 のんびりしていたら、尼さんがやってきた。


「あの聖女様、厚かましいお願いなのですが、教会の女神像に御祈念いただけませんでしょうか」

「あ、かまいませんよ。みんなは先に温泉に行ってて」

「そうもいかんだろう」

「迷宮で良い物沢山いただいたし」


 みんな席を立った。

 教会に一緒に行ってくれるらしい。

 ありがたや。


「あ、メリッサさんとマリリンにも戦利品が出たよ」

「え、私たち迷宮に行ってませんですのに」

「申し訳ありませんわ」

「いいっていいって」


 ビアンカさまの思し召しだしね。


 彼女たちの制服の胸にブローチを付けてあげた。

 緑と赤、うん、良く似合うね。


「綺麗ですわ~~」

「こんな高そうな物、よろしいんですの?」

「僕も……、貰ったし……」


 そう言ってエルマーは自慢げに棒を見せびらかした。


「まあ、すばらしい……、棒、ですわね……」

「棒ですわね……」


 いや引かれてるから、ドヤ顔すんなエルマー。


「魔力を流してみて、防壁が出るから」


 メリッサさんとマリリンがえいっと魔力をブローチに込めると、緑と赤の防壁が現れた。

 光魔法じゃないから透明じゃないのね。


「まあ、素敵!!」

「暴漢にあったらこれを使うのですねっ」

「そうそう、時間は稼げるから、防壁を張って逃げなさいね」

「解りましたわ、ありがとうございます」

「大切にいたしますわ」


 お礼は、まあ、ビアンカ様に言いなさいよね。


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― 新着の感想 ―
[一言] >そうそう、時間は稼げるから、防壁を張って逃げなさいね 焦らず的確に逃げるためにも真面目に武術の授業は受けといた方がいいゾウ
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