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第33話 コリンナちゃんが寄親に指名したのは意外な人で

「僕のうちも……、寄子枠は空いているよ」

「公爵家に、侯爵家、辺境伯家と、よりどりみどりだなあ、コウナゴ」

「ぐぬぬ」

「神殿で聖女候補が後ろ盾みたいにも出来ると思うよ、教皇様と相談しないとだけど」

「すごいですわ、コリンナさま」


 メリッサ嬢がほがらかに言った。


「ぐぬぬ」

「とりあえず、誰かの庇護の元に入らないと、ご実家が危のうございますわよ」

「貧乏貴族のうちは、誰の寄子になっても、お父さん大喜びだろうけど……」


 寄親寄子制度というのは、寄親に負担があるので、そんなに簡単に結んで貰える関係ではないのだな。

 下層貴族だと、半分ぐらいは寄親がいない。

 もっとも、寄親が居ると、季節のご挨拶とか、冠婚葬祭とか色々と負担も増えるので、法衣貴族の人なんかは、結びたがらない家も多いらしい。

 実際に、文官系のお家のケーベロス家は寄親が居なかったらしい。

 下っ端貴族なので、いらなかったとも言えよう。


「私が決めていいんだよね」

「コリンナちゃんの好きな所を選ぶべきだよ」

「では、オルブライト伯爵家の寄子になりたいです」

「私?」


 カロルがきょとんとした。

 なぜにカロルのお家なんだろう。


「アップルビーさま、クレイトンさま、ブロウライトさまは、まだお家の当主ではございません。ですが、オルブライト家の実質的な当主さまは、カロリーヌ・オルブライトさまです」

「ふむ、確かに、俺は次男だから、当主にはなれないな」

「僕は……、当主になれるだろうが、まだまだ先だな……」

「私は結婚で居なくなってしまいますわ」

「マコトの大神殿にお世話になるのは、心苦しいし」

「気にしなくていいのに」


「オルブライトさまの寄子になれば、私は、文官実務のお手伝いができます」

「義理堅いのね、聖女派閥に入っていただけるなら、寄子の貢献とか気にしなくてもいいのよ」

「いえ、義理よりも、オルブライトさまの領地の統治手腕を勉強できますし、文官になりたい私にとっては実務を経験する事は勉強になり、利益が大きいのです」


 なるほど、他の人は当主じゃないので、実務が発生しないんだ。

 カロルの寄子になれば、仕事が手伝えて、将来の勉強にもなるから一石二鳥なのね。

 コリンナちゃん有能だなあ。


「コウナゴ、お前、思ったより凄いな、見直したぞ」

「コリンナ嬢が、卒業後に……、王宮行政府採用試験に落ちたら、クレイトン家が雇おう、覚えておいてくれ……」


「カロル、どうするの?」

「そうねえ」


 カロルはうふふと笑った。


「コリンナさま、条件がございますわ、それを聞いてくれたなら、オルブライト家が、ケーベロス家の後ろ盾となりましょう」

「は、はい、なんでしょうか」

「マコトにするみたいに、私をカロルって呼んで、ため口をきいてください」

「えええっ、そそそ、そんなっ、恐れ多いっ!」

「いいのよ、コリンナ、私は友達が少ないから、ちょっとさびしかったの」

「あう、あう、その、どどど努力するよ、カ、カロル」


 いいなあ、いいなあ。

 カロルは良いなあ。

 胸の中がふんわり暖かくなったよ。

 カロルとコリンナちゃんは、微笑みあって握手を交わした。


「じゃあ、コリンナちゃんも、聖女派閥参加でいいのね」

「他に手段がないわ、塩首になりたくないし」

「私も、コリンナちゃんの首を検分するのはやだなあ、見たら、きっと一週間ほど寝込むわよ」

「怖い想像をしないでちょうだい」


 コリンナちゃんは青ざめた。

 すまんすまん。


「これで、コウナゴの首も安全だな。あとは、メリッサ嬢、君はC組からB組に移動したまえ」

「え、その、そんな事できるのですか? カーチスさま」

「可能ですわよ、B組からA組に移動するのは成績次第で、学年が上がる時だけですけれども、C組からB組でしたら、先生に事情をお話すれば、問題はありませんわよ。年に何人かは派閥関係のもめ事で移動しますのよ」


 まあ、C組は勉強をしない令息令嬢を閉じ込めておく場所だしね。


「B組なら、俺の目が届くし、守ってもやれる。安心しろ」

「カ、カーチスさまぁ」


 あー、メリッサ嬢の目がハートだ。


「将来的には……、みなA組でまとまった方が……、いいね」

「あの、A組だなんて、私、じ、自信がありませんわ……、お勉強は苦手ですの……」

「聖女派閥で勉強会とかしようか、カロルとかエルマーとか成績上位者もいるし」

「マコトも成績いいじゃないの」


 いひひ、それほどでもー。


「ちっ、俺も勉強するか、剣の修行の時間が減るなあ」

「学生は……、勉強をするのが仕事だ、カーチス」

「まあ、お勉強会は楽しそうですわね」


 しかし、勉強会はどこですれば良いのだろうか。

 派閥ってどこで集まるのだろうかなあ。

 女子だけなら、ゆりゆり先輩のペントハウスに乗り込んでいけばいいのだが、女子寮は男子禁制だしなあ。

 ちなみに、男子寮も女子禁制であるよ。

 どこか部室みたいのを借りられるのかな。


「あとカーチスの婚約者のエルザさまも派閥に迎えましょう」

「ええっ?」

「ええ、じゃないわよ、カーチス、私はこれ以上あんたたちをエロ誘惑したって悪評を立てられたくないわ」

「あれは何も出来ない人間で、なにより、居ると俺が気詰まりだ」

「知らないわよ、そんな事、カーチスが、ちゃんと入って欲しいって誘うのよ」

「俺がか?」


 カーチスは不満顔だ。

 なにゆえ、未来のお嫁さんと一緒に居るのを、そんなに嫌がるのだ。

 そんなんだから、いつもエルザさんはご機嫌斜めなんだぞ。


「エルマーの婚約者は?」

「僕の……、婚約者のプリシラは……、来年学園に入学だ」

「それは楽しみね」


 エルマーの婚約者、プリシラ嬢は、魔法術研究者の家系の娘さんだ、小柄でツインテールで妹キャラだったなあ。

 ゲームでは、ビビアン嬢に、色々吹き込まれて主人公と対立する。

 最終決戦は派手な魔法合戦になるぞ。

 プリシラの事は妹にしか思えないとエルマーが伝えると、彼女は絶望のあまり魔界から高位悪魔を呼び出し主人公を殺しに掛かってくる。

 王都全体を大嵐が覆い、豪雨の中、ビビアン嬢の手勢も加わった激しい戦いが起こり、大ピンチになる主人公たち。

 ケビン王子が騎士団を動かしたりするぞ。


 そんな中、エルマーが聖女マリアさまの残した秘伝の経典を解読、主人公が究極光魔法で悪魔を焼き尽くし、それの余波によって、プリシラ嬢は消滅、ビビアン嬢もあおりをくらって発狂、という流れだ。

 ゲームやってた時は、『ビビアンの手勢はどっから出てきおった』とか思っていたのだが、これはポッティンジャー公爵家派閥の実行部隊のメンツだね。

 今にしてわかるな。

 ゲームでは、政治的な視点とかの俯瞰情報がないから、内乱フラグとかわかりにくいんだよね。

 基本的に、ひたすらイケメンが口説いてくるのをキュンキュン楽しむゲームだからなあ。


 真実の愛を知ったエルマーは、主人公に求婚、二人は魔法塔の中で、いつまでも幸せに魔術の研究をして暮らすのでした。


 というのがエルマーエンドだな。

 高位悪魔を呼び出されてはかなわんので、プリシラ嬢もなんとかしないと。

 攻略対象者の婚約者どもが、何かというと私を殺しに掛かってくるのはやめてー、とも思うのだが、やっぱり婚約者としては、この泥棒猫めってキレるわな。


 ヒカソラの攻略対象で婚約者がいないのは、仕事が忙しくてお見合いの暇も無いというジェラルドぐらいで、あとの人は全員、婚約者がいる。

 ゲーム的には、障害があった方が恋は燃えるのは解るのだが、人の物をぶんどる形になるので、そりゃもめますわな。


 デザートのマンゴープリンが出て、昼食コースは終わった。

 ああ、食べた食べた、おいしかったなあ。


「美味しかったねー、コリンナちゃん」

「しばらく芙蓉料理はいいわ、ってぐらい食べたわ」

「ここは覚えておきましょう、また来たいわね」

「気に入っていただいてうれしいわ」

「美味しいお店に連れてきていただいて、ありがとうございます、ユリーシャ先輩」

「水くさい事いわないのですよ、マコトさま」


 さてと、帰るかなあ。


「せっかく街に出たから、冒険者ギルドに寄りたいわね」

「そうする? カロル」

「私はメリッサさまと一緒に、C組からB組へのクラスの移動を先生にお願いしてきますわ」

「おねがいできますか、ユリーシャ先輩」

「あ、ありがとうございます」


 メリッサ嬢がはにかみながらお礼を言った。


「お礼は無用よ、寄親と寄子の関係ではありませんか。なんでもお姉様に甘えてくださいな」

「あ、あの、ユリーシャおねえさまって、よ、呼んでも構いませんか?」

「大歓迎よ、メリッサさまっ」

「私の事は、メリッサとお呼び下さい、ユリーシャおねえさま~」

「まあ、なんて良い子なの、メリッサ、大好きよ~」


 ゆりゆり先輩、すっごい嬉しそうでなにより。

 まあ、本人同士がよければ問題無いよね。


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