第335話 ホルボス山迷宮、第五層
アンヌさんとダルシーが階段を降りて偵察をしている。
「問題はありませんが、風が吹いてます」
「風?」
なんだろう、外に繋がる穴でも開いているのだろうか。
とりあえず、皆でどやどやと降りた。
階段を降りた所から通路が伸びていた。
学園の地下通路と作りが似ている感じだね。
五階層目だから、アタックドックの上の魔物が出るかな?
ダンジョンというのは深くなればなるほど大物の魔物が出るようになっているらしい。
通路の突き当たりが広間になっていた。
なにかいる。
火薬のようなきな臭い匂いがした。
奥にいたダンプカーよりも大きい物が首を上げた。
ドドドドドド、ドラゴンだーっ!!
真っ青な宝石のような鱗、この前見た、邪龍アダベルドだあああっ!!!!
でかい目がぎょろりとこちらを見た。
障壁障壁障壁障壁っ!!
四枚重ねっ!!
みな、動きを止めてドラゴンを凝視した。
『小さき者よ、引き返すがよい。ここは我の城だ』
しゃべったーっ!!
ドラゴンが古語でしゃべったーっ!!
どうするどうするどうする。
『わっはっは、ドラゴンよっ!! ここで我、聖剣ホウズに出会ったが己の不幸よっ!! いざ尋常に勝負ぞっ!!』
「え、あ、勝手に何言ってんだ、ホウズっ」
うわあ、ホウズの馬鹿がドラゴンに喧嘩を売ったぞっ!!
はあはあはあはあっ!!
「カトレアさんっ!!」
「わかった、マコト!!」
カトレアさんがエッケザックスを差し出す。
私は駈け寄りざまに受け取って、魔力を全開で流し込んだ。
キイイイイイイイイン
甲高い音を立ててエッケザックスが起動した。
『なっ、我を使えっ! マコトよっ!!」
「うるさいっ!! ドラゴン相手なら、あんたよりエッケよっ!!」
エッケザックスはドラゴンを二体も倒した実績がある。
対竜特効とかついてるだろう。
ビームで、ビームであのオオトカゲを焼くんだっ!!
「アンヌッ! 爆裂矢!!」
「了解いたしました、お嬢様っ!」
「ホウズ! 光臨!!」
ファーンと音がして、エルザさんがリジンを起動させ高速状態に入った。
コイシさんの手元が青く光る、冷凍攻撃の起動だ。
「全員でドラゴンを倒すっ!!」
「「「「「了解!!」」」」」
ドラゴンは両手を前に出してイヤイヤみたいな仕草をした。
『こここ、降参』
「は?」
『その剣の光線は受けた事がある、痛いのだ』
ドラゴンは羽を広げた。
引きつったような丸い傷痕が羽にはあった。
エッケビームの痕だろうねえ。
『狂犬みたいな聖女に負けて我はここに言葉で封印された』
「言葉って?」
『マコトという聖女が来るまでここを守れという言葉だ、誓約であった』
「私がマコトよ、ありがとう、長きにわたって守ってくれて」
私がそう言うと、ドラゴンは大きく息を吐いた。
『そうか、では、進むが良い、この奥に、かの聖女がお前に残した物がある』
ひゃあ、やれやれ、ドラゴンと戦わないですんだよ。
腰がガクガクしちゃうね。
「そういえば、この前、あなたが飛んでいるのを遠くで見たわ」
『時々は外に出ねば気塞ぎであるし、食事もあるからな』
本当にビアンカさまとの言葉でこの場所を守っていたんだなあ。
百年越えで守護していたのか。
「本当にありがとうね、アダベルト」
ドラゴンはふんと鼻を鳴らすと丸くなった。
「ドラゴン戦、中止!」
パーティ全員から力が抜けた。
いや、良かった良かった。
『なんたる弱腰のドラゴンかっ!! 竜の風上にも置けん!』
うるさいよ、ホウズめ。
アダベルトの横を通って奥に行く。
なんだか金銀財宝が溜まっている。
『我の財宝ゆえ、盗むでない』
「わかったわかった」
凄い財産ではあるけど、人の物をちょろまかしてはいかんね。
大広間の奥には大きな扉があった。
その横には大きく開口部があって、外は峡谷になっていた。
アダベルトはここから出入りしていたのか。
私たちの後ろにアダベルトがのっそり付いて来ていた。
「な、なんだよ」
『いや、我も奥の扉が開く所は見たことが無いのでな』
そうですか。
意外に野次馬ドラゴンだな。
みな緊張してアダベルトを見ていた。
何しろでっかいから、威圧感があるよなあ。
大扉の所には、おなじみの魔力感知板があった。
手で触れて光魔力を流し込む。
音もなく、大扉が開いた。
奥に飛空艇があった。
蒼穹の覇者号だ。
「いやったーー!!」
ようやく見つけたぞーっ!!
私の飛空艇だーっ!!
テンションが上がって飛空艇に駈け寄った。
わあ、ピカピカで埃一つかかってない。
ビアンカさまのいつもの保護魔法が掛かってるっぽいね!
これは稼働するのではないかー!
蒼穹の覇者号はだいたい漁船ぐらいの大きさだ。
湾曲した優美な船体に四つのプロペラが付いている。
底の方からそりのような足を出して地面に立っているね。
ひゃあ、格好いい~~。
真ん中辺りに魔力板があったので、魔力を流し込むと、ボッと音を立ててドアが上から開いた。
ドアの裏は階段になっていてここから入れるようだ。
「すごい、こうなってるのか、早く入ろう」
「あんた、誰?」
なんだか知らない十歳ぐらいの女の子が私の肩口から船内をのぞき込んでいた。
青い髪で頭に角が生えていて、青い鱗の尻尾が生えていた。
着てる物は古風な青いエプロンドレスだな。
「アダベルトだよ、人化してみた」
「……なにーっ?!」
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