第334話 ホルボス山迷宮、第四層
階段を降りる。
第四層は広めのワンフロアだ。
たたたと軽い足音がして四匹のアタックドックが現れ私たちに突進してきた。
「アンヌ、ダルシー下がれ、カロル、チェーンを前衛にっ」
カーチス兄ちゃんのキビキビした指示で隊列が変わる。
諜報メイドズは前衛の後ろに付いた。
私は無詠唱で、カーチス兄ちゃんとカトレアさん、ダルシーとアンヌさんに障壁をかけた。
エルマーが勇ましく三節棍を構えた。
チェーン君が滑らかな動きで最前線に出る。
ビュン!
アンヌさんの矢が発射されて、先頭のアタックドックの目を射貫いた。
ジャッ!
エルマーのアイスジャベリンが飛ぶ。
ガッガ!!
チェーン君が殴りつける。
一匹抜けた。
「やああっ!!」
カトレアさんがエッケザックスで突きを打つ。
「せいっ!!」
『うむ、良い剣筋だ』
串刺しになったアタックドックの首をカーチス兄ちゃんがホウズで首をはねる。
よしよし、有機的に動いてるな。
カピバラと戦ったのが良い練習になったようだ。
チェーン君が一匹殴り殺す。
ビュッ!
アンヌさんの二の矢がアタックドックの頭を射貫き一匹絶命させた。
エルマーのアイスジャベリンで動きが鈍った一匹をカトレアさんのエッケザックスが貫いた。
ガオーーン!
と、遠吠え一声、大きい個体と、二匹のアタックドックがさらに現れる。
増援か!
三匹は突進してきた。
ガシリ!
チェーン君が素早く一匹の体を掴み上げる。
ヒュッ!
アンヌさんが矢を発射したが、避けられた。
彼女の舌打ちが聞こえた。
大型のボスっぽいアタックドックがカーチス兄ちゃんに体当たりを仕掛ける。
ビュン!
カーチス兄ちゃんはホウズを大上段に構え、切り下ろす。
ふわっとした動きでボス犬は避ける。
動きが速い。
カトレアさんがボスに向かうと、残りの部下犬が大口を開けて横合いから噛みつきかかった。
「危ないっ!」
バリン!
カトレアさんの障壁が砕けて、部下犬が体勢を崩した。
滑り込むようにダルシーが部下犬の顎にアッパーカットを食らわせた。
ドガシ!
目に見えて部下犬の動きが鈍くなる。
重拳だ。
二発、三発。
ドガドガッ!!
頭部が砕け散って部下犬は死んだ。
「すまない、助かったダルシー!」
ダルシーは黙ってうなずいた。
私はカトレアさんに障壁をかけ直す。
ボキボキボキボキ!
チェーン君が握りつぶすようにして部下犬2の体を絞り上げて殺した。
残るはボス犬だけだ。
ジャジャジャジャジャッ!
エルマーが三節棍を振って、アイスボルトを五発連続発射。
ガシュガシュ!
ボス犬のお腹に二発入った。
ザッ! ザン! ビュッ!
そこへ、カトレアさんのエッケザックスの突き、カーチス兄ちゃんの斬撃、アンヌさんの矢が入り、ボス犬も倒れた。
「ふうっ」
「さ、さすがにアタックドック七匹はきつかったな」
「申し訳ない、ボスしか目に入ってませんでした」
カトレアさんがカーチス兄ちゃんに頭を下げた。
「良い良い、慣れろ。もうちょっと広く目を配るべきだな」
「はいっ、気をつけます」
そうだねえ、障壁無かったらカトレアさんは危なかった。
「しかし、チェーンくんも凄いね」
「いつもよりも良い動きだったわ。銀のチェーン効果ね」
「ちがいない」
コリンナちゃんは弓矢を構えてかたまっていた。
「撃つ機会が見つからなかった」
「ま、まあ、良いんじゃ無い、前衛に当たっても困るし」
「ぐぬぬ」
大広間には転々とアタックドックの死骸が転がっている。
アンヌさんとダルシーが手分けをして魔石を取っていた。
さすがにアタックドックぐらいになると、市販の小魔石ぐらいの大きさがあるね。
属性は火であるよ。
「戦えなくてつまらなかったみょん」
「そういう事をいうものじゃありませんわ、コイシさま」
「エルザしゃまに怒られたみょーん」
「ダンジョンアタック中は後方を守るのも大事な仕事ですわよ」
「一言も反論できないみょんよ」
ダンジョンでは、後ろから魔物が攻めて来るときがあるからね。
しょうがないのよ、コイシさん。
エルマーは棒を一本モードにして床につきドヤ顔をしていた。
うんうん、頑張ったね。
私が親指を上げると、彼はにっこり微笑んだ。
さてさて、奥にいこう。
隊列を組んだまま、移動する。
さすがにアタックドックの死骸は収納しなかった。
犬だしねえ。
大広間の奥には女神像があった。
「ダルシー、クッキーは残ってる?」
「あります、食べますか?」
「お供えするわ」
ダルシーはうなずいて、献花台にクッキーを置いた。
私は手を合わせて拝む。
――なんで、こんな所に飾られてるんですか? あと他の物は迷宮に食われてしまったのに、なんで女神さまだけ残ってるんでしょうね。
まあ、返事は無いな。
目を開けると、皆も手を合わせて女神さまを拝んでいた。
「献花台に隠蔽魔法が掛かってる」
「開けましょう」
というか、ビアンカ様は気前が良いな。
今度は誰用だろうか。
献花台の下に隠し扉があって、それをアンヌさんが開いた。
中には……。
「赤と緑のブローチ?」
「誰用?」
「あっ」
カロルがくすくす笑い出した。
「メリッサさんと、マリリンさん用よ。色が二人のテーマカラーだわ」
「あ、言われて見れば」
「魔導具ね。メリッサさんは風、マリリンさんは火だわ。で、効果は……」
「俺が火だ、試してみよう」
カーチス兄ちゃんが魔力を込めたが特に変わりは……。
コツン。
「おおおおおおっ、障壁発生器だ!」
「おお、それは凄いな。というかマリリンのは槍とか欲しかったが」
エルザさんの属性が風だったので、魔力を流してもらうと、同じように障壁が現れた。
硬度は光魔法の物よりも落ちるけど、一般魔法にない障壁が作れるのは心強いね。
特に二人は非戦闘員だしね。
「障壁……魔法陣が……、知りたい……」
「宝石の内部構造に刻まれてるタイプだから解らないわよ」
「すごく……、残念……」
昔は宝石内部に魔力で魔法陣を刻む技術があったらしいが、失伝したらしいね。
コリンナちゃんが前に出て、あちこち見回した。
「女神像の横に偽装が掛かっているな」
アンヌさんがコリンナちゃんが指示した場所に行った。
「鍵穴がありませんね」
「魔力感知板だ、マコトの出番だな」
「はいよう」
コリンナちゃんの指示通りに壁に手を当てて光魔力を通すとギイと壁が開いた。
奥には階段が続いていた。
よっしゃあ、この先に飛空艇があるんだろうな。
いくぜっ!!
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