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第327話 ホルボス村到着

 さて、アチソン村から出発であるよ。

 出発前に御者をやってくれてるブロウライト家の騎士さんたちに、ガレット食べないかと聞いたら、朝ご飯は済ましてきたのでと断られたよ。

 本職の騎士さんたちは規律正しいね。


 馬車はアチソン村の広場を後にする。

 ガレットばあちゃんが手を振るのでふりかえした。

 またくるからね~。


 王都からちょっと離れただけなのに、旅情があって良いねえ。

 今度、コイシちゃんか、カトレアさんの馬に同乗してガレット食べにこようかな。


 馬車がガタガタ揺れるようになった。

 街道でも郊外の方なので、道が悪いようだね。

 ゆれるゆれる。


「コリンナちゃん、顔青いよ、大丈夫?」

「だ、大丈夫大丈夫」


 強がりを言うが、コリンナちゃんの顔の色が紙みたいに真っ白だなあ。

 車酔いかあ。

 カロルに酔い止めが無いか聞こうとして気がついた。


『ヒール』

「あっ」


 みるみるうちにコリンナちゃんの顔色が戻った。


「なんでも治るなあ、ヒール」

「酒酔いも治せるからねえ」

「麻薬を抜く時はキュアオールよね」

「ヒールでも治せるかな?」


 なんとなく、なんでも治せるキュアオールを使っていたけど、聖女の湯でも麻薬効果は抜けるから、ヒールでもいけるかも。

 ヒールの方が詠唱が短いから良いな。


「聖女は便利だなあ」

「薬箱じゃないから」

「コリンナ、ハッカ飴舐めてなさい」


 カロルは硝子瓶から飴を出してコリンナちゃんに渡した。

 彼女は飴を一個口に放り込んだ。


「私にもちょうだい」

「いいわよ」


 カロルに一個貰って口に入れる。

 ああ、ハッカ飴だなあ。

 すーすーする。

 カロルも一個口に含んだ。


 みんなで飴をなめなめ車外を眺める。

 馬車旅は楽しいけど、わりと暇だね。

 馬車はだんだんと山間に入っていく。

 山また山だなあ。

 綺麗だけど、樹ばっかで飽きる。


 ガタゴトガタゴトと馬車にゆられる。

 なんか眠くなっちゃうね。

 すやあ……。



「マコト、着いたわよ」

「お? おおっ? 私寝てた?」

「ぐっすり」


 そうかー。

 馬車はもう止まっていた。

 あたりは村だけど、アチソン村よりも小さいね。

 可愛い大きさの教会なんかもある。

 のどかそうな所だな。


 馬車を降りると空気が美味い。

 山奥特有の鮮烈な感じの冷えた空気だ。


「おや、こんな山奥までようこそ。ホルボス山ダンジョンに来なさったか?」

「はい、ダンジョンアタックです」


 身なりの良いお爺さんが声をかけてきた。


「そうかそうか、碌な宝も出ないが、そのぶん魔物が弱いでな、経験を積むには良いダンジョンですじゃよ。村には温泉もあるしサウナもあるからのう。お帰りの前に入っていきなされ」

「温泉! 帰りに入りますよ」

「ホルボス温泉は入るだけの為に王都から来るお客さんもおるのでな」


 おお、それは期待が高まるね。


「女の子が二人、騎士が三人、ダンジョンに入らないんですが、どこか観光する場所とかありますか?」

「小さい村でしてなあ。特になにも無いですが、集会所を開放するんで、そこで一休みすると良いですじゃ。宿屋の下が酒場になってまして、お昼はそこでとれますぞ」

「ありがとうございます」


 二号車と三号車が入ってきて、みんな降りてきた。


「わはは、すごい田舎だな」

「空気が……、綺麗だ……」


 エルマーがすうはあと深呼吸をしている。


「マコト、コイシが酔った」

「あらたいへん」


 コイシちゃんの頭に手を置いて『ヒール』する。


「ふわっ、楽になったみょん」

「カロルがハッカ飴を持ってるから、帰りはもらってね」

「そうするみょん、ありがとうみょん」


 お洒落部が馬車から降りてきた。

 彼女らは麦わら帽をかぶってキョロキョロと村を見回している。


「まあ、田舎ねえ、領地の地方を思い出しますわ」

「私は都市の騎士の家なので、田舎は初めてぐらいですの」


 私は二人に近寄った。


「メリッサさんと、マリリンは、私たちがダンジョンに行ってるあいだ、この村で観光しててね、集会場を開けてくれるって。お昼は宿屋さんの下に酒場があるって」

「たすかりますわー。自然が多くて良いところですわね」

「皆様のお帰りを待っていますわよ」

「あと、温泉とサウナがあるらしいわよ、入ってらっしゃいな」

「「まあっ」」


 二人揃って温泉に食い付いた。


「私は天然温泉初めてですの、たのしみだわ」

「学園で毎日お風呂に入っているうちに、入浴が大好きになりましたの、温泉はいいですわねえ」


「騎士どもは、村で待機、あそこの二人のご令嬢を護衛せよ」

「わかりました若、迷宮へ護衛は必要無いですか?」

「必要無しっ、聖剣が三本、魔剣が一本あるのだ、何を畏れるというのか」

「とりあえず、無理はなされませんように」


 カーチス兄ちゃんが騎士に命令してるな。

 若とか呼ばれているのか。


『ダンジョンか、楽しみだな。どんな強敵がいるのだろうか』


 カーチス兄ちゃんの腰にある聖剣ホウズが、ほんの少し鞘から抜けて、語り出した。

 自分で抜けるのか、やっかいな奴だな。


「強敵なぞいないぞ、初心者ダンジョンだ、スライムに、角兎、大ねずみが良いところだろう」

『なんとも残念な。そんな場所にわれを連れてくるでないぞ、カーチス』

「最初のダンジョンだ。次はガドラガに行く」

『ほう、ガドラガか、あそこには何回か潜ったな。五十層も潜ると強敵がでるぞ。そういえば最深部まで到達した者は出たのか?』

「ガドラガを征服した者はまだ出ていないな」

『まだなのか、百階を越えると常識知らずの地獄と聞くからな。良かろう、聖剣三本がお前達をガドラガ大迷宮の深層に導いてやろう』

「うむ、楽しみだ、ホウズ」


 いや、ガドラガには、ベロナ先輩の敵討ちを手伝いに行くだけで、深層なんか行かんぞ、ホウズよ。


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― 新着の感想 ―
[一言] なんか道の駅っぽいアチソン村含めて観光地一歩手前みたいな感じ まあ日帰り温泉として十分だろうけど
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