第324話 馬車溜まりでパンを買い出発
学園の馬車溜まりに行くと、ブロウライト家の紋章をつけた真新しい馬車が三台ならんでいた。
さすがカーチス兄ちゃんの家だぜ。
こんな良い馬車を回してくれるとは、辺境伯は伊達ではないね。
みんなが校舎の出入り口に集まっていた。
「おはよー。みんな早いね」
「マコトが一番遅いぐらいだ。というかお前荷物は?」
「ほほほ、偉い聖女候補なので収納袋を貰いました」
「うわー、いいなあっ、くそ、俺も欲しいぜっ」
カーチス兄ちゃんがうらやましがるので嬉しい。
みんなそれなりのリュックを背負っている。
エルマーは長い棒を背中にさしておるな。
あれはダンジョンの地面を叩いて罠が無いか調べる棒だ。
ダルシーとアンヌさんがいるからいらんと思うぞ。
「みんな来てる?」
「メリッサさんと、マリリンさんが……、あ、来た」
「おくれてごめんなさーい」
「ごめんなさいですわ」
ダンジョンアタックをしない二人は手提げ袋に麦わら帽姿だな。
観光気分である。
いや、観光だけど。
おろ、大きいバスケットを下げたクララが中庭方面から現れた。
「おはよう、マコト」
「クララおはよう」
クララは笑ってバスケットの上の布を取った。
「わ、パンがいっぱい」
「朝ご飯まだでしょ、売るよ。今朝の焼きたて」
「ありがたい、買うよ買うよ、ダルシー」
呼ぶとどこからかダルシーが現れた。
「はい、マコトさま」
「派閥のお金から払っておいて」
「かしこまりました」
いや、朝ご飯食べて無いから助かるね。
わあ、バスケットの中にはレモンスカッシュもあるよ。
いいねいいね。
「ダンジョン行きでしょ、気を付けてね」
「気を付けるよ、ありがとね」
「じゃあね、頑張って」
ほかほか焼きたてのパンのバスケットを私に託して、クララは女子寮の方へ戻っていった。
「パンはありがたいな。朝早くだと食堂もやってないからな」
「男子は二つ、女子は一つずつかな。はーい、女子から食べたいのを選んで」
わっとみんなが寄って来てパンを選んでいった。
男子はエルマーとカーチス兄ちゃんだから後回しじゃ。
あ、マヨコーンもあるから、これはエルマーだな。
「マコトは?」
「私は最後でいいよ」
クリームコロネを選んだカロルが言ってきた。
私は領袖だから我慢ができるんだ。
「私はナッツドーナツで、レモンスカッシュもいいの?」
「いいよ、一人一本ね」
「もしゃもしゃ食い出さないで、馬車の中で食えよ~」
「はっ、そうですわね、私としたことが」
「メリッサしゃんはこらえ性がないみょん」
「もう、言わないでくださいませ、コイシさんっ」
カーチスは卵サンドと聖女マリアパン。
エルマーはマヨコーンとハムサンドを選んだ。
最後に残ったのは、ホットドックとレモンスカッシュが二つだった。
「マコト、甘いのが欲しかったら交換するわよ」
「いやいいよ、カロル。あんまり食べないパンだから楽しみ」
女子寮食堂の最近のソーセージ美味しいしね。
さて、三台の馬車に乗る人を分ける。
一号車には、私、カロル、コリンナちゃん。
二号車には、カーチス兄ちゃん、カトレアさん、コイシちゃん、エルザさん。
三号車には、メリッサさんとマリリン、それにエルマーだね。
馬車はどれも四人乗りだからゆったり乗れる。
御者さんはブロウライト家の騎士さんたちだ。
武門の家だから、みんな強そう。
「ダルシー、あなたも一号車に乗りなさい」
ダルシーが現れた。
「いえ、私は諜報メイドなので」
「いいから、馬車で一時間掛かる所までどうやって忍んで行くつもりだったの?」
「馬車の屋根に……」
「普通に乗りなさい」
「はい……」
「アンヌ、あなたは三号車でみなさんのお世話をお願いね」
カロルもアンヌさんを呼び出した。
「かしこまりました、お嬢様」
「ちなみにあなたもどうやって行くつもりだったの?」
「馬車の死角につかまって行くつもりでした」
「んもうっ」
まったく、諜報メイドってやつは。
これで全車四人乗りだね。
「カーチス、ホルボス村まではノンストップ?」
「途中ヒューム川を渡る橋のあたりに馬車駅があるから、そこで一休みだな」
「了解、では出発しましょう」
「「「「応!」」」」
みな、元気がいいね。
さて、馬車に乗り込もう。
私は一番奥だな。
カロルは向かいに座った。
コリンナちゃんがカロルの隣に座り、私の隣にダルシーが座った。
「なんかみんなで旅行な感じでいいね」
「いいよね。そういや、弓は習ったの?」
「一応ね、筋は良いとアンヌさんに褒められたけど、練習が足りないから、あまり使い物にならないかも」
「飛び道具はアンヌがいるからね。とりあえず何かの時に」
「わかってるよ、カロル」
「近接は?」
「ナイフを買ったよ。一応」
「二年生になったら必要だから短剣も覚えておかないとね、B組の武術では何を習ってるの?」
「短剣だよ、あんまり上手くない」
コリンナちゃんは文官だからなあ。
きっと学校の授業でガドラガ大迷宮に行く以外はダンジョンとか行かないだろうなあ。
今回だって見破りメガネが無ければ来て貰わなかっただろうね。
まったく、ビアンカさまは罪な人だぜ。
「そろそろ良いですか」
御者さんが声をかけてきた。
「あ、すいません、おねがいしますっ」
一号馬車はゆっくりと走り出した。
さあ、ホルボス山まで一時間の旅路だ。
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