第322話 男爵家に行って一家団欒をする
病棟からおいとました。
なかなか良い感じの病院施設よね。
しかし大神殿にはなんでもあるな。
部屋数の多い宿坊施設もあるんだよね。
巡礼の信者さんたちがアップルトン中から大神殿に来るんだよ。
特に年末の聖夜祭や年越しのお祭りには信者さんがどばっと来る。
「さて、では男爵家に行くかな」
「お供いたします」
……。
正直リンダさんはうっとうしいのだけれども、悪気があってやってるわけじゃ無いからなあ。
ダルシーいるから剣豪なんかいらんのだが。
まあ、しょうがないか。
大神殿の正面階段を降りていくと、律儀な不良が二人掃除をしていた。
「さっきはありがとうね」
「なにをおっしゃるですかっ」
「俺らは聖女さまの為なら命だって惜しくありませんぜ」
あはは、すっかり大神殿の人間になりおったな。
「ええと、どっちだっけ、不良兄は。そういや名前は?」
「アンドレでさあ」
「俺はルイゾンっすー」
「アンドレとルイゾンな。覚えておくよ、頭出せ、アンドレ」
「へ、へい」
アンドレが出してきた頭を背伸びして撫でてやる。
「ありがとうな、良い子良い子」
「へへへ」
なんだか困惑してるが、アンドレは嬉しそうだ。
「おおっ、いいなあ兄者、いいなあ」
「うへへ、良いだろっ」
「俺も撫でてもらいてえっ、撫でてもらいてえよっ」
「なんだよ、しょうがねえなあ」
ルイゾンが頭を出してきたので撫でてやる。
「良い子良い子」
「あはは、こりゃあなんとも嬉しいですなあっ」
「良いよなあ、ルイゾン」
頭撫でたぐらいで、こんなに喜ばれるとは思わなかったな。
そして……、リンダさんも頭を出している。
「私も頑張りましたっ、撫でていただきたいっ!」
「うー、もうっ」
私は背伸びをしてリンダさんの頭を撫でた。
「良い子良い子」
「はいっ、私は良い子ですっ」
ほんとにもう、まあ、ここのところお世話になったのでしかたがない。
ぐりぐりぐりぐり。
うわ、頬を染めてうっとりすんなやっ。
こえー。
アンドレとルイゾンに手を振って王都大通りをいく。
そろそろ夕暮れで、王都は赤い。
さあ、男爵家に帰ろう。
というか、お養父様は学園から帰っているのか?
お冠のお養母様をなだめるのは嫌なんだけど。
そんな事を考えながら歩いて行くと男爵家に着いた。
ドアをノックすると家令さんが顔を出した。
「これはこれはマコトお嬢様、おかえりなさいませ」
「お養父様は帰ってる?」
「はい、今日はお帰りですよ。どうぞ中へ」
私が家の中に入るとリンダさんも入ってきた。
また、晩飯をたかるつもりだなあ。
「あら、マコトちゃん、お帰りなさい。リンダ師もいらっしゃい」
「お、帰ったかマコト。リンダ師もお疲れ様です」
お養父様もお養母様もいらっしゃるね。
よきかなよきかな。
ソファに座って一家団欒であるよ。
お養母様がクッキーとお茶を出してくれた。
「ダルシーちゃんも出てらっしゃい」
「は、はい、奥様……」
「一緒にお茶を飲みましょう。いいわね」
「は、はい」
お養母様は優しいけど押しがつよいなあ。
ダルシーが助けを求めるようにこちらをチラチラ見てくるが、知らぬ。
お茶を一緒に飲もうよ。
「お養父様、図書館の地下の整理は終わりましたの?」
「いや、まだだ、色々稀覯本が出てきて皆の手が止まってはかどらん。来週も学園にいくよ。また照明を頼むな」
「照明はかまいませんけどね」
まだ学園に来るのかあ。
落ち着かないんだよね、親が来ると。
「さて、今週は何をしてきたんだいマコトは?」
「そうですねえ」
今週は突発的な、お養父様、お養母様の学園訪問があって、他はだいたい麻薬関係で暴れていただけだったな。
「王都にそんな恐ろしい麻薬が」
「まあ、大変ねえ、そんなにお安い薬でも無いのでしょう?」
「ええ、結構しますので、下級貴族の子供なんかはお金を使い込んだりしますね」
お養父様は麻薬の話を聞きたがった。
「ふむ、『塔』が機能不全になるとは、大事件だね」
「『塔』の実力は結局どうなんですか? 凄腕で非情と聞きましたが、簡単に潰れてしまって、正直解らないのです」
「アップルトンの『塔』といえば、近隣諸国で一番畏れられた諜報機関だね。今回の機能不全で喜ぶ敵国の諜報機関も多いのでは無いかな」
へえ、結構良い機関だったんだな。
作戦課長が麻薬で捕まって、動きが止まったけどね。
「ポッティンジャー派閥も非道な事をするな。民からむしり取る印象をつけては、後で自分が困るだろうに」
「そうなんですよね、どうも、長老系のお年寄りと、下の世代との連携が上手く行ってないみたいな感じです」
「やれやれ、無敵のポッティンジャー家も落ちたものだな」
「そんなに凄かったんですか?」
「ああ、ジェームズ翁が若かった頃は無鉄砲で何をするか解らない一団だったね。噂ではマリアさまが居なかったら国が乗っ取られていただろうとも言われている」
やっぱジェームズ翁は凄かったんだなあ。
マリア様と正面切って戦えるほどの勢力とは、また、凄いな。
今はボロンボロンみたいだけどね。
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