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第315話 大神殿に向かう途中に襲撃

 暑い鍛冶実習室を出ると寒いぐらいであった。


「ひゃあうるさくて暑い所だったみょん」

「ああやって武具は出来ているのか、勉強になった」

「うむ……、暑かった……」

「汗かいちゃったわね」


 みんなで廊下を歩きながら会話を交わす。


「さて、じゃあ私は大神殿に行ってくるね」

「んじゃあ、明日の早朝にまただみょん」

「寝坊してはいかんぞ、マコト」

「大丈夫だって、ダルシーもいるし」


 武道場へ行く剣術部の二人と別れ、カロルとエルマーと一緒に校舎を歩く。


「ぼ、僕は……、こっち……、また……明日ね……」


 エルマーが階段を指さした。


「じゃあ、また明日ね」

「ダンジョン……、楽しみ……」

「うん、私もみんなで行くダンジョンが楽しみだよ」


 エルマーはコクコクとうなずいて階段を上がっていった。

 カロルと二人で校舎の中を歩く。


「大神殿で、オスカーと、あの子供、なんだっけ、あ、キルギスくんに会うのね」

「うん、がきんちょは孤児院にいるかな?」

「馴染めるかしら、キルギスくん、スラムから神殿では環境が変わりすぎよね」

「だいじょーぶだいじょうぶ、神殿は意外にスラム上がりの人多いのよ」

「え、本当に?」

「みんな教育を受けて、女神様の教えに触れると、教会の人になってしまうのだよ」

「そうなのね、すごいわ教会」


 まあ、そのおかげで使える人材がスラムから、下町から、貴族街から来るんだけどね。

 家に追放された貴族の娘さんとか居るけど、すっかり順応して立派なシスターさんとして働いているよ。

 教会は、元いた場所からはみ出しちゃった人の受け皿の一つでもあるんだよね。


 あの馬鹿坊主のキルギスも順応して聖騎士になる事だろうよ。

 教育を受け、マナーを教えられて、教えを説かれて、立派な市民になって、可愛い嫁さんを貰って良い人生を送れるんじゃないかな。


 そうやって教会は勢力を伸ばして行くのだけど、私はそういうのが嫌いじゃない。

 良い面ばかりじゃないんだけど、悪い面ばかりでも無いわけさ。


 女子寮の前まで来た。


「オスカーによろしくね」


 カロルがはにかんで、そう言った。


「言っておくよ」


 オスカーに属性を聞いておかないとね。

 折れた剣を魔剣にするって聞いたら喜ぶかな?


 さて、大神殿まで歩くかな。

 私はてくてくと校門をくぐった。


 土曜の午後だから街にくりだす生徒も多いね。

 良い天気だからなあ。


 てくてくてく。

 と、歩いていると実家のひよこ堂前であるよ。


「おおい、マコト」

「なんだい兄ちゃん」

「今日は皆さん、うちには来なかったな」

「今日はクララのワゴンが出てたので、そこで買って食べた」

「おお、そうか、美味しいんだろうなあ」

「かなり美味しいよ、うちもうかうかしてられないよ」

「そうか、偽聖女パンに凄い調理パンか」

「偽聖女パンはマリア様パンと改名されたよ、うちのはマコト様パンだそうだ」

「そうか、なかなか良い名前だな。売れそうだ」

「名月堂で店舗販売され始めたらやばいな」


 クリフ兄ちゃんは、ううむと唸った。


「今度、新作の相談に来てくれよ」

「そうだね、なんか新作を作ろう」


 クリフ兄ちゃんと別れ、私は王都中央通りを歩き始めた。

 こんど兄ちゃんにクララのワゴンの調理パンを届けてやろうかな。

 敵を知り己を知れば百戦百勝という奴だ。

 イルダさんは超強いけどな。


 ダルシーが現れて私の前に出た。

 ?

 前方には目が血走った男が三人いた。


「んー、私を殺したら薬をあげると言われた」

「……」


 先頭の男がうなずいた。


「その約束が守られると信じてないでしょ」

「それでもそれでもそれでもなあっ!!!!」

「くすりがいるんだいるんだいるんだっ!!!」

「しねしねしねしねしねっ!!!」


 ガッシャーン!!


 私が無詠唱で作った低い障壁に足を取られて三人は転んだ。

 その頭をドカンドカンドカンとダルシーの重拳が襲った。


 さて。

 これは囮かな?

 光サーチを一発。


 ピーーーーン!


 民家の屋根の上にボウガンを持った奴が二人。

 そっちに向けてライトボールを撃つ。

 悪漢に光球が近づいた所で三倍の魔力で崩壊させる。


 カッ!!!


 悪漢の汚い悲鳴があがり、目を押さえて屋根から二人とも落ちてきた。


 もう一度光サーチ。


 ピーーーーン!


 よし、後続なし。

 なんだか雑な襲撃だね。


 くすりくすりとうめいている男の頭をはたいて『キュアオール』

 うげ、一発では駄目か『キュアオール』二発目。


「はあはあはあはあ」

「薬が欲しいのは消えたかい?」

「き、消えました、こ、これはずっと?」

「ああ、ずっと続くよ」

「あ、ありがとうございます、ありがとうございます」


 うるせえ、良い大人が泣くなっ。


 他の馬鹿二人にもキュアオールを掛けて薬を抜く。

 ダルシーがボウガンの二人を引っ張ってきた。

 こっちは薬をやってないヤクザだな。


「聖女様、あなたのサイラスでございます」


 お、知らないうちにサイラスさんが来ていた。

 そして一ダースぐらいの聖騎士も一緒だ。

 大神殿の近所だしな。


「あいかわらず早いね。こいつらを連れて行って大神殿地下で尋問して」

「わかりました、繋がっているヤクザ組織を壊滅させるのですね」

「とりあえず、麻薬ほしさに私を殺しに来るような連中に手加減は無用ね。潰していいよ」


 おおっと、聖騎士団が歓声を上げた。

 まったくみんな血の気が多いな。


「ま、まってくれ、許してくれ、組長おやじに謝罪させる、金も払う、だから殲滅だけはっ……」


 サイラスさんがニコニコ笑いながら、ボウガンヤクザをぶん殴った。


 ゴシュッ!


「お黙りなさい」

「だがっ!」


 ボキュッ!


 また殴りおった!


「あなたたちは我が教会にとっての宝を害しようとしました、もはや全ての望みを捨てるのです。あなた方は皆、破門です、冠婚葬祭の全ての宗教儀式からあなた方を排除します。そして組織も潰します。一族郎党すべてです」


 うーわー、狂信者こえー。

 ちょっとぐらいは手加減しろよー。



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― 新着の感想 ―
[良い点]  >オスカーに属性を聞いておかないとね。 腐女子が発言すると、別の属性を示唆しているように聞こえて意味深です(笑)
[一言] クリフにいちゃん新作がんばれ! コロッケパン、やきそばパン…ああ、ウスターソースさえあれば…
[一言] まぁ、御神体とか現人神レベルの存在を害そうとした訳だからなあ。
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