第303話 麻薬拠点戦 リンダさん無双
光サーチの魔法はそんなに魔力を消費しない。
なので、間欠に放射すると、脳内画像が動画のように見える。
カラーとは行かないがモノクロ画像だね。
一気に広域まで把握するから大変だが、便利は便利ね。
拠点に殴り込んだ警備騎士団は室内に居たゴロツキをざくざくと斬り殺していく。
あらま、捕虜を取る気がないね、これ。
偉い奴を生け捕りにすれば良いからか。
「マコト、中見えるの、私にも見せて」
「いや、そんな事を言われましても」
カロルさん、これは人の脳内に結像させるような魔法じゃないから。
「今現在、警備騎士団が中のゴロツキを殺戮中、二人の足の速い騎士が建物内の奥に走り込んで、地下階段を制圧したよ」
「便利ですな、さすがは聖女様」
リンダさんの声が聞こえた。
「建物から逃げ出す者はいない、裏門のリックさんが暇そうにあくびをしました」
「リックめ、さぼってるか」
「まあ、敵がきてないしね」
ロイドちゃんが不満声を出したので笑いそうになった。
一階はだいたい片付いた。
全員殺しましたな。
あとは二階と地下だ。
ジリリリリとベルが後ろの家からしたのでびっくりして術を解いてしまった。
何事?
どやどやと、男の声と足音がする。
ピーン。
うお、後ろの家は予備兵を伏せている場所だったようだ。
「後ろの家から増援、十五人、いずれも戦士!」
「よしきたっ」
リンダさんが嬉々として魔剣を抜いた。
ジャリジャリジャリーンとカロルの隣に鎖で出来た巨人が立ち上がった。
チェーン君!
私とカロルを守るように、ダルシーとアンヌさんが現れる。
「ぼ、僕の護衛は?」
「しょうがないな」
私は立ち上がりロイドちゃんの前にでた。
「ダルシー、後方をおねがい」
「かしこまりました」
「あ、ありがとう、マコトっち」
「ロイド王子の首を取られたらこっちの負けだからね」
「そ、それもそうだな」
リンダさんが振り返ってニヤリと笑った。
「ここからは一人も通しませんから」
まあ、大丈夫だな。
「くそ、どこの襲撃だ!」
「とにかく麻薬を守……」
シャイイイイイインと音がしたら、先頭の二人の首は落ちていた。
なんとえげつない切れ味なのか。
「や、やろう、ここにも居るぞっ!」
「大神殿の聖騎士団だっ!」
リンダさんは、きゅっと笑って。
神速で踏み込む。
神速で踏み込む。
神速で踏み込む。
さらに踏み込んだ。
踏み込むたびに血しぶきが宙に上がり、手が、足が、首が落ちる。
一呼吸の間に七人のゴロツキが命を落とした。
「ゴ、ゴメスッ!!」
「おおうっ」
いかめしい甲冑を着た男が奥からのっそり出てきた。
片手にはメイス、片手にはカイトシールドを持っている。
「いけっ!!」
「ごおおおおっ!!」
「ふっ」
リンダさんが鼻で笑って踏み込んだ。
メイスが根元から切り落とされた。
カイトシールドが斜めに両断された。
ゴメスの兜が半分に割れて落ちた。
中の親父が目を丸くしてリンダさんを見ていた。
その首もずれて落ちる。
巨体が倒れた。
強い。
まったく強い!
微笑みを浮かべながら、ばっさばっさと敵を切り裂いていく。
「あー、あー、なんだ、なんだこいつ、なんだこいつーっ!!」
「リンダだ、覚えておけ」
「あーっ、あーっ!! 大神殿の殺戮の天使ーっ!! なんで、なんでここにー!」
「聖女様を守っているに決まっているだろう」
「キルギスー、キルギスーッ!!」
奥から恐ろしく目つきの悪い子供が出てきた。
「なんだよ、うるさいよ、おじさん」
「て、敵だ敵、殺戮の大天使が来たっ!!」
「ふーん」
キルギスくんは感情のこもらない目でリンダさんと倒れたごろつきどもを見た。
「へえ、おねえさん強いね」
「子供、投降しろ」
子供は背中を丸めて笑い出した。
いかん、強敵の感じがする。
「投降? 投降だって、どうして、僕より君は絶対に弱いのに」
げらげら笑いながらキルギスくんは跳んだ。
速い!
リンダさんが彼が手に持ったナイフの軌跡を読んでスエーバックでかわした。
パリーン!
こいつ、リンダさんの間合いまで入った?
「そうか、手が若干伸びるのか」
「なにそれ、バリーンって、ずるいよ」
「これが、聖女さまの恩寵だ」
キルギスくんがもの凄い速度でナイフ斬撃を走らせる。
リンダさんはそれをひょいひょいと避けると彼の腹に蹴りを入れた。
そして剣の柄でぼこるぼこる、彼をボコボコにした。
「や”や”め”ろ”~~」
「おまえ、面白いな、孤児か?」
「じょうら~~っ」
「よし、大神殿に来い、聖騎士にしてやるぞっ」
「や”ら”~~、や”ら”~~」
「はっはっは、上司の私に口答えするな」
ボコボコボコボコ。
リンダさんはボロ雑巾みたいなキルギスくんを猫のようにぶらさげてこっちに来た。
「聖女さま、見ていて下さい、あ、治療は要りません。治すと逃げてしまうから」
「ど、どうするのこの子?」
「面白い才能なので、私の技術を叩き込んで聖騎士にしますよ。やあ、楽しみだ」
リンダさんは、キルギスくんをぽいと私たちの足下に投げ捨てると、また家の方に行った。
「ぐぬうううううっ」
キルギスくんも災難だな、なまじ剣の才能があるばっかりにリンダさんに気に入られてしまったぞ。
まあ、スラムで用心棒をやってるよりは良いかもね。
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