第302話 麻薬拠点突入!
馬車はガタゴトと王都内を走っていく。
今日は馬車に良く乗る日だな。
クレイトン家の馬車より高級だね。
さすがロイドちゃんの馬車だ。
普通の馬車よりも広い感じ。
ロイドちゃんが地図を広げた、スラムの麻薬拠点の地図っぽいね。
「馬車はこうやって、麻薬拠点を囲むようにして止まる。配置が終わったら、拠点内に警備騎士団が切り込んで行き、制圧する。けが人がでたら、マコトっち、頼むよ」
「了解したよ、神殿騎士の馬車に位置は教えられるかな?」
「拠点近くの広場で神殿騎士たちに伝えましょう」
リンダさんが重々しくうなずいた。
「配置が終わったら、こちらの表門から突入。門を破る道具は?」
「破城槌はございますが、少々時間が掛かります」
「私が斬る。一瞬だ」
リンダさんが魔剣の柄をポンと叩いた。
「頼もしい、正門前を本部として、僕と、マコトっち、オルブライトさんはここで待機しておこう」
「了解」
「わかりました」
聖女も、錬金術師も正面戦闘の邪魔だしね。
「裏門の封鎖はどうする? 手練れを置かないと抜けられるね」
「俺が行きまさあね」
「リックが行ったら僕の護衛は」
「なに、リンダ師がいらっしゃるから何とかなるでしょうよ。ギヨーム団長、手練れを何騎か貸してくだせえよ」
「よかろう、強いのを五騎、裏門の封鎖に回そう」
「こんな所かな、神殿騎士団は外回りで、壁を越えて逃げようとする奴を捕まえてくれ」
「了解です、ロイド王子」
「地下は?」
「「「……」」」
「地下道か、可能性は、ギヨーム団長?」
「あり得ますな。出来れば早めに地下を制圧したいところです」
「一応、作戦開始前に光魔法で構造を探ってみるよ」
「それは助かる」
とはいえ、光感知魔法は密封されたドアの向こうには行けないんだよな。
地下とか弱い。
「拠点制圧後にマコトっちと、オルブライトさんはけが人の救護などをたのみます」
「了解」
「わかりました」
馬車が止まった。
地図で見ると、麻薬拠点に一番近い広場のようだ。
「では、リンダ師、神殿騎士団に作戦を伝えてください」
「了解した」
リンダさんは馬車を出ていった。
つづけてギヨーム団長も出て行く。
「では、俺も、裏門に向かう馬車に同乗します」
「解った、頑張ってくれリック」
「任せておいてください、王子」
リックさんは太く笑って馬車を降りていった。
「守るのはロイドちゃんと、カロルね」
「マコトも守るわよ」
「ふふ、ありがとう、カロル」
「護衛はリンダ師だけか、心細いかな?」
「ダルシーとアンヌさんを忘れているわよ」
「あ、そうか、二人のメイドは心強いね」
重拳のダルシーと武芸百般のアンヌさんだ、護衛としても一流だね。
「拠点の制圧が済むまで時間が掛かりそうね」
「あの規模だと三十分ぐらいかな。とりあえず、一気に終わらせないと。立てこもられると困るね」
スラムで一夜を明かすなんてゾッとしないよなあ。
しばらくしてリンダさんと、ギヨーム団長が帰ってきた。
「説明は大丈夫?」
「いけます」
「問題はありません」
ロイドちゃんは息を吸い込んだ。
「それでは、麻薬拠点殲滅作戦を開始するっ!」
馬車が一斉に動き出した。
ゴガガガガガガ。
スラムは道がただの地面なので、凄く揺れるな。
リンダさんも、ギヨーム団長も目を半眼に閉じて闘気を巡らしているっぽい。
ロイドちゃんは地図をじっと見ている。
指揮官は作戦が失敗しないか心配なんだろうな。
馬車が止まった。
外からバタンバタンとドアが開く音がする。
「では行ってきます」
「行きますぞ」
「あ、ちょっとまって」
私は二人に障壁の魔法をかけた。
「剣で一回だけ斬られるのを防ぎます」
「おお、学園で見たあの魔法でございますか、かたじけない、聖女さま」
「ありがたき幸せ」
「突入部隊にもかけよう」
「それはありがたい、是非」
私たちは馬車を降りた、警護騎士団がビシリと並んでいる。
その数、五十人強。
一人一人に掛けてると時間がかかるので、ターゲットを増やす。
『ホーリーシールド+』
一気に障壁が全員に掛かった。
一発で砕けるけど、あると無いでは負傷率が違うだろう。
「一発だけ、相手から良いのを貰っても防ぎます。二回目はないから注意してください。手足がもげても絶望しないでください、命があるかぎり私が治します」
敵の拠点前だから、歓声は出せない。
だけど、騎士たちの感謝の気持ちは波のように私に押し寄せてきた。
続けて、拠点内を光魔法でサーチ。
ピーーーーンッ。
「拠点内一階に、賊が十四名、西の奥に地下に通じる階段があるよ、最速で塞いで」
「了解いたしました、たすかりますぞ」
ギヨーム団長は重々しくうなずいた。
「いくぞ、静かに静かに」
ひたひたと水が広がるように警護騎士団とリンダさんは拠点の入り口に近づいた。
足の速い騎士が二人、駆け出して門番のゴロツキの首をはねた。
無音。
剣が走る風切り音と血しぶきが飛び散る音、首が転がるごろんとした音だけがした。
リンダさんがするりと正門の前に立つ。
立ち塞がるは鋼鉄の門。
リンダさんはすらりと魔剣ダンバルガム抜いた。
青白い剣身が日の光を反射してギラリと光る。
カシュンッカシュンッ!!
リンダさんが二回剣を振ると、鋼鉄の門がゆっくりと開いた。
錠前だけを切断したようだ。
なんだね、斬鉄剣だね、五ェ門だね。
警護騎士団が静かに静かに正門に吸い込まれていく。
ふわー、プロの仕事は凄いな。
甲冑が鳴る音もしないぞ。
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