第299話 昼食を食べながら夏休みの予定を話し合う
ひよこ堂でパンを買い込んで、自然公園に来ております。
芝生に敷布を引いて、皆で座って昼食なのだな。
ケビン王子とジェラルドも、ちゃっかり混ざっている。
良い天気だなあ。
「やっぱり聖女パンは美味しいわね」
「マヨコーン……、美味しい」
「カトレアしゃん、栓抜き貸してみょん」
「やはりひよこ堂はベーコンオニオンですな」
みんなでわいわいと食べるのは楽しいね。
空を見上げると、真っ白な雲がゆっくり動いている。
ドラゴンは居ないな。
あれから時々空を見上げてドラゴンを探しているのだが見つからないね。
どうも、前世のUFOぐらいの希少率らしい。
もぐもぐ。
今日の私のパンは、聖女パンにカツサンド。
薄いカツがサクサクで良い感じだけど、前世のウスターソースが再現できないのだ。
こんど、カマラさんにリクエストしようかな。
ケチャップと一緒に。
「カーチスしゃま、マコトしゃんに、今日の殴り込みの参加をおねがいしないみょん?」
「日曜日のダンジョン行きを外されたらかなわん、スラムのしけた拠点よりダンジョンだ」
「さすが、カーチスさま、素晴らしい判断です」
なんで朝の私とコリンナちゃんの会話まで把握しているのだ?
偶然かね。
……、まさかコリンナちゃんがカーチス兄ちゃんの諜者?
コリンナちゃんをじっと見ると、彼女はクリームコロネを頬張って、なんだよという顔でこっちを見た。
うん、違うよなあ。
パンを食べ終わった。
ふう、満足満足。
春の爽やかな風が遠くの森の木々をさやさや鳴らしながらふいてくる。
カロルの背中にもたれかかると暖かくて良い感じ。
幸せ幸せ。
「んもう、マコト、重いわよ」
「背中があったかい」
「しょうがないわね」
カロルのやさしい声が好きだなあ。
じんわり愛している感じ。
「オルブライト領には麻薬は流行ってないの?」
「無いわ、変な商売してる悪党がいたら、うちの騎士団が潰しちゃうから」
オルブライト領は治安も良いと聞くからね。
余談だが、領主の熱心さによって領地の治安は変わる。
いい加減な領主の元には、それをあてこんでヤクザとか悪徳商人とかが集まって、したい放題の事をするので治安がみるみる悪化するのだ。
軍隊兼警察の騎士団も小さい領地だと作る資金が無かったりするしね。
行政サービスが発達していない中世後期な感じの世界は物騒なのだよ。
ああ、行ってみたいなあ、オルブライト領。
「カロル、夏休みにオルブライト領に一緒に行っていい?」
そうじゃそうじゃ、夏休みはカロルの家の領地で一緒に遊び呆けよう。
それがいい、それがいい。
「え? あー、その、駄目」
「なんで、なんで、いーじゃんいーじゃんっ」
「学園に来ちゃったから領地で仕事がいろいろ滞っているのよ、ごめんね」
「えーっ」
まったくカロルは勤勉だなあ。
そんなの、親父さんにやらせろですよ。
なんだよ、娘に領地を任せてにダンジョン三昧の駄目親父はいかんな。
「夏休みの間、カロルと会えないのは寂しいよー」
「私もだけど、しかたがないのよ、解って」
くそう、社畜のお父さんみたいな事を言われてはしかたがないなあ。
一ヶ月もカロルと会えないと、カロル成分が足りなくなって死んでしまうぞ。
「じゃあ、一週間ぐらいは、どこかに行こうよ、旅行ならいいでしょ」
「まあ、それくらいなら」
「飛空艇が手に入ったら、どこでも行けるよ、蓬莱行こうか」
「蓬莱! でもそうか飛空艇は速いから」
「蓬莱は俺も行きたいぞ、コケシみたいな武芸者と戦うんだっ」
カーチス兄ちゃん、あんたには聞いてねえよ。
そして、まだコイシちゃんをコケシ呼びかよ。
「わっしも、おじいしゃんの国が見たいみょん」
「芙蓉で拳法を学ぶのはどうだろうか」
コイシちゃんを蓬莱に連れていってあげたいね。
カトレアさんは芙蓉か。
偽中国だから偽中国拳法の本場だ。
「蓬莱いいですわね~、でも私は総本山にお参りしたいですわ」
「まあ、良いですわね、信都観光も楽しそう」
お洒落組がほがらかにそう言った。
総本山には信仰都市がくっついていて、まあ偽バチカンなんだけど、色々見所が多いのだ。
「山岳……、魔導都市に……、行きたい」
「魔導都市も一度行きたいわね」
エルマーのつぶやきに、カロルが答えた。
山岳魔導都市というのは、偽スイスの山岳にある魔法マニアばっかりが集まった都市だな。
魔導大学もそこにあるぜ。
「個人で飛空艇を所持か、うーむ」
「本来、飛空艇は国家に属するものでありますな」
「それに僕は公務があるから一緒にいけない」
「ずるいですな」
うるさいよ、王家コンビは。
所属は聖心教会にしとくから問題は無いのだ。
信仰権力なめんなよ。
あと、呼んでないし。
「我が領の海にいきませんこと? 歓迎いたしますわよ、コテージもありますわ」
「ユリーシャ先輩の領地の海かあ、いいなあ」
偽フランス南部の海かあ。
綺麗だろうなあ。
でも、ゆりゆり先輩は、みなの水着が見たいだけやろっ。
「楽しみね、夏休み」
「そうだね、楽しもうよ」
うんうん、夏休みは楽しまなきゃだよねえ。
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