第295話 集会室で和んでいたらお養父様がやってくる
学園に帰って、集会室へ行く。
ドアを開けると、お洒落コンビとライアン君が楽しそうにおしゃべりをしていた。
「あ、お帰りなさい、マコトさま、スラム大丈夫でしたか?」
「大丈夫よ、教会の炊き出しに何回も行ってるし」
「そうなんですね、偉いわ」
「普通だよマリリン、これでも一応司祭さまなんで」
「その若さで司祭様はすごいですね、領袖」
「試験受ければ誰でもなれるよ、ライアンくん」
収納袋からクッキーの大缶を出してテーブルにのせた。
「これ、ひよこ堂のお父ちゃんから」
「わあ、ありがとうございます、ひよこ堂のクッキー大好きっ」
ダルシーが現れて集会室のケトルを持って外に出ていった。
「ライアンくん、二年生で麻薬をやってた生徒は知らないかな?」
「うーん、髑髏団の中では、僕ら三人ぐらいですね、グレイブさんの当番みたいになってましたので」
そうか、髑髏団でも麻薬は蔓延してなかったか。
マイクーもグレンさんも麻薬とか嫌いそうだもんな。
エリア探知の魔法で探していくしかないか。
「夜会絡みで麻薬の販売ルートですか。危なくありません事?」
マリリンが思案顔で聞いてきた。
「危ないけど、早めに治療してやんないと、まあ、別に麻薬やってる馬鹿は苦しんでもいいんだけど、酷い事件とか起こるとやだし」
「マコト様は本当にお優しい」
やめろー、キラキラした目で見るな、マリリン。
ダルシーが戻ってきて、お茶を入れてくれた。
「ありがとう、ダルシー」
「いえいえ」
「ダルシーさんのお茶は美味しくて大好きよ」
「恐れ入ります、メリッサさま」
クッキーの大缶を開けて、それぞれのお皿に二つずつのせた。
カリカリ。
うん、やっぱりお父ちゃんのクッキーは美味しいな。
「あ、これは美味しいですね。ひよこ堂はクッキーもやってるんですね。今度実家にもっていこう」
「まあ、ライアンさんは遅れているわね。ひよこ堂のクッキーは隠れた名品なのよ」
「そうですのよ」
「ははは、僕は甘い物があまり得意ではなくて」
にこやかに微笑むライアンくんはイケメンだよなあ。
「ライアンくんは、新入生歓迎ダンスパーティには出るの?」
「はい、婚約者が行きたいと言いまして」
「あら、よろしいわね」
「新入生歓迎ダンスパーティで婚約者さまを紹介してくださいませ」
「はい、こちらこそお願いしますね、メリッサさん、マリリンさん」
あー、放課後、日の当たる暖かい集会室でのんびりおしゃべりは良いね。
のんびりするなあ。
カリカリ。
さて、のんびりしたのでお風呂に行こうかな。
と、立ち上がったらドアがノックされた。
ん、誰だろう。
ドアを開いたらお養父様が立っていた。
「あら、お養父様、どうしました」
「そろそろ照明が暗くなってきたよ、魔力を充填してくれないか」
……。
わすれてた……。
というか、最後に魔力充填したのは火曜日だよね。
意外に持つなあ。
「わかりましたわ、おほほほ」
「わすれていましたわね、マコト様」
「時々うっかりなされますわ」
うるさいねっ、お洒落コンビ!
「行きましょう行きましょう、そろそろ切れるところかなあと思ってましたの」
「うむ、今日一日ぐらいは大丈夫そうなんだが、忘れられると困るからね、呼びにきたんだ」
ごめんなさいっ!
私は心でお養父様に謝って集会所を出た。
「マコト様、お風呂でお待ちしておりますわ」
「行ってらっしゃいませ」
「行ってらっしゃい」
三人に見送られて私は集会室を出た。
裏庭を通って図書館へと向かう。
「お養父様、調査は順調ですか?」
「ああ、素晴らしいね、センセル古王朝の系図と帳簿が見つかったよ、幻の王朝と言われてそれまでほとんどの資料が無くてね、実在が疑われていたのだが、大発見だ」
「左様ですか」
うむ、歴史学者さまの興奮ポイントが解らぬ。
センセル王朝が何百年前の王朝か解らぬ。
変な本が沢山、図書館の地下に眠ってるんだなあ。
図書室の横の階段を上って、二階の入り口から入る。
今日もカウンターにはぶっきらぼうな女の子が座っていた。
ルカっちは地下かな。
一階に降りて、秘蔵書庫への扉をあける。
あ、意外にまだ明るいな。
結構持つね。
螺旋階段の横のパネルに手を当てて、光魔力を流し込む。
だんだんと照明が明るくなっていき、下から歓声が上がった。
「ふう、助かるよ。また暗くなったら呼びに行くよ」
「いつでもお気軽にどうぞ、お養父様」
地下の照明魔力封入に毎朝行こうと思ってたら忘れてたよ。
いかんね。
でも、三日に一度ぐらいでも良さそうね。
照明だけだからそんなに魔力消費が高くないっぽい。
上から覗くとルカっちがこの前と同じ状態でソファーに寝転んで本を読んでいた。
君はずっとそこで生活していたのかい?
秘蔵書庫に並んでいた本の山は半分ぐらい片付けられて、替わりに書棚がいくつか新しく並んでいた。
色々と整理したんだなあ。
偉いなあ。
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