表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

296/1513

第293話 スラムのオヤジと話をつける

「おーう、マコト、来たかよ、まあ座ってなんか食え」

「いらねえよ、スラムの食いもんなんか」

「まったく壁の中のガキは贅沢だよなあ。王子さんはどうだい?」


 オヤジに、なんだか得体のしれないごった煮を突き出されてロイドちゃんはビビった。


「やめときなよ、お腹壊して三日三晩寝込むよ」

「そ、そうする」

「まったくつれねえなあ。で、なんだい?」


 オヤジはなんだか知れない蒸留酒をぐいっとあおった。

 どこで作ってる密造酒かねえ。


 スラムの人間が食べてる食糧は、残飯であるよ。

 王都の各施設から出るゴミのなかで、食べられそうな物を買ってきて、スラムで食べているのだ。

 うえっとなるけど、前世の日本でも明治時代とかは良くあった事だ。

 軍隊とかは良い残飯が出て人気だったらしい。


 まあ、ゴミも少なくなるのでエコではあるね。


 私がオヤジの前に座ろうとしたらダルシーが椅子を拭いてくれた。

 座る。

 ロイドちゃんも座ろうとして、リックさんの方を見たが、彼はそっぽを向いた。

 護衛はふきん持って無いだろう。


「ダルシー、拭いてあげて」

「はい、マコトさま」

「やっぱり、メイドさんを一人つけて貰おうかなあ」

「人を一人雇うのは大変ですぜ」


 王子付きの人間は雇うのが大変なのだ。

 適当な人間を付けて、反政府思想の持ち主だったりすると大変だからね。

 何代も前からの家系を調べられるそうだ。


 ロイドちゃんも椅子に座った。


「近々、麻薬の集積所を強襲して、つぶすので、オヤジに一報入れにきたよ」

「ああ、あそこか、別にスラムの仲間って訳じゃねえから自由にしたらいいぜ」

「スラムには麻薬は蔓延してない?」

「そんな高いもん買える奴がいねえ、このクズ酒ぐらいだなあ、俺たちがやれんのはよう」


 そういって、またカプリとオヤジは酒を飲んだ。

 何の酒なのかね。


「前に何人か拠点に盗みに入って殺されたが、まあ、よくある事だしな。麻薬の運搬中に襲って殺された奴もいるが、まあ、しかたがねえよ」


 まったく、バイオレンスな地区だな、スラムは。


「こっちが拠点を襲っても不干渉でいいのね」

「かまわねえよ。別にあいつらスラムに金も落とさねえしな」


 スラムの拠点は倉庫に使ってるだけなのか。

 メインターゲットは、王都の中の貴族、学園の生徒、等か。

 大人の方の夜会にも売人が居そうだが、それは私の知った事では無いね。

 王宮行政府の仕事だ。

 『タワー』がやられてるから、そうとう食い込んでるかもな。

 まあ、学園の麻薬汚染が止まれば私は良い。

 大人の麻薬患者は勝手に禁断症状に苦しめだよなあ。


「で、カチコミはいつ頃だい?」

「近々としか言えないなあ」


 そう言って私は人差し指を一本出した。

 オヤジは小さくうなずいた。


「スラムの民が死ななきゃ問題ねえよ。勝手にやってくれ」

「ありがとう、オヤジ。で、これはロイド王子、そのうち警備騎士団のトップになるから連れてきた」

「これはこれは、ロイド王子、むさ苦しい所においでなすってありがとうございやす。まあ、あんたが警備騎士のトップになる頃には俺はおっちんで居ないかもしれませんがね」

「二十年も三十年も、老衰死するまでスラムに居そうだよ」

「へへへ、まあ、先はわからねえからな、マコト」

「ロイドだ。よろしく頼む」

「まあ、何かあったらいらしてくだせえよ」


 オヤジは王族に対しても気後れしないなあ。

 さすがである。


 さて、オヤジに話は通したからおいとましようかな。


「帰りやすか、聖女さま」

「麻薬拠点を遠くから見たいのだけど」

「了解でやす、帰りは丘を越えていきやしょう、上から見えやすぜ」


 三下くんがナイス提案をしてくれた。

 拠点の建物をみればどこから突入するか計画が立てられるね。


「んじゃ、オヤジ、またなあ、あんまり飲むなよ~」

「おうよ、また来いよ、マコト」


 私たちは赤狒々亭を出た。

 三下くんは私たちをこんもりとした丘の上へと先導していく。

 整備されてない泥道をわっせわっせと登る。

 人相の悪い奴らとも行き会うが、三下くんを見ると皆引き下がるのである。

 オヤジの睨みがきいてるなあ。


 丘の上に来た。


「あれが拠点でやんすよ」


 三下君が指さした先に、塀で囲まれた施設があった。

 甲冑を着た騎士が警備をしているのが見える。


「ふむ、ポッティンジャー派の騎士ですね。あの規模だと十名ほどですかな」


 リックさんがつぶやいた。


「スラム街の施設だから、それほど大量の護衛はいないだろう、増援も送りにくいな」


 ロイドちゃんが感想をのべる。


「兵員は十五人、そこそこ腕の立つ騎士が多いです。施設内部は倉庫と応接室、あとは宿舎です。地下室がある模様です」


 ヒルダさんの情報は正確そうだなあ。

 さすがである。


「立てこもられてはやっかいですね、どうやって門を開けるか……」

「今から行って、斬ってきましょうか? 聖女さま」

「は?」


 何言ってるんだ、このリンダさんは。


「わが魔剣ダンバルガムに切れぬ物はありません」

「あ、そうだった、何でも切れる魔剣もちだった」

「げっ、リンダ師がとんでもない魔剣を!」

「古竜両断剣じゃあねえですか、なんて物を」


 リンダさんはリックさんを見てふふんとドヤ顔をした。


「マコト様を守る為にこの魔剣を賜ったのです、今から単騎で突っ込み、全員切り伏せてきますよ」

「やーめーなーさーい、なんだかおもむきって物が無いです」

「いいじゃないですか、王都に麻薬をばらまくような外道どもは問答無用でたたき切るのが正しい行いというものです」


 ああ、もう、なんでビアンカさまは、この暴れん坊に魔剣を授けるかなあっ。


よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。

また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] まあ粗方の拠点を一斉にツブさないとイタチごっこになりますからステイですね~
[一言] >何の酒なのかね 現代ならメチルアルコールなシチュエーション >リンダ師がとんでもない魔剣を 鬼に金棒的な うんまあ自身が言うように一人放り込んでも一切合切両断して帰ってきそうではあるね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ