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第291話 『塔(タワー)』と話をつける

 とりあえずユーイン氏はヒルダさんが細引きで縛った。

 細引きというのは細い紐ね。

 諜報系の人だから縄抜けしないのかな?


「マーラー家に伝わる特殊な縛り方です、縄抜けはできません」


 どうしてみんな私の考えを読むのかな。

 エスパーか?


 私は東屋の椅子に座り直した、『タワー』の長官のコベットさんも向かいに座った。


「さて、どうしようかね、コベット長官」


 ロイドちゃんは重々しく言った。

 さすがに、いつものチャラい言動は封じているようだ。


「『タワー』としては今すぐユーインを連れて帰り尋問したいです」

「どこまでポッティンジャー派が『タワー』に食い込んでいるだろうか?」

「ユーインを中心にかなりの範囲に及ぶと思います。浸透範囲を確定するまで、『タワー』は動けませんね」

「国王派の裏の支えの『タワー』が機能不全か」

「まことに申し訳なく思います」


 ポッティンジャー派のグレイブを潰してあるから王都のポッティンジャーの諜報班も機能不全だけどね。

 まだ、国王派にはマルゴットさんがいるウィルキンソン家がいるから全滅ではないだろうけどさ。

 マーラー家がいる聖女派閥が諜報では優位に立てるな。

 立っても、まあ、なんでもないけどさ。


「明日、スラムの麻薬拠点を強襲します。『タワー』は外れてください」

「明日かい? マコトっち、急だね」

「今ならまだ、敵は攻めて来そうだという予想しかしてないでしょう、時間をかけるとポッティンジャー十傑衆を呼ばれかねません」

「そ、それはそうだね」

「今の所、十傑衆はポッティンジャー領から出ていません」


 ヒルダさんが報告してくれた。


「『タワー』も十傑衆の動きは確認していません」

「では、明日が好機と思えます。グレイブの置き土産をここで潰します」

「そうか、では国王派からは、僕と、リック、それと王都内警備騎士を出そう」

「聖女派閥は、私と、カロルが出ます」

「カーチス卿やお妾さんたちは?」

「なるべく、カーチスたちに人を斬って欲しくないんですよ」

「そうか、マコトっちは良い奴だな」


 ロイドちゃんは柔らかい笑顔を私に向けた。


「あと、リンダさんに応援を頼みます。ダルシー、要請してきて」

「かしこまりました」


 ダルシーは自分のお腹を軽く叩くと、ぽーんと跳び上がった。


「諜報メイドはいいなあ、やっぱりダルシーくんをちょうだいよ」

「え、やだよ、もう家の子だし」

「んもう、リック、ダルシーくんをお嫁さんにしてこちらへ引っ張り込むんだ」

「ははは、がんばりますよ」


 やめろ、でかぶつめ、家の子に手出しすんなっ。

 まあ、リックさんは良い人そうだから、本気で申し込んで、ダルシーが了承するなら、考えてやらんでもないぞ。


「それでは、私は『タワー』に戻ります。こいつらの尋問をしないと」

「諜報員を尋問するのは難しそうね」

「ええ、でも、やりようはあります」


 コベットさんの言葉に縛られたユーイン氏は震えた。

 グラーク塔でどんな凄惨な拷問が行われるのか、怖くてしかたがないね。

 やだやだ。


 コベットさんはユーイン氏と林に伏せていた刺客の襟首を掴み、ずるずると引きずって中庭を去っていった。

 意外に力があるな。

 魔力で筋力付与してるのかな。


「しかし、麻薬は意外に恐ろしいね」

「結構はびこっているみたいよ。B組とC組にも何人かいるはず」

「え、まだ一年だから大丈夫じゃない? 夜会デビューもまだだし」

「テニス部の先輩に勧められたって、A組で一人いたわ」

「A組で!! それは想定外だね」

「ケビン王子にも伝えておいて」

「兄さん今日はゲッソリして帰ってきそうだな。ビビアンさんとの昼食会の日だし、あっ、今週の聖女の湯の元をちょうだい」

「あっ、跳んでった」

「えーーー」


 ロイドちゃんはダルシーの去って行った方を見上げた。


「あとでダルシーに届けさせるよ」


 すっかり王宮に納める聖女の湯の元を忘れていたよ。


「たのむよ、お父様も、お母様も、兄さんも楽しみにしてるから」

「わかった、ごめんよ」


 ロイドちゃんは居住まいを正した。


「明日は何時頃から強襲する?」

「放課後すぐ行こうか。スラムの親父に話を通しておかないとなあ。ちょっくら行ってくるか」

「ちょっと、今ダルシー居ないんでしょ、危ないよ。そうだ、僕とリックが付いていくよ」


 私はロイドちゃんを見た。


「ロイド王子はスラムに行った事は?」

「な、無いよ、酷い所とだけ聞いてる」

「俺は罪人を追っかけて行った事がありますな。酷い所でした」


 リックさんは行った事があるのか。


「ロイド王子は将来警備騎士の長官になるから親父と繋がった方が良いかな」

「親父って誰?」

「スラムの顔役みたいな人だよ」

「なんでそんな人とマコトっちは繋がってるのよ」

「大神殿はスラムでよく炊き出しをするから、それで知り合ったんだ」

「あ、そうか、教会関係でか、なるほどねえ」


 王都にあるスラムといっても王権が及んでいるのは壁の中だけだからスラムと王宮はまったく関係がないんだよね。

 王都の中に住むには市民権が必要で、それを買うにも多大なお金が掛かるのさ。

 なんでもお金で、この世界も世知辛いね。

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[一言] >リンダさんに応援を頼みます 剣や盾で防げる奴はほぼ居ないだろうだろうし仮に軌道上に剣や盾を置けても持ってる獲物のお陰で防具諸共に真っ二つ まあ十傑衆5人位ならなんとか出来ると言ってのけるバ…
[良い点] 「エスパーか?」はいいですね 読者に対する解説っぽくならなくて 読者は「マコトがわかりやすいんだよ」「きっとマコトの顔にでてたんだろうなぁ」と「説明」でなく「マコトあるある」になりますね …
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