第287話 『肉ハウス』のランチを食べる
『肉ハウス』の内装は田舎の家みたいな感じだね。
前世のアーリーアメリカンな感じかな。
牧場感があるね。
私たちは個室に入りドアを閉めた。
店員さんがカーチス兄ちゃんの隣に立つ。
「ランチは二つあります、色々な肉をちょっとずつ食べる『ミニお肉セット』と、がつんと二枚のステーキを食べる『がっつりお肉セット』です」
「おれはがっつりセットで、エルマーもそれにしろ、男は肉を食うもんだ」
「いや……、ミニお肉……で、いい……。そんなに……、たべられない……」
「駄目だなあ、そんなんじゃ」
カーチス兄ちゃん、エルマーにうざ絡みするんじゃありませんよ。
さっき、テーブル席に運ばれてきた肉を思い出す。
なんだか凄い大きさの塊だったな。
あれが『がっつりお肉セット』か。
さすがにアレは食べきれないので店員さんに『ミニお肉セット』を頼んだ。
色々な部位が入ってるらしい。
カトレアさんと、コイシちゃんは『がっつりお肉セット』を頼んでいた。
剣術部は食べられるだろうね。
女性陣はミニお肉を頼んでるね。
マリリンは『がっつりお肉セット』であった。
おお、チャレンジしますね。
カラカラとワゴンに肉をのせて店員が個室に入ってきた。
ごろりとした肉の塊が三つ乗っていた。
それぞれサシの入り方が違うね。
肉の赤さも違う。
店員さんが長い包丁でお肉を切り分けていく。
うっは、あんな厚さに切るのか。
お肉を炭火をおこしたグリルの上に乗せると、じょわああああっと音がして、良い匂いが広がる。
おおお、お腹が減る音、匂い。
女給さんが、スープとパンをそれぞれの席に置いていく。
「お飲み物はどうなさいますか、カーチス殿下?」
「そうだな、ワインを二本入れてくれ、あとはお茶を」
「かしこまりました」
ロイドちゃんに殿下って呼んだのかと思ってたんだけど、カーチス兄ちゃんも辺境伯令息だから殿下なのね。
若君だと、ちょとなれなれしいもんね。
領民にしたら、辺境伯は王様みたいなもんだしね。
ちなみに、侯爵令息なエルマーは閣下だな。
ここらへんは、微妙なラインで使い分けが難しい。
領民にとってはカーチス殿下だが、それ以外の私らにとってはカーチス閣下だ。
うんうん、そんな呼び方はしないけどね。
ジョワンと音を立てて肉がひっくり返された。
おいしそうだなあ。
焼き上がったお肉は、サクサクと包丁が入れられて、お皿に盛り付けられた。
違う肉が二枚焼かれて、まずはカーチス兄ちゃんの元へ。
「では、先にたべさせてもらうぞ。女神に日々の糧の感謝を」
そう言って、カーチス兄ちゃんは肉をフォークで刺して口に運んだ。
カーチスの顔がほころぶ。
くうううっ、美味しそうだなあ。
肉がどんどん焼けて、それぞれの前に運ばれてくる。
私の目の前にも、良く焼けた三つの種類のお肉が並んだ。
それぞれ違う部位のお肉が握りこぶしぐらいの大きさで、鉄板の上でジュウジュウ音を立てている。
ナイフを入れて、口に運ぶ。
ぱくり。
ああ。
ああ。
口の中が楽園であるよ。
ほろりと肉がほどけて芳醇な味わいが口の中いっぱいに広がる。
THE肉、という感じの味わい。
どっしりとかみ応えがあって美味しい。
「これは美味しいわね」
カロルさんも恵比寿顔であるよ。
「肉がそれぞれ違うのな」
三種類の肉、サーロイン、ランプ、リブロースらしい。
それぞれ特徴があって美味しい。
サーロインが柔らかくて良い味だなあ。
すごいなあ、ブロウライト領の牛。
「これは……、美味しい……」
「だろう、エルマーもがっつりセットにしておけば良かったんだ」
「次は……、挑戦する……」
『がっつりお肉セット』は、サーロインとランプらしい。
見た目が凄いが、柔らかいのでするする入るみたいだな。
マリリンがはくはくと良い速度で食べておられる。
「こんな値段で、こんな肉をだすお店があったなんて、お父さんとお母さんにしらせねば」
「コリンナが連れてくれば喜ばれるわよ」
「そうだな、うん、そうだ」
コリンナちゃんも最近稼いでるからね。
ここなら、両親と姉妹をつれてこれるでしょう。
しっかし美味しいなあ。
パンもしっかりした白パンで美味しい。
「一昨日食べた牛のワイン煮も、お肉はブロウライト領の物なんですよ」
「まあ、なるほどねえ」
メリッサさんがお国自慢を始めた。
それであんなに美味しかったのね。
「オルブライト領に名物が無いのがくやしいわ」
「ポーションあるやん」
「食べれないわっ」
食べれないけどさ。
ヒルダさんも、ふんわり笑いながらお肉を食べている。
お肉好きっぽいね。
「領袖、午後の『塔』の面会に私も同席してもよろしいですか?」
「ロイド王子、かまいませんか?」
「マーラー先輩が来てくれると心強いけど、どうしてなの?」
「少し、違和感がありまして」
「「違和感?」」
「麻薬のルートの捜査が少々遅れているのではないかと。私の調査と差異があります」
ロイドちゃんの眉間にシワがよった。
「『塔』に裏切り者が居る、と?」
「その疑念があります」
ロイドちゃんが、ふむ、と言って黙り込んだ。
国王派である『塔』に、ポッティンジャーの諜者が紛れ込んでるのか?
ありそうな事だけど、本当ならヤバいな。
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