第278話 鍛冶部にランタンを頼みに行く
アンソニー先生のお話が終わると、ホームルーム終了である。
くれぐれもスラムに近づかないようにとの事。
麻薬とかに、はまってないと、貴族の子女がスラムとかは行かないだろうね。
鐘がなって放課後である。
んーっと伸びをする。
さて、どうしようかな。
ロイドちゃんが『塔』と話をつなぐとしても結果が出るのは明日かなあ。
突入は金曜日かな?
教会の聖騎士部隊を連れていこうかな。
リンダさんも居れば安心だし。
武力があると、色々な手が増えるね。
図書館でガドラガ大迷宮のガイドブックでも借りに行くか。
「カロルは錬金?」
「うん、またお風呂でね」
あ、そうか、今日は水曜日か、聖女の湯の日だね。
うしし。
あっと、夜にはお風呂の水質を確認しないとな。
カロルが無情にも行ってしまった。
ぐぬぬ。
あ、戻ってきた。
カロルは黙って羊皮紙を前に出した。
「はいこれ」
「なにこれ」
「ランタンの内部回路よ」
そう言うと、カロルは魔力をスイッチに流して光らせた。
おおお、青白い光がピカーッと光るね。
エルマーが黙って羊皮紙を出してきた。
「出来た……」
おお、二人とも早いね。
エルマーの回路を光らせると、薄緑色の光がペカーと光った。
どっちも汎用魔石で光らせるのに良い光量だね。
「うっは、こんな細かい回路、鍛冶部の人、刻めるかな?」
「配慮してあるわ」
「配慮……、した……」
そうかい。
「二人ともありがとう。鍛冶部に頼んでくるよ」
「エルマーの回路は洗練されているわね-」
「カロルの……、回路は……、美しい……」
そうですか、私にはちっとも解らないな。
二人は教室を去っていった。
さて、鍛冶部に持って行くかな。
校舎から渡り廊下をつたって実習棟へ向かう。
棟の一番奥まで行き、重いドアを開ける。
ごわあああっと熱気と轟音が廊下に吹き出してきた。
ガッキンガッキンとバルトロ部長は鎚で鉄を打っているな。
「おおっ、マコト、良く来たな、今日のドライヤーは集会場に持っていったぞ」
「うんにゃ、新しい仕事、ランタン作ってくれない?」
私はバルトロ部長にカロルとエルマーの回路を渡した。
「ほうほう、こいつは良い回路だな。細かいが彫れないほどじゃあないな、解った、土曜日ぐらいでいいか?」
「いいよ、日曜日にダンジョンアタックだから、それまでに」
「わかった、土曜に取りにきな」
「ありがとう、お金は?」
「ああ、ドライヤーでも儲かってるから、ただで良いぜ、良いランタンだったら購買部に落とせるしよ」
「悪いよ」
「いい、いい」
バルトロ部長はうるさそうに手を振った。
もー、職人さんだなあ。
「あと、盾剣の部品が来たからよ、ユニコーン剣置いてけ、これも土曜までやっといてやる」
「わ、本当、ありがとうっ」
私は右腰からユニコーン剣を抜いてテーブルに置いた。
バルトロ部長はカロルの回路を確認しはじめた。
「へえ、土の魔石でのランタンか、これは変わり物だな。ランニングコストが安そうだな。こっちは水魔石のランタンか、おもしれえな」
一般にランタンの回路は光魔法の回路で作られていて、光魔石を使うと凄く光るんだけど、安い魔石だと暗いのだ。
安い魔石を使えるランタンは需要があるかな。
「そっちは何を作ってるの?」
「聖剣を見て燃えちまってさあ、魔剣だよ、魔剣、回路を組み込んだ奴で夏の鍛冶祭りのグランプリを狙うぜ」
「へえ、凄いね、頑張ってね」
「おう、そうだ、エルマーさんと、カロリーヌさんに魔法陣の協力を頼みてえんだが、大丈夫かな?」
「良いんじゃ無い、あの二人魔導具の設計好きそうだし」
「よっしゃ、今度頼みにいくわ、ありがとうな」
「二人に言いなさいよ」
「ちがいねえ」
バルトロ部長とマッチョ一号はガハハと笑った。
ドアがガーンと音を立てて開いた。
「お、おいっ!! お前がクソ聖女だなっ! お前がっ、お前がっ!! クソ聖女だなっ!!」
目を血走らせた二年生男子が飛び込んで来た。
ぶるぶる震えている。
「「……」」
いきなりの事態で、バルトロ部長と二人で沈黙してしまった。
「お前がいるせいでーっ!! 俺はッ!! 俺はーっ!! 満足に薬も買えないでっーっ!! お前のせいでーっ!! お前のせいでーっ!!」
目が充血した二年生は怒鳴りながらショートソードを抜き放ち、突進してきた。
そして、私が無詠唱で唱えた障壁にぶち当たりガッシャンと砕き、派手に転んだ。
転んだ先に、ダルシーが現れて、拳で彼の頭部をガンガン殴った。
血が飛び散った。
「殺しますか?」
「い、いやいいよ」
「お前がお前がお前がーっ!! おまえおまえおまえおまえっ!!」
「お前がなんだよ?」
どうも麻薬でとち狂ったっぽいな。
「俺には薬が必要なんだーっ!! お前のせいで薬が買えないーっ!! お前を殺せば薬が手に入るんだーっ!!」
「殺しましょう」
「いや、やめなさい、ダルシー」
ぎゅうぎゅう関節技かけんなよ。
話にもならないなあ。
『キュアオール』
血走りくんの頭に治癒魔法をかける。
う、なんか、浅い感じ。
『キュアオール』
ま、まだか?
『キュアオール』
三回かけてやっと血走りくんの顔から狂気が抜けた。
目に理性が戻ってくる。
「……お、俺は……、ああ、なんだ、なんであんな事を……」
「クラスメイトとか怪我させなくてよかったなあ」
血走りくんの目からぽろりと涙がこぼれた。
「はい……」
麻薬は怖いなあ。
とんでもないぞ。
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