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第27話 朝の準備をして今日も元気に登校であるよ

 朝である。

 昨日の事は思い出すまい。

 くっそー、カロルめ。


 はしごを伝って下りて、自分のチェストからパンを出す。

 うひひ、まずいポリッジから卒業だぜ。


「あ、汚いっ、マコトは裏切るつもりねっ」


 コリンナちゃんがベットから顔を出して、私をののしってきた。


「ふふふ、もうあのまずいポリッジは食べないんだよ」

「約束したじゃない、卒業まで毎日、二人で一緒にまずいポリッジを食べようって」

「そんな約束はしておりません。でも、お茶を入れてくれるなら、コリンナちゃんにもパンを分けてあげてもよろしくってよ」

「行ってくるっ!」


 コリンナちゃんがケトルを持って205号室を飛び出していった。


 メイドさんたちのベットはもぬけの空だ、もう出勤していったらしい。


 コリンナちゃんが沸かしてきたお湯でお茶を入れる。


「コリンナちゃんは、聖女パンとマヨコーンどっちがいい?」

「マヨコーンって食べたことないわね」

「じゃあ、そっちで」


 二人でもぐもぐタイム。

 あー、聖女パンうまいー。


「おいしー、涙が出ちゃうほどおいしー」

「本当に、あの下級貴族食はなんとかしないと」

「まったく、貴族の食べるもんじゃないよ、あれは」

「牢獄ごはん、って感じよね」

「ちがいない」


 朝から美味しい物を食べると気合いが入るね。

 さあ、学園に向かおう。


 コリンナちゃんと一緒に登校である。

 今日も晴れてて気分が良い。

 王都地方の春はうららかで雨降りが少ないのだな。


 ちなみに、アップルトン王国の気候は、普通に日本と一緒。

 春夏秋冬があって、梅雨もあるし、わりかし手抜きだと思うんだ。

 まあ、乙女ゲーで、別の世界だから、乾期、雨期とか言われても、実感に困るからだろうけどね。

 ゲームプレイヤーが、住んだ事の無い気候は思い浮かべにくいということだろう。


 校内に入ると、また、正面に壁新聞が貼ってありやがる。


 なになに?


『またも大事件! 女子寮で、聖女候補を狙った毒殺未遂が起こる!! 毒杯を飲み込み仁王立ちで大喝する金的令嬢の秘密とは!!』


 うむ、まあ、誇張があるが、おおむね、魔法学園新報の方は事実に即した記事だな。

 相変わらずの名調子で読みやすい。


 問題は、新貴族速報だよ、また捏造、偏向、侮辱の限りを尽くしているなあ。

 傲慢で悪辣な聖女候補が思い上がり、給仕のメイドに毒が入っていると難癖を付け、間に入った二年生の先輩を怒鳴りつけ、卒倒させたと、メリッサ様が言ってた通りのカバーストーリーだな。

 死んだボウガンメイドについては無視ですか、そうですか。

 あと、カーチスとエルマーが、毒聖女の魅了に掛かり、情交を餌に悪落ちしたと書いてもある。


「そうか、俺は悪落ちしてしまったのか」


 いつの間にか、カーチスとエルマーが、私の隣に立っていた。


「肉体関係を……、餌にか……、マコトの体はもう少し育ってくれないと……、僕には難しい……」

「そうだよなあ、胸とか、尻とかよう」

「うっさいよ、あんたらっ」


 エロ男子どもめっ。

 セクハラだぞっ。

 コリンナちゃんも、笑いをかみしめないのっ。


「本当にもう、キンボールさんは……。僕は困っちゃうんだ」


 うお、なんだか唐突に、二年生の青のリボンを首にまいた、ショートカット美少女令嬢が声を掛けてきたぞ。

 だ、誰?

 僕っ子だ。


「あ、ごめん、僕はウィルキンソン伯爵家のヘザーだよ。気軽に、ヘザーと呼んでおくれ」

「は、はあ、ヘザー先輩ですか」


 ヘザー先輩は、ニヤニヤ笑った。


「君が毎日面白い事をしてるから、マルゴットの報告が長くなって、彼女が不機嫌になっちゃってね、困ってるんだ」


 ああ、マルゴットさんがお仕えする、ご令嬢様でしたか。


「なんで君は、昨夜オルブライト嬢に、廊下で人間発電所を掛けられていたんだい、僕は、気になって気になって眠れなくてさ」


 なんだか、あの技は、正式名称がカナディアン・バックブリーカーなのに、通称が人間発電所になってきてるな。

 ちなみにこの世界に発電所は無いので、【電撃を生み出す城塞のような人物】みたいな構文になっている。


「なにしてんだ、マコトは」

「あの技は……、むずかしいのに……」

「いや、その、それは些細な行き違いで、カロルと喧嘩になりまして」

「まったく面白いよね、キンボール嬢は。中堅貴族は諜報系の貴族が多いんだけど、その集まりでも、君が話題を独占しているよ」


 主な産物も無い領地を持つ中堅貴族は、諜報貴族化するらしい。

 情報を集めて、勢いのある方へ、ある方へと風見鶏をして、お家の存続を主目的に頑張るらしい。

 しかし、諜報系の貴族の集会って、腹黒そうでやだなあ。

 近寄りたくないものだ。


 ヘザー先輩は私に近寄ってきた、


「うちの家、ウィルキンソン伯爵家はポッティンジャー公爵派閥なんだけどね、今、国王派閥に移籍を計画中だよ。僕は君の味方ではないけど、敵でもないから、君の活躍を生暖かい目でじっと見させてもらうね」


 ヘザー先輩は、ニマニマ笑いながら、それだけを私に耳打ちすると、去っていった。


 ポッティンジャー公爵派閥でも、参加時期が新しい貴族は様子見で国王派に避難しようとしてる感じかな。

 派閥を構成している貴族でも、忠誠心には高低があるから、低いの方の貴族たちが揺らぎ始めた感じか。


「ふむ、風向きが良いな」

「追い風……、感がある」

「今日は何もありませんように」

「無理だな」

「きっと……、なにかある……」


 ぬう、理不尽だ。


 まあ、放課後にカロルと冒険者ギルドにいくから、そこでも何かあるんだろうな。

 ヒカソラのイベントってベタな所は、とことんベタだからなあ。

 ゲームの中では、ハゲマッチョの冒険者に絡まれるイベントは三つあったぜ。

 どれも、


「冒険者ギルドはガキの来るところじゃあねえんだ」


 とか言って主人公カップルに絡んできて、ハゲマッチョは負ける。


 ロイド王子と解って土下座してみたり、カーチスに殴り飛ばされたり、ジェラルドに説教されたりで、ハゲマッチョの中の人も大変だ。

 選択肢次第では主人公がやっつける事もできるのだが、攻略対象者に「たすけて」と言った方が好感度が上がるのでお得であるよ。



 四人で階段を上がって、二階へ、おドレスさま密集地帯のC組前を抜け、カーチスとコリンナちゃんとはB組でお別れ、私とエルマーはA組に向かう。


 ドアをあけると、カロルが教科書を開いて読んでいた。

 うむ、いつもの光景だ。


「おはよー、カロル」

「おはよう……」

「おはよう、マコト。おはようございます、エルマーさま」


 もうカロルは怒ってない?

 怒ってない?


 私のおどおどした視線を感じ取ったのか、カロルはにっこりと微笑んだ。


「今度また、ああいう物の話をしたら、問答無用で人間発電所を掛けるからね」

「わ、わかったよう」


 カロルに隠れて、下町でお店を探そう。

 ああ、でも、カロル製のああいう物の方が良いよなあ。

 安心安全清潔な、カロル製のエッチいお道具が欲しいよなあ。

 な、なんだか、親友が作った物で、あれで、あれで、あれなら、燃えそう。

 背徳感で超興奮といいますかー。

 うへへへへ。


「また、何かよからぬ事を考えているわね」

「カンガエテマセンヨ」



 アンソニー先生がきてホームルーム。

 一学期にある学校行事のお知らせがあった。


 まずは五月の前半に新入生歓迎ダンス夜会がある。

 一学期に一回あるダンスパーティの最初のやつだね。

 一応自由参加となっているね。


 ゲームでは、この時期、みんな好感度が低いので、参加する場合、エスコートしてくれる人を探すのが大変だった。

 みんな普通に婚約者いるしな。


 四月の中盤から、婚約者のいない一年生の男女は、エスコート相手を探すのに必死になるはずだ。

 で、最初のダンパに誘った相手と、ずっとお付き合いをして、結婚という人も珍しくないらしいね。

 ゲームの時、カロルがなんでダンスパーティにいないのか、ずっと不思議だったんだけど、この世界に転生してきて、カロルの事情を知って納得したよ。


 卒業のダンスパーティまでには、カロルを、なんとかしてあげたいなあ。

 一緒に綺麗なドレス着て、ダンパに出たいじゃん。


 さて、歓迎ダンパが終わると黄金週間。

 うん、ゴールデンウィークだね、既視感あるね。


 五月の後半に中間試験がある。

 六月に遠足。一年は王都郊外の小山にハイキングらしい。

 七月に入ると武芸大会があって、期末試験を終わらすと、夏休みであるよ。


 意外に盛りだくさんだね。


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― 新着の感想 ―
[一言] 百合百合内容はどのくらいですか? 百合だけ見たい... 百合ハーレムはありますか?? ビビアン様攻略できるかな??
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