第276話 お昼はクララの販売ワゴンでパンを買う
さて、音楽の時間が終わったので、A組にもどる。
次の時間は社会だ。
この前はアップルトンの社会構成をやったので、その続きである。
まあ、貴族の目から見た社会なので、庶民の事などはそっちのけで領地をどう発展させるか、などのお話が続くよ。
国は女神から支配する特権を貰い、各貴族にそれを王権にて分け与えている。
と、いう建前なので、貴族の領地の法律は、国法と領地法の二つがあって、税金とか関税とかは、領地法の管轄なのな。
領地法は国法を越えるものではないけど、国法に定められて居ない部分は好きに制定できるのだ。
好きに制定できるから、とてつもない悪法とかが残ってる地域もあるんだな。
初夜権と言って、領主がお嫁さんの初夜を貰うという法律が残ってる地域もあるらしい。
やだやだ、野蛮だねえ。
たまに悪法を巡って大暴動とか起きるから、諸君も注意しよう、だってさ。
国が率先して悪法を潰せよ、ですがな。
社会の授業が終わると、次は武術である。
皆で更衣室まで移動して、運動着に着替える。
バッテン先生の挨拶の後に、二手に分かれてカンカンやる。
今日もコイシちゃんとだな。
しかし、バッテン先生の体絞られたなあ。
手足に筋肉が透けて見えるな。
そうとう頑張ってるな。
カンカンカンカン。
「だいぶ上手くなったみょんなあ」
「そうかな、大分、刀をさばけるようになったかな」
「よし、では、私とだ。コイシはカロリーヌとやってこい」
「モーニングスターと戦うのは面白そうだみょん」
「良いわね、代わりましょう」
コイシちゃんがカロルの方へいってしまった。
私の目の前にいるのは、レイピアの木剣を構えたカトレアさんだ。
「ふふふ、最近の私の突き技は鋭いぞ」
「面白いっ」
お互い別れて剣を構える。
カトレアさんとまともに戦うのは初めてかな。
カンカンカン。
おー、突きだから受けるの大変だなあ。
正確に受けないと逸れる感じ。
おもしろいおもしろい。
剣盾は受ける場所が狭いから難しい。
「おお、受けるな、さすがだ」
「難しいけど、刀と違って直線だから、なんとかっ」
カンカンカン。
突きを剣盾でさばいて、引き際に踏み込む。
あー、こちらの得物が短いから間合いを詰める前に、カトレアさんに木剣を引き上げられた。
詰められた間合いで刺突を避ける、受ける。
さらに踏み込む。
右の小太刀の斬撃をヒルト(鍔)で受けられて、肩口に有効打を打たれた。
「うーむ、負けた~」
「よしよし、マコトに勝ったぞ」
カトレアさんが嬉しそうだな。
くそう、次は覚えていろよ~。
まあ、カトレアさんは小さい頃から修行してるからね。
まともに戦うと負けるわな。
くそうくそう。
武術の授業が終わったので、着換えてA組に帰る。
鐘が鳴って、お昼休みとなる。
「今日はどうするんだい、キンボールさん」
なぜに、ケビン王子が声を掛けてくるのか。
「王子、今日はひよこ堂ですぞ」
「ああ、そうだねっ」
すっかり派閥になじんでおるな、この王子主従は。
「今日は女子寮の前で、クララがパンを売るそうなので、そっちで買います」
「女子寮の前か~」
「女子寮食堂で売っているのかね」
「今日はテスト販売ですって、試しに買ってみたいのです」
「面白いね」
「ふむ、ひよこ堂も良い味のパンを出していたが、改善著しいという女子寮食堂の味が試せるのも興味深い」
ジェラルドはもう、うるせえな。
インテリうるさい。
B組の子がどやどややってきたので、私も席を立つ。
「今日はどうすんだ?」
「女子寮の前でパンを売るらしいので、そこで買うよ~」
「おお、学校内か」
「では、お昼は皆で中庭で食べましょうね」
メリッサさんがにっこりと微笑んだ。
みんなでどやどやと、階段を降りる。
二年生の、ヒルダさんと、ライアンくんと合流。
建物を出る所で、ゆりゆり先輩と合流と、いつも通りの流れだね。
校舎を出て女子寮はすぐなのだ。
行ってみると玄関前にワゴンが出ていてパンが一杯置いてあった。
売り子はクララとメレーさんであるな。
「いらっしゃい、マコト、一番乗りね」
「あまりお客さん来てないね」
「初日だからさ、宣伝もしてないしね」
メリッサさんと、マリリンがワゴンに取り付いた。
「わあ、色んなパンがあるわね。あ、聖女パン?」
「ナッツ聖女パンみたいな~、パクリ商品よ」
制作者がパクリと言うない。
まあ、私も前世の知識でパクったから文句は言うまい。
パンの製法まで特許は来ていないのだ。
魔法関係だけだね。
「じゃあ、偽聖女パンと、ええと、これ何?」
「エクレアだね、あんまりパンじゃ無いよ」
メレーさんが答えた。
デザートというか、お菓子も置いてるのか。
「パンとお菓子は分けた方が良いかな。卵ソーセージドッグをください、あとソーダ」
「そうだね、はい、毎度あり」
クララがお金と引き換えに亜麻布袋にパンとソーダを入れてくれた。
「面白いわね、じゃあ、私は、偽聖女パンとハムサンドをください、あとソーダ」
ソーダはひよこ堂の物と一緒だね。
シャンパンバケツに氷と一緒に入れて冷やしてある。
みんなでわいわい買っていると、パンの数が半分ぐらいになったね。
聖女派閥は人数が多いから。
良く見ると、ワゴンには、白パンと黒パンも売っていた。
「これは?」
「いつもの晩餐の奴、でも下級貴族食を食べてる子は白パンが食べたいし、上級貴族食の子たちは黒パンが食べたいらしいわ。たまに頼まれるから」
クララの作ったパンは、白パンも黒パンも美味しいからね。
あっちのパンはどんな味だろうって思うんだろうね。
聖女派閥がパンを買い終わった頃には、めざとい生徒たちがやってきて列をなしていた。
うんうん、クララのワゴン販売、初日は良い感じじゃないかな。
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