第270話 冒険用具屋で、みんなが色々な用具を買う
カツンカツンとエルマーが棒で床を叩き、首をひねっている。
どうもしっくりこないようだ。
しかし、10フィート棒は買うほどの物なのかね。
TRPGに良く出てくるのが10フィート棒だ。
ダンジョンに罠が無いか、この長い棒であちこち叩いて進む物らしい。
こっちの世界にTRPGの流れで来たのか、それとも自然発生の物か、どっちだろうね。
ゲームのRPGパートには無かったと思う。
なんだか、この店には何種類か棒があるようで、エルマーは真面目な顔をして試している。
どうやら、等間隔で縞模様があって、長さを測れる物もあるっぽい。
リュックを背負ったコリンナちゃんが前を通り過ぎた。
「コリンナちゃん買ったの?」
「買ったー、一番安いの、でも雑貨屋のリュックより高い」
「そりゃまあ、専門店だから、頑丈なのよ」
「まあ、仕方ない」
あいかわらず、コリンナちゃんはお金使うの嫌いだなあ。
でも小さいリュックを背負ったコリンナちゃんは可愛いな。
カトレアさんが、ランタンのコーナーで迷っていた。
「ああ、マコト、このランタン、どっちが良いと思う?」
指し示したランタンは、片方が小さな魔導灯の物、片方が油式の魔導でないランタンだ。
「小さい魔導灯のを買えば良いんじゃ無い?」
「そうかー、うーむ、だがお値段がなあ」
値札を見ると、魔導ランタンは二万ドランクぐらいするね。
一方の油ランタンは五千ドランクぐらいだ。
一応替えの魔石もいるから、魔導ランタンは結構するね。
「コイシちゃんは買わないの?」
「油ランタンを持ってるみょん」
「コイシのランタンは煙を噴くからな、それもあって魔導ランタンにしたいのだが」
「この前照らしてやらなければ、カトレアしゃんは動けなかったみょんよ」
「それは感謝しているが、煙を噴くのは別の問題だ」
「鍛冶部に頼んだら安くできるんじゃない?」
「「は?」」
「魔法陣部分はエルマーかカロルに頼めばいいじゃん」
「あ、やってあげるわよ」
後ろでナイフを見ていたカロルが振り返って答えた。
「「ほんとうか」みょん」
魔導ランタンに必要なのは発光体だけだから、魔法陣もそう難しくはないだろうし。
ガラスで囲えば良いのだ。
「お願いできるだろうか」
「わ、わたしも欲しいみょん、ランタン煙吐くし」
「いいわよ、まあ、マコトがいればランタンは要らないのだけどね」
「はぐれたりするかも知れないから必要だよ」
私と一緒なら、ライト球を飛ばして辺りは明るくなるけど、ダンジョンアタックの時ははぐれるかもしれないしね。
大きいテントや寝袋も置いてある。
ガドラガで泊まりがけで潜る時は必要なんだろうな。
魔除けと警戒の魔法陣を書いた上にテントを張って休むらしい。
ゲームと違って現実のダンジョンには安全地帯は無いから、交代で眠って警戒するらしい。
やだやだ、寝た気がしないだろうなあ。
さて、私に必要なのはと。
荷物は収納袋に入れちゃうからリュックは要らない。
ロープはいるな、私はロープを……。
「店長、ロープってどれくらい要るものなの?」
「五クレイドも持ってれば良いんじゃ無いか、それ以上だとかさばるしな。長さが必要な時は出し合ってつなげばいい」
「じゃあ、五クレイドください」
「あいよ」
店長は巻いてあるロープを五クレイド切ってくれた。
よしよし。
ランタンは必要がないし。
ナイフか。
子狐丸もあるし、ユニコーン短剣もあるから、ポケットナイフ程度で良いね。
折りたたみのこれにしよう。
ナイフと、ロープ。
あとはくさび。
扉が閉まらないようにとか、ロープを掛ける起点にとかに使う。
鉄製の物を三本あればいいか。
あとは水筒。
いくつか種類があるね。
革製の変な形の奴がある。
これは、羊の胃を使った奴だな。
割と入りそう。
これは柔らかく胃の皮をなめした物だから、押すと口からぴゅーと出る。
これを買おう。
私は選んだ物をレジに運んだ。
ダルシーが現れて派閥のお財布を出してきたのを手で止める。
「私の物は私の財布で買います」
「ですが」
「派閥のお金はみんなのお金ですから」
「わかりました」
ダルシーは姿を消した。
「物堅いねえ」
「店長だって自分の物をお店のお金で買わないでしょ」
「ちがいねえ、八千三百ドランクだ」
私はお財布からお金を出して、店長に渡した。
「はい」
「まいどあり」
私は荷物を無詠唱で収納袋にしまった。
ジュリエットさんが高そうなリュックをしょって嬉しそうに歩いていた。
「マコトさま、マコトさま、良いでしょ、ロイドさまとお揃いなの~~」
「よくにあうわ、素敵よジュリちゃん」
「えへへへ~~」
相変わらずの厨二ファッションだけど、昔のような邪気はなく、ほがらかにジュリエットさんは笑った。
うんうん、良いね良いね。
ジュリエットさんは笑顔が一番だよ。
ロイドちゃんも同じ高級リュックを背負ってぶらぶらしていた。
「どうどう? 格好いい? 惚れ直した? マコトっち」
「いやぜんぜん」
「もー、マコトっちはつれないなあ」
悪いなロイドちゃん、私はチャラ男が嫌いなのだ。
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