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第267話 黄色熊の住処亭で子牛のワイン煮をたべる

 みなでどやどやと大きめの個室に入る。


「ランチを十七人分おねがいね」

「はい、かしこまりましたおひいさま」


 居酒屋のおばちゃんは死んだような目でそう言った。

 うむ、VIPを連れてきてしまってごめんね。


 居酒屋の個室は広くて居心地が良い。

 出されたお茶も美味しいな。


「そういえば、マコト、昨日、お風呂を見に行くの忘れたわね」

「!」


 そういや忘れてたーっ!!

 ダンジョンガイドを読んで寝落ちしてしまったよ。


「ごめーん、忘れてた」

「呼びに行ったら寝てるみたいだったから私だけで行ってきたわよ」

「ありがとう、どうだった?」

「さすがに夜になると効力がちょっと落ちてたわね」

「ちょっとなのか、良かった」

「結構効き目が強いみたいよ。お湯は汚れてたけどね」

「お風呂のお湯って汚れたらどうするの?」

「循環の魔法が掛かっていて、一定時間で浄化槽で汚れを綺麗にするわよ」


 意外にハイテク温泉みたいな設備がついているな。


「悪いね、水曜日には行くから」

「うん、それで良いわ」


 聖女の湯事業は、ゆっくりノウハウを積み上げて行けばいいだろう。

 競合他社いないしね。


 カーチス兄ちゃんがワインリストを眺めている。


「すまない、今年の新酒のアンドレアワインをボトルでくれ」

「はい、かしこまりました。グラスはいくつお持ちしましょう」

「飲むやつは?」


 エルマー、エルザさん、ゆりゆり先輩、メリッサさん、ヒルダ先輩が手を上げた。

 あと、ケビン王子と、ジェラルドと、ロイドちゃん。


「マコトも、カロルも飲まないか?」

「お酒はあんまりね」

「お昼間からは飲まないわ」


 アンドレア領のワインは美味しいと聞くけど、なんか、体がちっちゃいのでお酒を飲むのに抵抗があるな。

 前世でもちょっとしか飲まなかったしね。


 この世界では、子供もワインを飲むのだ。

 子供が風邪を引いたら砂糖を入れて暖めたワインとか飲ませるね。

 まあ、前世の西洋の感じの風習なんだけど、こっちの世界、偽フランスで水が軟水なんだよなあ。

 わりかし上水道の水が普通に飲める。

 魔石からの発生水も普通に飲める。

 硬水だから、民衆も水代わりにワインをがばがば飲んでいたヨーロッパとは違うので、なんだかなという気分になるが、細かい所は良いじゃろというのが乙女ゲーでございますな。


 おばさんとお姉さんがランチを持って来て、皆に配膳していく。

 わあ、ビーフシチューだね、これは、美味しそう。


「子牛のワイン煮アンドレア風です」


 そうかー、子牛のビーフシチューか。

 ミニサラダもついている。

 パンは固いバゲットだね。


 みなにランチが行き渡ると、なんだか期待の視線が私に向けられる。

 むうっ。


「いただきます」

「「「「「女神に日々の糧を感謝します」」」」」


 さ、食べよう食べよう。


 パクリ。

 ほおおおおっ。

 おいしい。

 ちょっと酸味のある味わいで口の中でお肉がほろほろとほぐれていく。

 ああ、好きな味、好きな味。

 ジャガイモもほくほくで美味しいね。


「懐かしい味わいだわ」

「オルブライト料理のお店は王都にはないの?」

「無いわねえ、オルブライト領は錬金薬は強いのだけど、メインになる食物とか料理とかが無いのよ」

「ワインは作って無いの?」

「小さいワイナリーしかないわ、近くにアンドレア領があるから」

「えへへ、ごめんなさい、カロリーヌさま」


 メリッサさんが笑って言った。


 地方によって経済ブロックがあって、得意な産物を回しているのだな。


 あー、汁の所も美味しいなあ。

 ワインの味が深みを出してる感じ。


「ふむ、良い味のワインだ、初めてのんだね。アンドレアさん、褒めてつかわすよ」

「まあ、ケビン王子の口に合いまして、光栄ですわ」

「王家にも入っているが、主に職員食堂だな。少し良い物を王家に勧めるか」

「今年も良い物が出来ましたので、いくつか王宮にお持ちしますわ」

「それは嬉しい、ありがとう、アンドレアさん」

「とんでもございませんわ、いつでもアンドレア領は王家に忠誠を尽くしますわ」


 うむ、メリッサさんはすばらしく貴族らしい受け答えだな。

 領主の娘は領の外交大使でもあるんだね。


 ワイン煮に固いパンが合うね。

 ぱりぱり食べて、シチューをぱくり。

 うむうむ。

 サラダをつまんで、またシチュー。

 人参もよく煮えて甘い。


 完食したー。

 おいしかったなあ。


 王都には各地の美味しい料理が集まってくるから、たまらんねえ。

 食通の天国だね。

 ごちそうさま。


 おばちゃんが見計らってお茶を持って来た。

 あら、珍しいコーヒーだね。


「アンドレア領はコーヒー取れるの?」

「とれませんよう、アップルトンの南部でもコーヒーは無理ですわ」


 コーヒーは偽アフリカ大陸あたりから来るのだろうな。

 熱帯の植物だから。


 熱帯植物と言えば、カカオの輸入は増えないのだろうか。

 チョコは流通してるけど馬鹿高いのよね。


 いっそ飛空艇で輸入するか。

 南米まで、三時間もあれば着けるから。

 日帰りできるね。


 まあ、でもカカオを超細かくすり潰すのが大変だからやめとくか。

 もしくは来年の愛の日のイベントの前にだけ一回輸入するとか。


 ああ、飛空艇でいろいろ遊びに行きたいなあ。



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― 新着の感想 ―
[良い点] > VIPを連れてきてしまってごめんね おばさんの反応を見るに、一番のVIPは貴女自身ですなw [気になる点] ワインと水事情、硬度はともかく衛生面あるからやはり子どもにも飲ませそうな気も…
[一言] 子牛のワイン煮美味しそうです。ランチなのでコーヒー付きで700ドランクくらいでしょうか。ランチワインうらやましい。聖女ポーションに酔い覚まし効果とかありそう
[一言] 飛空艇での個人輸入か 輸送技術がそれほど発達してないから痛む食料品とか護衛のコストがかかる宝飾品とかよさげ あと偽欧州にジャガイモがあるってことは大航海時代相当のイベントは発生してるんだな…
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