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第266話 メリッサさんの領の飲み屋さんランチに行こう

 終業の鐘が鳴り、お昼休みである。

 んーっと、のびをする。


「マコトは猫みたいよねえ」

「そうかなあ、犬っぽくない?」

「……猫」


 そうなのか。

 エルマーが言うならそうなのかもしれないな。


「今日はどこいくの? 外食の日よね」

「いや、べつに、ひよこ堂は、うち飯じゃないし」


「そう何回も王宮職員食堂は無理だぞ」


 ジェラルドめが割り込んできおった。


「王宮食堂は美味しいけど、季節に一回ぐらいでいいや」


「おーい、マコト、今日はどうするんだ」


 カーチス兄ちゃんを筆頭に、B組の聖女派閥員がどやどやとA組に入ってきた。


「決まってなーい」


 私がこう言うと、おずおずとメリッサさんが前に出た。


「あの、よろしかったら、私の家の領のお店に行きませんか?」

「アップルトン西部のお料理?」

「はい、夜はワインとかお酒を出すお店なんですけど、お昼はランチをやってます」

「いいわね、アンドレア領のお料理なら、オルブライト領のお料理に近いわね」


 カロルが笑って言った。


「おー、カロルの実家と同じ系統の料理?」

「うん、ワインの煮込み料理とかが有名よ」

「牛肉の赤ワイン煮とかが美味しいですよ」


 それは美味しそうだね、行ってみようか。


「ふむ、聖女派閥とランチをすると色々な地方の料理が食べられますな」

「まったくだね、コイシくんの故郷の料理も美味しかった」

「うわ、ケビン王子しゃま、恥ずかしいみょん」


 というか、また普通についてくる気だな、ケビン王子とジェラルドは。

 まあ、良いけどさ。


 私たちはぞろぞろと教室を後にする。

 ロイドちゃんとジュリエットさんもいるな。


 階段でヒルダさんを、玄関前でゆりゆり先輩とライアン先輩が合流した。


 さてさて、今日も良い天気で気分がいいね。

 暖かい日差しのなか、王都大通りを歩いて行く。


「いつも上機嫌だな、おまえは」


 カーチス兄ちゃんが私の横に並んで声をかけてきた。


「まあねえ、楽しい事が多すぎるから」

「一般人なら五回は死んでる所なのに、のんきな事だな」

「実際は死んでないから大丈夫、光魔法万歳」

「めちゃくちゃ強力だからなあ。で、放課後、ダンジョンアタック道具を買いに行くんだって?」

「そうだよ、カーチスも来る?」


 しっかし、耳が早いな。

 買い物に誘う手間が省けて良いとも言うが。


「エルマーも行こうぜ」

「解った……、たのしみ……」

「エルマーは何を買うの?」

「棒……」

「棒?」

「この前、こいつは罠に引っかかってさ、罠よけの棒だよ」


 ああ、地面をひっぱたいて罠が無いか探す棒ね。

 売ってるんだ。


「というか、魔術師が先頭を歩いていたの?」

「魔力……感知……、していた……」

「斥候がいないからなあ。エルマーが魔力感知で魔物を把握しながら歩いていたら、罠に足を突っ込んだ」

「いたかった……」

「斥候を連れていきなさいよ」

「ダルシーも、アンヌも連れて行けないしなあ。斥候系の生徒はあまりいないし」


 僧侶が少ないのも困るんだけど、斥候やる生徒も少ないんだよね。

 ほら、みんな、お貴族さまだから。

 ガドラガ大迷宮では、斥候役に冒険者を雇ったりするのだけどね。


「次に行くときはギルドで冒険者の斥候を雇うつもりだ」

「それがいいね」


 ギルドの冒険者はお金が無くてピーピー言ってるから、結構安いお金で雇える。

 経験をお金であがなう感じだね。



 メリッサさんが先導して連れてきたのは飲み屋街である。

 中級飲み屋さん街だね。

 ランチもやってるのか、結構人通りが多い。


「さあ、ここですわよ」


 メリッサさんが指し示したのは、山小屋風のログハウスみたいなお店であった。

 意外に大きい飲み屋さんのようだね。


 メリッサさんを見つけて、民族衣装を着た中年のおばさんがぱたぱたとやってきた。


「まあまあ、アンドレアのおひいさま、いらっしゃいませ、ようこそ」

「今日は学園のお友達を連れてきたわ、個室は空いてるかしら」

「はい、あいておりますよ、どうぞどうぞ」


 さすが領主の娘さんである、下にも置かないお持てなしであるね。

 私たちはぞろぞろとお店に入る。


「いらっしゃ……、ひっ、ひいいいいっ!!」

「いや、ご婦人、他人のそら似だ、私は王子ではない」

「は、ははああっ」


 おばさんは、その場で土下座する勢いである。

 そりゃまあ、子爵の娘が王子様連れてくるとは思わないだろうなあ。

 中世の国は、身分制度が強いねえ。


「おばさん、学園の制服を着ているときは、これはただの生徒、そう扱わないと失礼なのよ」

「は、は……。あ、あなたはっ、聖女さまっ?」


 おばさん……、事情通だな。

 飲み屋さんだから顔を覚えるのが得意なのかな。


「いや、おばさん、人違いです」

「は、ははああっ」

「王子の時より頭の下げ角が深いではないかっ、納得できん」


 私は黙って、ジェラルドの向こうずねを蹴っ飛ばした。


「いっ」


「良いですか、あなたの知っている誰に似ていようとも、学園の制服を着ているときは、ただの生徒、そう心得てください」

「料理を増やすとか、そういうお気遣いも無用ですよ」

「は、ははああっ」


 うーむ、おばさんが恐れ入ってしまって、ダメかもしれないなあ。



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― 新着の感想 ―
[一言] 単独で先行する可能性もある斥候系の人は相応の戦闘力を手に入れた上でそれ系の技術を覚えないと意味無いからそりゃ貴族の努めの一環として冒険をする学園生には少ないよね 諜報系の貴族だって実働要員じ…
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