第254話 一週間の始まりは朝の日常から始まるのだ
メイドさんの着替える音で目を覚ます。
ふわああ。
よく寝た。
カーテンを開けると今日も良い天気だな。
「おはよう、カリーナさん、マルゴットさん」
「おはよう、今日も良い天気だね」
「おあよ~、ふわあああっ」
メイドさん二人は変わらぬ挨拶だなあ。
どう見てもマルゴットさんが国を代表する諜報メイドには見えないね。
怠惰メイドへの擬態が上手い。
いや、違うか、怠惰なのが地かもね。
二人を見送った後、ハシゴを下りて、歯磨きしたり用をたしたり着替えたりする。
そのうちコリンナちゃんも起きてきて、ダルシーがケトルを持って来て朝のお茶である。
日常は大事だね。
ダルシーのお茶が美味しい。
「今日はお茶の味が違うね、変えたのダルシー」
「はい、コリンナさま、新しいお茶を試してみました」
「美味しいわ、ありがとうダルシー」
「いえいえ、マコトさま」
ダルシーは褒めると、とても嬉しそうにするから褒めがいがあるね。
さてさて、鞄に教科書をつめて、食堂に行きますか。
コリンナちゃんと廊下に出て、205号室を施錠する。
「あのさあ、弓って難しいかな」
「なによ、いきなり」
「ダンジョンに行くのにマッパーだけじゃ悪いしさ」
銃器があればコリンナちゃんだって即戦力だけど、無いしなあ。
弓は誰か得意な人がいたっけか。
「放課後、弓道部へ行ってみたら?」
「そうだね、行ってみよう」
などと話しながら階段を降りて、エレベーターホールに行く。
「マコトおはよう」
「おはようカロル」
そういやアンヌさんはエーミールの時に弓を撃ってたなあ。
「アンヌさんって弓を教えられる?」
「なに、マコトが撃つの?」
「いや、私、ダンジョンに行くのに弓ぐらい撃てたらなと思ったんだ」
アンヌさんがいきなり現れた。
「よいお考えですが、弓も熟練しないと戦力にはなりませんよ、それに視力が悪い方はすこし……」
「あ、視力は大丈夫、生まれてからこれまでで一番今は視力がいいよ」
ビアンカさまに見破りメガネを貰ったもんね。
視力は大丈夫か。
「それでは、放課後に弓術の基礎をお教えいたします」
「ありがとう、アンヌさん」
「いえ、我が家の大事な寄子さまでございますので、喜んで、お力添えいたしますよ」
アンヌさんに教えて貰えば安心だね。
というか、武芸百般のアンヌさんと重拳のダルシーは普通に戦力になりそうな気がする。
初心者ダンジョンに行くには戦力が多すぎないだろうか。
食堂に入り、クララに挨拶をして、塩ポリッジを頼む。
今日の副食はソーセージエッグだ。
ああ、卵の良い匂いがするね。
卵の匂いは前世から朝の匂いとしてなじんでいるね。
トレイにポリッジとソーセージエッグのお皿を乗せ、お茶をカップに注ぎ席まで持って行く。
ジュリエットさんがトレイを持って慎重に歩いているけど、大丈夫そうね。
「ジュリちゃん、昨日はロイド王子と一緒だったの?」
「はい、音楽会にいきました~、最近ロイド王子が優しくて嬉しいです。全部、マコトさまのおかげですよ~」
「なんにもしてないよ。でも仲良くしているなら良かったわ」
「はい、私も毎日たのしいですよ~、ちょっと前の事が夢みたいです~」
ちょっと前は生き人形のアリスだけがお友達だったからね。
中二ファッションは変わってないけど、ずいぶん明るくなったなあ。
お洒落部の二人とも仲が良いし、なによりなにより。
塩ポリッジをパクパク食べる。
おいしい。
ソーセージエッグを食べる。
おいしい。
うむうむ。
お、エステル先輩がやってきたぞ。
なんだろ。
「マコトくん、男子寮の舎監のアベラルドくんが聖女の湯の元を届けてくれって言っていたよ」
「あ、忘れてました、ダルシー」
「はい、マコト様」
「これを男子寮の護衛騎士の詰め所に届けて、アベラルド侯爵令息あてに」
「かしこまりました」
ダルシーは聖女の湯の大瓶を持って姿を消した。
「アベラルドさんてどんな方ですか?」
「わりと堅物かな、でも良い奴だよ」
舎監生になるには、成績優秀品行方正でないとなれないのだな。
女子寮の副舎監は、いろいろと問題がある感じだが、まあ公爵令嬢だしなあ。
舎監生はいろいろと寮の仕事をするかわりに、色々な特典があるらしい。
屋上のペントハウスとかね。
去年の舎監さんはどうやらヤバイ人だったらしく、賄賂取り放題でえこひいきし放題だったらしい。
ヒルダ先輩とかに色々と聞いた。
私たちはエステル先輩とゆりゆり先輩で良かったな。
そういう人がいると、私は馬鹿なんで考え無しに突っ込んで戦争になるからなあ。
もうちょっと気が短いのを直さねばいけないな。
さて、今日はお養父様お養母様が学園にくるな。
何時頃来るかな。
どっちにしろ放課後かな。
食べ終わった食器を返却口に持っていった。
さて、登校しようか。
みんなでぞろぞろと食堂を出た。
さあ、今週も頑張ろうではないか。




