第250話 喫茶店で地図を広げホルボス山の事を調べるのだ
シャルロットさんにお礼を言って美術館を出る。
やあ、おやつの時間だが、速く地図帳を見たい。
「マコト、お茶していかない?」
「ん”~~~~~~~~~~」
「お茶しましょう、そんな急いで帰って地図帳を見ても、すぐには探しにはいけないのだし」
私はため息をついた。
おのれカロル、私の思考を読むんじゃない。
「お茶をして、帰ろうか、で集会室でリボンを切ろう」
「地図帳を借りに行かないの?」
「帰り道に本屋で買う」
カロルがなるほどという顔でうなずき、私の手を引っ張って歩き出す。
「どこいくの? カロル」
「美味しいお茶とケーキのお店があるってアンヌが言ってたから、行きましょう」
「うん」
まあ、今日はカロルとデートだから、飛空艇を探すお仕事はほどほどにしておこう。
途中、本屋さんがあったので、大きめの地図帳を買った。
お値段は四千五百ドランク。
結構するね。
ヒューム川沿いに小洒落た建物があって、そこに子猫のゆりかごという喫茶店があった。
女児が好きそうなお店よのう。
私も女児なので、こういうお店は大好物です。
ヒューム川から気持ちのよい風が吹いてくるテラス席に通された。
「なにが美味しいのかな?」
「ケーキがふわふわで美味しいらしいわよ」
ここは乙女ゲーム世界なので、スイーツ類は完備されている。
メニューを見る。
季節のケーキセットにしようっと。
「季節のケーキセットをください」
「かしこまりました」
「私は栗のケーキセットをください」
「はい、おまちください」
ボーイさんもイケメンだな。
この世界では、女性がやるような職業も結構イケメンがやってる事が多い。
ウェイトレスさんとかはあまりいないのだな。
川風に髪をなびかせながら収納袋から地図帳を取り出した。
「もう無詠唱で取り出しできるのね」
「そんなに難しい呪文じゃないし」
「マコトの才能に嫉妬しちゃうわね」
さてさて、王都から東、ホルボス山、ホルボス山、あったっ!
馬車で一時間ぐらいの所だね。
「割と近いわね」
「あんまり遠いと王都に買い出しに出られないからでしょ。馬車で一時間ぐらいだったらばれて探されても結構大変だし」
カロルが地図帳をのぞき込むのでくるくるとした前髪が私の頬をくすぐる。
こしょばい。
さて、この海抜千クレイドほどの里山から、ビアンカさまの別邸跡地を探さねば。
山の中腹に村のマークがあるな。
たぶんこの近辺……。
あった、遺跡マーク……。
……。
「ダンジョンのマークも付いているじゃんっ!」
「東ホルボス山ダンジョンだわ、グレードはEだから初心者向けね」
「これはどういう事だろう、ビアンカさまが嫌がらせにダンジョンを掘ったのかな」
「い、いや、さすがにそこまではしないと思うわよ。何か魔法的に凄い物があると、ダンジョン化すると聞いたけど……」
「このダンジョンの中にあるのかな」
「飛空艇みたいな出物があったら記録に残るわよ。隠されているのね、たぶん。あと、学園の施設みたいに光魔法でのロックが掛かっているか」
「隠されて、ロックされてるね」
頼んだお茶とケーキがやってきた。
カロルの頼んだケーキはどう見てもモンブランだが、この世界にはモンブラン山がないので、ただの栗のケーキであるよ。
「欺瞞の魔法が掛かってると困るね、見破る手段が……」
あるな。
「コリンナも連れていくの」
「しょうがない」
「私は行くから、あと、剣術部から誰か連れて行く?」
剣術部はみんな行きたがるだろうなあ。
でも、そんなに連れていってもなあ。
斥候はダルシーとアンヌさんがいれば問題がないね。
「魔法のトラップがあったときの為にエルマーを連れていく?」
「そうだねえ、あー、カーチスは来るなあ」
「連れて行かなかったら怒るよねえ」
「前衛は、カーチスとあと一人だね。コイシちゃんか、カトレアさんか、エルザさんか」
まあ、いいや、石紙ハサミであと一人を決めてもらおう。
ちなみに石紙ハサミは西洋のじゃんけんだよ。
石はハサミに勝ち、羊皮紙は石を包んで勝ち、ハサミは羊皮紙を切って勝つというもの。
手のアサインもグーチョキパーで変わらない。
季節のケーキセットはイチゴのショートケーキであった。
春はイチゴ、これは前世でも今世でも変わらないね。
「あ、さすがに美味しい」
「良い出来のケーキね。お茶もおいしいわ」
アップルティかな、甘くて良い匂い。
ヒューム川を見ながらお茶をのみ、ケーキを食べるのは良いね。
この川をさかのぼるとヒルムガルド、命令さんの実家の領地で、マーラー家からの衣料品の関税を十五倍も付けている都市だ。
ちょうど、川を船が上流からおりてきた。
川が使えれば三日の距離なのになあ。
まったく、命令さんめ。
あーでも、甘い物を食べると落ち着く~~。
飛空艇探しにキリキリしすぎてたかな。
カロルを見ると、彼女は目を細めて笑った。
「ありがとう」
「どういたしまして」
んもう、本当に私の嫁は良く出来てるな。
大好きだよ。




