第246話 魔法塔の最上階レストランで昼食をとるのだぜ
サーヴィス先生に連れられて魔法塔の各所を見学させて貰っていたらお昼になった。
うん、どこの部も普通にオフィスであるよ。
実験室とかあるけど、まあ、学園の魔法実習室と変わらないね。
測定機器とかも一緒だし。
「魔法塔にお昼を食べられる所はありますか?」
「そうだね、おごってあげよう」
「悪いですよ」
「マコト、ニコニコ顔になるぐらいに、簡易ドライヤーの利益は高いのよ」
「そういうこと、光る布地の方もなにか製品化のアイデアがあったら持っておいで、なんでも刷ってあげるよ」
「光る衣服とか作れそうですね。背中にバーンと光る紋章が出るスーツとか」
「それだっ! 売れそうだっ!」
「光の魔法陣についても、特許おねがいします」
「そうだね、回路が複雑でここでしか刷れないと思うが、手書き出来る奴が出てこないとも限らないし、申請しておくよ」
あれ、魔法陣を布地に刷れるんだよね。
「暖かいシャツとか……」
カロルが私の口を押さえた。
サーヴィス先生の目がキラーンと光る。
「黙りなさい、そういうアイデアは後で出して」
「そ、そうだね、ごめんねカロル」
そっか、ここでアイデア出しすると、サーヴィス先生が先に特許取ってしまうね。
気を付けよう。
私たちはエレベーターに乗り、魔法塔の三十階まで上がった。
前世ではマンションでもある階層だけど、この世界では非常に珍しい。
ドアと枠が開いたのでエレベーターの外に出る。
この階は職員食堂とレストランになっているようだ。
サーヴィス先生は迷わずレストランの方に歩く。
「しょ、職員食堂でも良いですよ」
「だめだだめだ、魔法塔の職員食堂は、えらく不味い」
良いのか幹部職員がそんな事を言って。
「味音痴の研究員向けに適当に作っているからお客さんに出せるものじゃないよ」
そう言うとサーヴィス先生はさっさとレストランに入っていった。
まあ、いいや、おごりだし。
窓際の席に座った。
ふおおおおっ!
王都が一望出来るね、凄い凄い。
絶景だなあ。
カロルも身を乗り出して外を見ている。
「わあ、学校が見えるよ」
「本当だ、ちっさいね-」
「ここは王都でも壁に近いから。学園や王宮、大神殿などは王都の中心だからね」
サーヴィス先生がランチを3人前頼んだ。
雲上レストランだな、楽しい。
さて、料理が来るまで、暖かいシャツの事でも考えるか。
隣ではカロルがサーヴィス先生と錬金薬の流通の話をしているしね。
シャツの背中に魔法陣を描いて、全体的に暖めれば良いのだよ。
あ、でも魔石とかの交換が面倒くさいか。
だったら大きいけど薄いカイロとかどうだろうか。
それだったら魔石交換も楽だし、服にもしなくて良いな。
あれ、簡易ドライヤーを開いて使えば良いような気がする。
もっと低温のカイロにして、風があまり出ないようにするとか。
というか、開けばカイロ、丸めるとドライヤーとか。
おお、アイデア製品だ。
面白い面白い。
「マコト」
おっと、考え込んでいたら、もう料理が来たようだ。
「あ、はい。いただきます」
カロルが苦笑して私を見ていた。
「「女神に毎日の糧を感謝します」」
最初に来たのはスープだ。
まさかフルコースではあるまいね。
懸念していたらすぐ、メインのお肉とサラダとパンが来た。
スープを一口ふくむ。
コクリ。
あ、美味しいコンソメだ。
なかなか良い腕のコックさんだね。
あー、下界を見下ろしながら食事は良いなあ。
美味しい美味しい。
お肉は豚のロースト、サラダはシーザーサラダだね。
パンはライ麦パンだ、珍しい。
うん、香ばしい感じで美味しいね。
「飛空艇を探してるんだって?」
「そうなんですよ、ビアンカさまの飛空艇、錬金部さんで何か解りませんか?」
「魔法塔では、運輸局以外情報は無さそうだよ、ビアンカさまは錬金についてはヒールポーションを作られたとしか伝わってないね」
そうだよねえ。
ご飯を食べながら下界を見ていたら、王都中央広場に人だかりが見えた。
なんだあれ。
「今日は何か催し物でもやってるのかな」
「なにかしらね」
「ああ、ワイエスのゆで卵を配ってるらしい」
あ、私がやらせていた奴であった。
あんなに人だかりになってるのか。
見れば道化師の格好で何人かでゆで卵を配っているようだ。
うむ、ワイエス領のPRになって大変よろしいな。
「あとで行ってみよう」
「そうね、中央広場まで行けば学校まですぐだし」
「あ、その後、美術館行く?」
「そっか、行こうか」
うんうん、勇者の時代っていう美術展をやってるらしいからな。
ホウズとか、エッケザックスとか、リジンの格好いい絵を見よう。
そうしよう。
美味しいランチを食べ終わると、デザートにはアイスが出てきた。
高級レストランだねえ。
滑らかで甘くて美味しいバニラアイスでした。
甘々。
食事も終わったので、三人でエレベーターを待つ。
「今日は本当にありがとうございました。錬金印刷機、良いですね」
「そうだろう、また何かアイデアがあったら持って来なさい。印刷してあげるよ」
「はい、またお願いします」
私が頭を下げると同時にエレベーターが来た。
三人で乗り込む。
柵が閉まり、ドアが閉まった。
ウイイイイイイン。
結構速いエレベーターだな。
それでも高さが高さなので、大分時間が掛かって五階に着いた。
「それではまた明日に」
「はい、錬金の授業楽しみにしてます。また明日」
「また明日」
カロルと二人して頭を下げた。
ウイイイイイン。
エレベーターが一階に着いたので、降りる。
廊下を歩いて、塔の外に出る。
振り返り塔を見上げると最上階の方は薄く雲がかかってかすんでいた。
わあ、あんな所で食事をしたんだなあ。
「高いねえ」
「高いね」
さて、中央広場に行って、デボラさんのお爺さん、ランディさんの顔を見るか。
ジェームズ翁の側近の爺さんたちは面白い人が多いから楽しみだな。
よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。
また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。




