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第245話 錬金印刷機を見に六階に行く

 一度錬金部の部屋を出て、廊下を歩いて階段を一階分上がった。


「この階がワンフロア、錬金印刷機の部屋になっている」


 ドアを開けて中に入ると、複雑な機械があった。

 かなり大きいな。


 というか、これは前世のグーテンベルク印刷機みたいだな。


 金属で出来た印刷板を置き粘度の高い錬金インクを付ける、その上から枠に付けた羊皮紙をかぶせて、大きな圧板の下に置く。

 魔導モーターで圧板を下に押してプレスする。

 あとは枠から剥がせば、簡易ドライヤーが一枚できあがりである。

 簡単だね。


「最初は錬金インクの適切な濃度が解らなくてね、大変だったよ」

「これで簡易ドライヤーと光る生地を作ったんですね」

「そうともさ、羊皮紙だけじゃなく布地にも印刷できるので、品質が同一な魔導具の生産が簡単になるわけだ」


 確かに、これは凄い道具だな。

 最近見かける新聞もこの系統の印刷機で作ってるのかな。

 だんだんとこの世界も近代になっていくのだろうなあ。

 

 この手の技術開発が進んで生産が盛んになると、どうなるかというと、市民層の力が大きくなるわけだね。

 大金持ちとか出てきて、貴族の地位がだんだんと下がっていくのだ。

 貴族の領地の中でも商業をしている所と、農業を基本にしている所とで貧富の差が出始める。

 やがて、小さい領の貴族が農業では立ちゆかなくなる。

 そんな時、頼りになるのは大商人からの貸し付けになるわけだが、お金を借りるということは、商人の地位が上がり、貴族の地位が下がる、ともいえよう。


 そのうち国の財政が立ちゆかなくなり、市民革命が起こって、王制は廃止されるのだろうなあ。

 あと、五十年もすると、フランス革命や明治維新が、この国でも起こるのだろう。

 ヤダヤダ。

 なるべく内乱とか革命とか起こらないようにソフトに行ってほしいね。


「光る布はどこにありますか」

「あそこに丸めておいたよ」


 印刷機開発室の端に白い布が丸めて棒みたいになって立てかけてあった。

 おー、これかあ。


 少しほどいて見る。

 魔力を流すと魔方陣のラインが薄紫に浮かび上がった。

 うわっ、細かい。

 これを一枚一枚手で書いてたら死んでたな。

 錬金印刷機万歳だ。


「ちょっとごめんね」


 カロルが布の端を持って少し魔力を流した。

 さああああっと光の粒が白い布の表面を流れた。

 綺麗だあ。


「いいね」

「いいね」


 ちゃんとリボンとして使えるように細く切れるよう点線が入ってる、これに合わせて切ればリボンが出来るわけだ。

 集会室で切ろうかな。


「ありがとうございましたサーヴィス先生」

「助かりましたよ」

「こちらこそ、ドライヤーも合わせて楽しい仕事だった、また何かあれば気軽に声をかけてくれよ」

「はいっ」


 サーヴィス先生は懐から古びた袋を出してきた。


「お?」

「ほしがっていたろ、収納袋」

「おーっ、良いんですかサーヴィス先生!」

「良いとも、簡易ドライヤーのお礼だ」

「ありがとうございます」


 私は古びた袋を受け取った。

 ちょうど給食袋というか、そんな感じの大きさだ。

 さっそく手を突っ込んでみる。

 おおおおお、深い、手が底につかないっ!

 すごいな。


「なんでも入るんですか?」

「だいたいトランク一個分ぐらいだ。オルブライトくんのはもっと入るだろ」

「はい、かなり入りますね」


 あのチェーン君を軽々収納してるのだから相当な大きさなんだろうな。


「使い方は、対象を手に持って『入れ』だよ。短い呪文だから慣れたら無詠唱でやれるよ」

「ほうほう」

「出すときは対象を思い浮かべながら『出ろ』だ」

「中に入れてる物を忘れた場合は」

「袋を逆さにして持って、『全部出ろ』だね。中にある物は全部外にでる」


 これは嬉しい。

 異世界チートの一角、収納袋を手に入れたどーっ。


「っと、これはどこに付ければいいのかな」

「スカートの中にわっかが付いてるだろう、そこに外紐を引っかければいい」

「あのわっかは収納袋用だったんですか」

「昔は収納袋が沢山あったようだね、その名残に今でもスカートにわっかが付いているんだよ」


 そうだったのか。

 ほえーほえー。

 前世のスカートには無い部品だったから、何だろうと思ってたよ。


 スカートをめくり上げて収納袋をぶら下げた。

 男性のズボンにも似たような物があるのか?

 あ、ベルトループに引っかければ良いのか。

 男性はラクチンだな。


『入れ』


 さっそく光る布の束に手を付けて、呪文を唱えた。

 ふっと消えたぞ。


『出ろ』


 元の位置に光布の束が現れる。

 これは面白い。


『入れ』


 入れたまま歩いてみる。

 うん、別に袋自体の重さは変わらないようだ。

 よきかなよきかな。


「他人が触っている物は入れられない。あと生物も入れられないよ」

「サーヴィス先生っ! 凄い物をありがとうございます」

「いいよいいよ、私が昔使っていたものだからたいした物では無いよ」


 というか、凄い物じゃん。

 沢山あると流通革命が起きそうな物だが、滅多に無い物だから革命が起きるほどじゃあないのだろう。

 飛空艇があっても国家に一台では物流には使えないみたいにさ。


 あー、良い物を貰った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] これ光魔法のジャンルじゃん!!
[一言] 昔沢山あって今は無いってのは世界から修正でも食らったのかな
[良い点] 高ァァァァァいッ 減税無効!! ドレスの関税15倍!!ケリー家ヒルムガルド領だ!!! 戦争禁止条約の中、ポッティンジャー派閥の次の手は経済封鎖。学生間なのにそこまでやるかあ…とそこまでや…
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