第244話 錬金部は魔法塔の五階にあるのだ
「お客さん、魔法塔に着いたよ」
はっ、と目を覚ますと、車掌さんが苦笑いをしてステップを出していた。
カロルも寝ていたようだ。
「着いたの?」
「そうみたい、カロルも寝てた」
「なんか、眠くなって」
私たちは立ちあがってステップを踏んで馬車をから降りた。
「ふわあああ」
「すごいねえ」
視界いっぱいに塔。
見上げると天頂まで塔。
どうやってこんな巨大建築を作ったのだ。
建築魔法って、もの凄い代物だなあ。
「カロルは魔法塔初めて?」
「うん、錬金薬剤は納品してるけど、領の営業部がやってるから」
社長さまは個々の取引には顔を出さないのね。
「一度挨拶に来なきゃと思ってたから渡りに船だったわ」
「そりゃ良かった」
魔法塔の入り口に近づく。
出入り口の前に警備室があるね。
居るのは魔法騎士であるね。
さすがは魔法省だ。
「お嬢さんがた、魔法省に何か用かね?」
「錬金部のサーヴィス先生に呼ばれまして」
警備の騎士は帳面を調べた。
「あ、聖女候補さまと、オルブライトさまですね、聞いております」
急に対応が丁寧になったね。
お役人っぽいことだ。
「錬金部は五階になります、突き当たりにあるエレベーターをお使い下さい」
「「ありがとうございます」」
二人で声を揃えると、魔法騎士さんはにっこり笑った。
奥の方へ歩いて、エレベーターのボタンを押すと扉が開く。
昔の映画みたいな柵になってるタイプのエレベーターだね。
格好いい。
カロルがレバーを五階に倒すとエレベーターは上がり始めた。
柵だけだから壁が見えて、なんだかコワイね。
引き込まれそうだ。
ガチャン、ブシュウ。
五階につくと戸がまず開き、その後に柵が開いた。
廊下があって、ドアがある。
なんだか前世のオフィスを思わせる作りだね。
「こんにちわー」
と、言ってドアを開くと、沢山の人がいて、みんな簡易式ドライヤー手に持ってブウブウ言わせていた。
な、なんぞ?
「あ、キンボールくん、オルブライトくん、いらっしゃい」
奥からサーヴィス先生が立ち上がってこっちにやってきた。
手には簡易式ドライヤーを持ってブウブウ言わせている。
「何してるんですか?」
「今朝簡易式ドライヤーが刷り上がったので、みんなでテストさ」
ザ・研究員という感じの白衣のおじさんが立ち上がった。
「これを考えたのは君たちかい、これは良いね、凄い物だよ」
「王都におしゃれ革命が起きるよ、これは売れる」
「ありがとうございます」
そうだな、簡単だし庶民にも買えそうだし、売れるかも。
「これが特許状だよ。で、物は相談だが、この簡易式は魔法省で売り出したいのだけど」
「おいくらくらいですか」
カロルが一歩前に出た。
「そうだね、みんなどれくらいなら買うかい?」
「一万ドランク以内か」
「二万だせるな」
「そんな所だな、魔石代も要るし、火の魔石と風の魔石の相場が上がりそうだ。投資してみるかな」
この世界にはインサイダー禁止の法律は無いのか。
「で、私たちの取り分はどれくらいですか?」
「そうだね、二十パーセントでどうだい?」
「話になりませんね、お断りします」
おお、カロルが強気だ。
「さすがはオルブライトくん、では三十で」
「七十です、一歩も引きませんよ」
「七十は無理だ、四十で」
ああ、これは折半でおわるな。
五十パーセントだ。
「折半で良いです、その代わりに、あるキットを三千ドランクぐらいで出してくれませんか?」
「ちょっと、マコト」
カロルが口をとがらせるが、知らぬ。
商売には興味が無いんじゃ。
「キット?」
「魔法陣と羊皮紙と魔石と魔導インクを組み合わせたキットで、簡易型を自作できる解説書を付けた物です」
「ほうっ、それは面白いね、そうすれば、貧民の人も買えるし、魔法陣の教育効果もでるね」
「他人が勝手に作って、勝手に売られてしまうわよ」
「大規模に製造されたら、この特許状で捕まえれば良いよ。ちょっと作って、内職にする分はお目こぼしで。王都には内職が少ないから、これぐらいは良いでしょ」
「高いのが売れなくなる~」
カロルが不満そうだが、キットを買って教本を読めば作れるので、千ドランクから二千ドランクで贋作は落ち着くだろう。
そして、魔法陣を書いて魔導具を作れるようになれば、図書館で魔法陣を調べて、色々な効果のある魔導具の簡易版が作られるだろう。
水の魔導具とか、お風呂の魔導具とか高いんだよね。
「面白いね、魔導具制作の人口が増えるよ」
メガネの白衣さんが同意した。
「ライトのキットとか、クーラーのキットとか売れそうだね」
「だが、ちゃんとした作りの魔導具が売れなくなるぞ」
「良いんだよ、今、魔導具は高すぎると思ってるんだ、大衆にもっと魔導具を身近に感じて貰う方が利益が出ると思うね」
サーヴィス先生が大きくうなずいた。
「自分の利益よりも、大衆の幸せか、さすがは聖女候補だね」
私らの回りで騒いでいた研究員たちが居住まいを正した。
「聖女候補さまでしたか」
「これはご尊顔を拝したてまつり、光栄の極みです」
「ああ、楽にしてください、学生ですし、聖女候補ですから、まだ聖女じゃありません」
研究員さんたちは、ほっとした感じに肩の力を抜いた。
「さあ、まずは錬金部自慢の錬金印刷機を見せようではないか」
「「はいっ」」
最新魔導技術の錬金印刷機だ。
ワクワクするなあ。
どんなのだろう。
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