第242話 実家でお養父様に飛空艇の情報を聞く
「ところでお養父様にお聞きしたいことがあるのですが」
「ほう、何かね、歴史の宿題かなにかかい?」
まあ、宿題といえば宿題だよね。
二百年ほど前の聖女さまが出してるけど。
「これのありかを探しているのですが」
私は蒼穹の覇者号のマニュアルをお養父様に差し出した。
「こ、これはっ! ビアンカ様の飛空艇のマニュアルではないか、どこでこれを!?」
「学園の図書館の地下、未整理図書の中にありました」
「なんだって、ほ、他の本とかはなかったかね」
「ビアンカ様の邸宅の本を適当に押し込んだみたいで、色々な本がありましたよ」
「な、なんと……。失われた王宮図書館の本はそんなところに……」
失われていたのかいっ!
お役所仕事で、本をどこに移動したか追跡不能になった感じだな、これは。
「こうしてはおれんっ、今すぐ学園にっ」
「と、図書館は、閉まってますよ、お養父様。五時までです」
お養父様はしょんぼりして座り込んでしまった。
「明日、明日、マコトと一緒に学園に行く!」
「日曜日は閉館日です」
「ぐぐううっ、私に月曜日まで待てというのかいっ、失われた稀覯本を発見するチャンスだというのにっ」
「げ、月曜日に歴史資料館の人たちを引き連れて来て下さい。整理されてないから学園側も喜ぶかと」
「そうか、そうだねっ! うん、学園長に挨拶に行かないと」
「あら、あなた、月曜日に学園にいらっしゃるの? 私も行きたいわ」
お養母様は何しにいらっしゃるのだ。
「マコトちゃんが学んでる学園を見たいわ。久しぶりに校舎の中も見たいし、あと集会室で派閥の皆様にご挨拶したいわ。お手製のクッキーとか喜んで貰えるかしら、地位の高いお嬢様が多いのでしょう?」
「大丈夫です、お養母様のクッキーは美味しいですし」
「まあ、マコトちゃんはお上手ね」
お養母様は優雅にほほほと笑った。
実はお養母様も魔法学園のOGなんだよね。
夏は、ときどき風の魔法で涼しくしてくれたものです。
お養父様は真面目な顔で蒼穹の覇者号のマニュアルを読んでいる。
「これは……、凄い飛空艇だね。なんだろうか、この速度は」
「やっぱり速いですか」
「一般の飛空艇の倍は出せるね。小型なのもあるが、特殊なエンジンのようだ」
「どこにあるとか、解りませんか」
「王家でもずいぶん手を尽くして探したようだ、記録に残っているよ」
「マリアさまの遠征の時ですか」
「そうだね、飛空艇で魔国へ飛び込み魔王城を急襲する作戦だったようだが、見つからなかったので陸路で行ったそうだ」
王家の歴史資料館にも資料が残っていたのか。
「ビアンカさまの別荘の位置とかは解りませんか?」
「ふーむ、見当も付かないね、彼女の資料は全て焼かれたか、散逸してしまっていてね。図書館の地下にあるとは盲点だった。これで、歴史の謎が色々解けるかもしれん」
もー、お養父様は歴史馬鹿だなあ。
私の回りには、オタクな人が多いな。
しかし、頼みの綱のお養父様が解らないとなるとこれは不味いぞ。
「そろそろお話は止めて、夕ご飯にしましょう、今日はマコトちゃんが好きな物を沢山作ったのよ」
「わあ、嬉しいです。お養母様大好きっ」
「うふふっ」
ダイニングに行くと、確かに私の好物ばかりが並んでいた。
わーい。
リンダさんとダルシーも席について、みんなで夕食である。
「いただきます」
「「「「女神に日々の粮を感謝します」」」」
よし、実家では拝まれないですんだ。
最近みんな食事の挨拶の時、面白がって私を拝むので困ってる。
私は女神さま直通回線じゃないんだからな。
ぱくぱく。
あー、お養母様のお料理大好き。
おいしいおいしい。
やっぱり実家はいいね。
お養母様の料理を堪能して、いまいましいリンダさんを送りだして家族水入らずである。
ダルシーもどこかに消えた。
「さっそくマコトちゃんの入浴剤を試してみましょう。おかあさん楽しみよ」
お養母様がいそいそと入浴剤を持って浴室へ消えていった。
気に入ってくれるかな。
私は自分の部屋に入ってベットに寝転ぶ。
うーん、女子寮のベットが自分のベット感があるなあ。
でも一人の部屋でベットでうだうだしているのは落ち着く。
飛空艇のマニュアルでも読もう。
へえ、凄いなあ、本当に空飛ぶ船なのね。
おトイレもキッチンも付いてるから無人島でも生活できそう。
ふわー、いいなあ、いいなあ。
なんだか、前世の男子大学生が車雑誌を見ているようであるな。
やつらはこんな気持ちだったのだなあ。
馬鹿にしてすまん。
気持ちがわかるわ。
こりゃ楽しい。
「マコトちゃん、お風呂上がったわよ、すごいわね、お肌が信じられないぐらいつやつやになったわ」
「わあ、お養母様、綺麗」
「もう、マコトちゃんたら、褒め上手ね」
お養母様は、すんごくつやつやになっていた。
もともと美人さんだったのだけど、美しさが何段か上がっておるね。
「お風呂いただきまーす」
「はい、ゆっくり暖まりなさいね」
お養母様のお言葉に送られて、脱衣所で全裸になって、お風呂場に入る。
実家のお風呂は小さいけど、たまには良いよね。
はあ、聖女の湯は効くなあ。
しみじみ。




