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第238話 王宮職員食堂で素晴らしいランチを食べる

 通用門から王城の中へと入っていく。

 こっち側から入るお城の中は地味だけど、生活感があって表側よりも好きかもしれない。

 正面玄関から入ると絵画とか彫刻とかでケバケバしいしね。


 飾り気の無い廊下を掃除婦さんやメイドさんが右往左往しているな。

 王宮も沢山の裏方の人で支えられているのだなあ。

 学園の制服を着た一群は、なんだかじろじろ見られるね。


「さあ、ここだよ」


 ケビン王子が、私たちを連れてきたのは大厨房の隣にある大きなホールであった。

 お昼の時間なので、沢山の王宮スタッフが食事をしていた。

 みんなでカウンターに並ぶと目立つね。


「これはケビン王子、ロイド王子、いらっしゃいませ」

「マリー、今日は無理を言ってごめんね」

「とんでもございません、ご学友とお越しいただいて、恐悦至極でございます」


 カウンターの端にいる威厳がある初老の女性にケビン王子が声を掛けると、彼女は深々と頭を下げた。


「王宮の総メイド長だ、裏方の長のような存在だ」

「おお、それはそれは」


 裏方の人に嫌われたら困るね。

 ちゃんとしておかないと。


 カウンターの上に、今日の定食が二つ並んでいた。

 お肉のA定食と、お魚のB定食のようだ。

 料金は共に六百ドランクだ。

 どっちも美味しそうだな。


 ケビン王子とロイド王子、ジェラルドが料理を頼むと、マリー総メイド長がそれぞれにトレイを渡した。

 歩きながらトレイに料理を乗せていく感じらしい。

 女子寮食堂とあまり変わらないな。


「B定食を一つ下さい」

「はい、ではこれを」


 緊張しながらマリーさんに注文するとお金と交換にトレイを渡してくれた。

 おお、底板に大きくBって書いてある。

 これは間違えにくいね。

 いい工夫だなあ。


 カウンターを滑らせながらお料理をのせていく。


 メインメニューは大きな鱒のフライ。

 目の前で揚げていて、ジュウジュウいってるぞ。


 スープは、卵とハムのスープ。

 副菜はほうれん草のソテー。

 サーモンのカップサラダ。

 パンはふかふかの白パン。

 デザートにプリンが付いている。


 さすがは王宮、職員食堂でも、この豪華さであるね。

 お茶をカップについで貰って一セットできあがりだね。

 うわあ、良い匂いがするね。


 ケビン王子たちが窓際の大きいテーブルについたので、隣に座る。

 皆が席に付くまで待つ。

 カロルが隣に座った。

 おお、肉定食のお肉が分厚いな。

 何の肉だろう。


「牛肉だ」

「あ、ありがとう」


 ジェラルドめは時々私の心を読むな。

 さすがの政治力だ。


「いえ、マコトは表情読みやすいのよ」

「な、なによ、聞いてないでしょ」


 カロルも心を読みやがるから困るよね。

 なにゆえ超能力者がこんなにも多いのか。


 皆が席に付いた、なにか期待されているようだ。


「い、いただきます」

「「「「「「「「女神様に日々の糧を感謝します」」」」」」」」


 やめろう、王宮で拝むな。


 さて、食べよう食べよう。

 すごいな、ナイフやフォークにも王宮のマークが付いてる。

 鉄製だけど小洒落ているな。


 鱒のフライを食べる。

 はふはふっ、まだ熱い、さすがは目の前で揚げてくれるだけはあるね。

 ああ、良い鱒を良い腕で揚げてるなあ。

 これは美味しい。

 シェフの腕はイルダさん並だね。

 学園の上級貴族レストランより腕が立つな。

 その上に安いときている。

 夢のような場所だなあ。


「美味しいね、カロル」

「ほんとうに凄いわね」


 カロルのお皿に鱒のフライを切ってのせた。

 彼女はニッコリ笑って、お肉を切って私のお皿にのせてくれる。

 以心伝心で良いね。

 ふおっ、なんぞこの肉の美味しさ。

 王宮で働くと三食こんな物を食べられるのか。

 福利厚生がすごいな。


 パンを一口噛んでみる。

 おお、名月堂のパンだなあ。

 美味しいなあ。

 さすがは王家の御用達だよ。


 女子寮のパンも、クララが頑張ってるからこれくらいは美味しいのだけど、薄皮二枚ぐらい、本店のパンが美味しいね。

 熟練の技はなかなか越せないのだなあ。


 卵とハムが入ったコンソメスープも美味しい。

 そして、透明度が違うなあ。

 凄い事だ。

 飲む芸術品みたいなスープだねえ。


 いやいや、六百ドランクの料理じゃないぞ。

 細部にも神経が行き届いた超一流レストランの仕事だ。


 美味い美味い。

 パクパク。


「職員食堂は初めてだけど、意外に美味しいね」

「ははは、王子が来るという事で厨房が張り切ってますよ。普段はここまでにはなりません」

「そうなんだ、でも、何時もの味だなあ」


 ロイド王子がパンを口に運びながらそう言った。


「厨房の中に総料理長がいましたよ。ですのでいつもの晩餐に出される料理と水準が同じです」


 ジェラルドの奴は意外に食通だな。

 まあ、外交の食事の席にも将来は付かねばならないので当然か。


「キンボールさん、お味はどうかな」


 ケビン王子がふんわりと笑いながら問いかけてきた。


「美味しいですね、さすがは王宮です」

「そうか、それは何よりだね。また時々来ようね」


 甘甘の声でケビン王子はそう言った。

 私はパンをもぐもぐ噛みながら、これは職員食堂の負担が大きいから、ほどほどにしとかないといけないな、と、元女子寮食堂関係者として思ったが、王子には黙っていた。


 まあ、季節に一回ぐらいだなあ。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] タイトルが署員食堂に [一言] 身分制度がある世界だと職員向け食堂でも場所によっては豪華になるか 同等の代物が出てくる学園凄い 日本でも宮内庁とかはちょっと良かったりするのだろうか …
[良い点] 作者さん、更新はお疲れ様です! 解錠できないとは、超有能な諜報メイドのダルシーさんとしては意外の弱点ですw 飛行船の本体だけをあげないとは、ビアンカ様は回りくどい試験を与えてくれますねw …
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