第235話 三人で地下通路を行くのだ
隧道の中は照明が灯って明るく歩きやすい。
かなり大きな隧道だね。高さも結構ある。
微風が吹いているからどこかで外に繋がっているっぽい。
隧道の片方はすぐそこで壁になっていて、行き止まりっぽい。
もう片方は廃教会の方向へずっと伸びている。
「さあ、行こう」
「そうだな」
「そうね」
三人で隧道を行く。
コツコツと足音が響く。
すこし空気はヒンヤリしているね。
しばらく歩くと重厚な壁で隧道が塞がれていて、両開きの扉がついていた。
光魔法のマークが大きく彫られている。
扉には工具で穿ったような跡があるな。
「アダマンタイトね、これ……」
なんで、地下トンネルの扉にそんな高価な金属を……。
まあ、そのせいで開かずに今まで残ってたんだろうけどね。
真ん中にあるプレートに光魔法を流し込む。
ガッチョン。
機械音がして、両開きのドアが開いた。
中は暗いな。
『ライト』
ライトを燭台風の金具に打つとボボボと灯りが奥までついた。
同じような隧道がまっすぐ続いている。
「ここから先は、二百年前から人が入って無いのね、どんな財宝が眠ってるのかしら」
「眠ってればいいのだけれど」
「これは、格納庫に続く通路なのではないか?」
プールの横から地下隧道で格納庫へかあ。
ありそうね。
廃教会の出入り口はあまり広く無いし、あそこまで歩いて格納庫に行くのは大変そうだ。
邸宅から隧道があれば楽に飛空艇に乗り込めそうだし。
コツコツと音を立てて隧道を行く。
どこまでもまっすぐだなあ。
おろ、横の壁にドアが出てきた。
取っ手を握ると、鍵は掛かってない。
ガチャリ。
中は六畳間ぐらいの広さの窓の無い部屋だ。
ロッカーが並んでいる。
更衣室みたいな。
ロッカーを開けると、もこもこの服が入っていた。
「なんだ、これは?」
「航空服ね、高い所を飛ぶときに着るやつよ。保存状態も良いわね、新品みたい」
体に当ててみると私のサイズにぴったりだな。
私用か……。
他のロッカーには大小の航空服が入っていた。
飛行待合室かね。
「メモがあるわ、ええと、『マコトと、コリンナと、カロリーヌと、ダルシー用 高空は寒いから遠出するときにはこれを着なさい。ビアンカ』だって」
「私用もあるのか、やったー」
「私用がないわ」
そりゃ、マルゴットさんは部外者だしな。
というか、回りの物からくれるんじゃなくってさ、本体くれよっ!
待合室には他には特にめぼしい物がなかった。
チャリンと音がしたので床を見ると、鍵が落ちてた。
航空服から落ちたっぽい。
この部屋の鍵かな。
とりあえず、出て、鍵を確かめる。
ガチャリ。
うん、この部屋の鍵だ。
さて、先に進もう。
しばらく行くと、行き止まりになっていて、また両開きの扉があった。
光魔力を流し込むと、ガチョリと音がして、扉が開いた。
奥には格納庫があった。
「格納庫への連絡通路」
「連絡通路」
「たいした物はなかったわね」
がっくり。
知ってたけど。
「女子寮から格納庫まで直通で行けるのは良いな、雨に降られなくてすむし」
「まあね、廃教会まで行くの手間だしね」
マルゴットさんが思案顔になった。
「あんたたちの話を聞くと、ビアンカさまって予知できるのよね」
「うっ、まあその、あまり言いふらさないでね」
「ビアンカさまは不人気だから別に言わないわよ。それより予知できるなら、この通路、意味があるわよ」
「意味?」
「生徒を人知れず避難させるのに最適だわ」
「「あっ」」
たしかに、地下から生徒を逃がすのに最適だ。
なにかに包囲されて女子寮が攻撃されるのかなあ。
いやだなあ。
ジュリエット嬢がリッチになるルートは塞いだから、ゾンビの群れはなさそう。
ポッティンジャー派は聖女派閥に遺恨はあるけど、学園全体を敵に回す事は無かろうだから除外していい。
あとは何だろう、女子寮とか学園が包囲される事態って。
「いいわ、とりあえず、私が知っていれば諜報メイドつながりの子には伝わるし、なにかあったら逃走経路があるのは安心ね」
「わたしがいないと開かないけどね」
「それでもよ。マコトは困ってる人を見捨てるタイプじゃないし」
まあそうだがね。
さて、帰ろうか。
格納庫に通じる扉を閉める。
ガチャリ。
閉めると施錠されるようだ。
あれだね、ホテル形式だ。
結構長い隧道をポコポコと歩く。
「格納庫に通じる直通通路も貰ったし、航空服も貰った」
「あとは飛空艇を見つけるだけだな」
「見つかったら乗せてね~、王都上空一周とか楽しそうだわ」
「いいよん、まあ、初飛行はマーラー領までだろうけど」
「どれくらい掛かるもんかね」
「二~三時間」
「「それだけ?」」
前世のジャンボジェット並の速度なめんなよぉ。
飛空艇なら、一日飛べば蓬莱にでも行けるぞ。
反対側に行けば、新大陸に行ける。
ネイティブ新大陸人と握手だ。
まあ、この世界、昔はたくさん飛空艇が飛び交っていたから、新大陸の方とも交流があるのだがね。
ああ、夏休みは飛空艇でみんなと一緒にバカンスに行きたいなあ。
南の島とか行って遊びたい。
だが、そんな夢の未来の為には、飛空艇を見つけねば!!




