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第228話 船籍簿を見せてもらった後、患者の家に向かう

 学園に帰り、午後の授業である。

 今日もエルマーと一緒に魔術実習室で実験の手伝いだね。


「こんにちわ、マコトくん」

「こんにちわー、ジョンおじさん」

「交通局から問い合わせに返事がきたのだがね……」

「どうしましたか?」


 ジョンおじさんは書類の写しをテーブルに出した。


「蒼穹の覇者号の船籍簿が出てきたので写してきたのだけれどね」

「わあ、ありましたか」


 ジョンおじさんが船舶主の欄を指さした。

 最初の船舶主は、当然のようにビアンカ・オーレアン。

 で、最後の船舶主は……。


 マコト・キンボールになっておる~~~~。

 なんで~~~。


「こ、これは有効なんですか?」

「廃船処理をしてないからね、現在でも有効だ。なので、蒼穹の覇者号の持ち主は君だ」

「ぜぜぜ、税金とかは?」

「飛空艇に掛かる税金は無いよ」


 あーよかった、二百年分の延滞税を払わねばならないかと思った。


 しかし、ビアンカさまめ~~。

 起動キーの子狐丸、マニュアル、格納庫、船籍簿と回りから固めていくのか。

 本体くれようっ!!


 船籍簿に情報は無いだろうか。

 修理履歴、修理工場は王都内か、航行記録は無いなあ。

 オーバーホールは三回ほどか。


 墜落履歴は無いようだね。


「ビアンカさまは未来視の持ち主と聞いたが、そのせいなのかね」

「ええ、たぶん。飛空艇をあげると連絡してきましたよ」

「そうか、そうすると、実在するのだろう。ふむ」

「個人で……、飛空艇……、持ち、……はすごい」

「本体見つけないと凄くないわよ」

「それも……、そうだね……」


 本体はどこにあるんだろうなあと、考えつつ実験であるよ。


 まあ、いつも通り順調に実験は終わり。

 最近は一度やったことのある実験だから私は新味がないのだけど、魔術馬鹿親子にとっては大事な実験らしい。

 二人の実験が終わったら、午後は入浴剤作って暮らそうかなあ。

 儲かりそうだな。


 六時限目が終わったので、エルマーと共にA組に帰る。


 アンソニー先生が来て、ホームルームである。

 そろそろ苦手科目が出てくる頃だろうから、授業に遅れないように苦手科目の復習は怠らないように、との事。


 私は今生はパラメーター的な物が良いので、苦手科目はないね。

 前世で苦手だった理数系も、こっちの世界に来てみれば発展が遅れているので覚えるのはどうということはない。

 文系は目新しいけど、こっちは前世でも得意科目だしね。

 うしし、聖女候補に死角なし。


 中間試験は新入生歓迎ダンスパーティの後だから、そろそろ勉強会の企画もしないとね。

 派閥から落第生は出したくないし。

 お勉強が苦手そうなのは、お洒落組だなあ。

 剣術組は馬鹿そうなのだけど、A組にいる所でも解るように意外と頭が良い。


 カロルとコリンナちゃんと私で、勉強の計画を立てるか。

 なるべく来年はA組に来て欲しいしね。


 などと考えていたらホームルームは終わった。


 ふいー、やれやれ放課後だ~~。


 と、思ったら、学園長とバッテン先生がやってきた。


「このたびは、治療の申し込みを受けてくれてありがとう、キンボール君」

「かまいませんよ、戦争で受けた傷を癒やすのも聖女候補の勤めですから」

「キンボールはやさしいな」


 もう、やめてよバッテン先生。

 にやけちゃう。


「バッテンくんの膝も治ったのかね」

「はい、学園長と同じ呪矢でした」

「ふむ、次の戦争の時は聖女さまがいれば呪矢使いは防げるか」

「学園長、聖女は戦争に出たりしませんよ」

「あ、う、うむ、そうだな。教会は中立か」

「条約でそうなってますので、ごめんなさいね」

「いや、戦後にいやして貰えるだけでも相当違うからね、ありがたいことだ」


 椅子から立つと、カロルが不安げな顔でこちらを見ていた。


「マコトいってらっしゃい、危ない事しちゃだめよ」

「しないしない、治療治療」

「時々、とんでもない鉄火場に巻き込まれるから、マコトは心配だわ」

「ありがとう、カロル、行ってくる」


 小さく手をふるカロルに見送られて、私は学園長についていく。


 階段を降りて、一階の馬車溜まりに行く。

 そこには重厚な馬車が私たちを待っていた。

 あれ、この紋章は?


「マコト、良く来てくれた」


 エッケザックスを背負ったカトレアさんがそこにいた。


「患者さんはカトレアさんの家の人?」

「おじいちゃまだ」


 ふえー、ピッカリン家のおじいちゃんか。

 ポッティンジャー公爵派閥の武家の重鎮だね。

 たたき切られたりしないかな。


「そうだ、君に見て貰いたいのは、ピッカリン家の先代当主アドルフ・ピッカリンだ」

「そうですか、かまいませんよ」

「い、良いのかい、敵対派閥の重鎮だよ」

「お国の為に怪我をしたんでしょう、派閥闘争とかはひとまず脇に置いておきますよ」

「ありがたい、それでこそ、キンボールくんだ」


 なんだか、すっかり学園長にも一目おかれているなあ。

 まあ、悪い事ではない、敵対派閥の重鎮と仲良くなっておけば、無体な攻撃は防げるだろうしね。

 派閥闘争というのは、とても地道な所から始まるのだ。


 私はカトレアさんと共にピッカリン家のゴツい馬車に乗り込んだ。


「カトレアさんは、実家に帰っていいものなの?」

「派閥の裏切り者にはなったが、おじいちゃまの顔は見たいのだ、無理を言って混ぜてもらった」

「そうかー、良いところあるね」

「う、うるさいぞ、マコト」


 私たちのじゃれ合いを孫娘をみるような目で学園長は見ていた。

 まあ、彼はホモだから、孫いないしな。

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― 新着の感想 ―
[一言] まあ仮に税金掛かってても数年ヒールポーション令嬢やってれば払いきれそうだけど ジェームズ翁世代の人とは会話さえすればマコトは仲良くなれそうではあるよね 今回は出会い頭の一撃とかあるかもしれ…
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