第227話 ツバメ食堂で聖女候補はカツ丼を食べるのだぜ
ツバメ食堂が空いていたので、聖女派閥と国王派閥の全員が席に座れた。
外観は小汚いが店内はしっかり清掃されていて居心地も悪く無いね。
「メニューは、カツ丼と牛丼?」
「は、はい、カツ丼は、豚のカツレツを醤油出汁で煮て、卵とからめた物です。牛丼は牛肉をタマネギと醤油で煮た物です。これらをライスにのせて食べます」
まあ、カマラさんが作ったなら、そうだよね。
「じゃあ、カツ丼をください」
「わ、私は、ギュードンを」
カロルは牛丼か。
紅ショウガはあったのかな。
コリンナちゃんはカツ丼だった。
「カツドーン、なにか力強い名前だな」
どっかの魔王みたいな事を言うね。
みな、思い思いにどんぶりを選んでいる。
牛丼の方がよそうだけなので、すぐ来た。
紅ショウガ的な物も付いてる。
フォークとスプーン、それとわかめの味噌汁付きだ。
「??」
カロルが戸惑っているな。
「ライスと一緒に上の物をすくって食べるといいよ」
「う、うん……。あっ」
口に合ったのかカロルは喜色を浮かべてぱくぱくと食べる。
うんうん。
「あ、これ美味いですよ、王子」
「そうかい、失敗したかな」
「それはカツドーンを食べてからにしましょう」
「うむ」
というか、ロイヤルファミリーに食べさせる料理ではない気がするが、喜んでるからいいか。
そうこうしている内に私のカツ丼が運ばれてきた。
コリンナちゃんのカツドーンもだ。
持って来たのはカマラさんなので、私のどんぶりにはお箸が付いていた。
ひゃあ、久しぶりだな。
この前中華料理を食べて以来だ。
……意外に久しぶりじゃなかった。
「卵焼き? あ、中にカツレツ、複雑な料理だな」
「美味しいからパクッと行きなさい」
「お、おう」
カロルがほっぺにご飯粒を付けてこっちを見ている。
かわええなあ。
教えてあげると、ちょっと赤くなって取って食べた。
ぱくり。
おおおっ、ちゃんとカツ、サクサク。
弟さん料理上手いねえ。
卵も半熟だし、タマネギも良く火が通ってる。
あー、ご飯と食べると美味しいっ。
「よく、その二本の棒で食べられるわね」
「特技だから、カロルも少し食べる?」
「うん、私のギュウドンも美味しいよ、たべて」
お互いのどんぶりの蓋に、ちょっとづつ分けて交換する。
わ、牛丼の良い匂い。
美味しい、良い味出してるなあ。
紅ショウガもちゃんとした物だ。
すげえ、どこから見つけてきたのか。
お味噌汁も良い感じだね。
わかめを今世で初めてたべたぞ。
「これは、美味しいな」
コリンナちゃんが小さい口でカツをもぐもぐやってるのが可愛い。
くっそ萌えますな。
「あ、これも良いわね、次はこっちを頼もうっと」
カロルも気に入ったようだ。
甘辛い味で、あまり洋食には無いんだよね。
みれば、聖女派閥、国王派閥にかかわらず、みな一所懸命食べてるな。
よきかなよきかな。
「うん、美味しい、ジェラルドも食べるか」
「一口戴きましょう、私のギュードンもどうぞ」
ケビン王子とジェラルドがイチャイチャしておる。
この二人は幼い頃から主従だから、仲が良いな。
カマラさんがニコニコしながら、お茶をつぎ足しに来た。
おお、大きい急須、そういえば、ほうじ茶も久しぶり。
「どうでした?」
「美味しかった。また来るよ」
「それは良かった、私も王子様たちのお食事を見れて眼福だったですよ。新追加スチルみたいで」
わかるー。
時々、ヒカソラにでてくるキャラを、かってに脳内スチルにするよねえ。
私はカロルが多いけど。
「人気のほどはどう? 美味しいからお客さんくるとは思うけど」
「滑り出しは上々ですね、夕方とか混みますよ。ランチは昨日からなんで、これからかな」
「そう、がんばってね、カマラさん」
「はい、がんばりますよっ」
あー、おなかいっぱい、お米はお腹にたまるから良いね。
レジでお会計をして外に出る。
美味しい物を食べると充実するなあ。
「六百五十ドランクか、パン食とそんなに変わらないな」
「割と安かったね、コリンナちゃん」
前世だと八百円ぐらいしそうなカツ丼だったな。
牛丼はちょっと高めかな。
でも、チェーン店の牛丼じゃないからなあ。
「おいしかったな、また来ようぜ、マコト」
カーチス兄ちゃんが寄って来て言った。
「うむ、次は牛丼を食べるよ」
「俺もギュードンだな」
「僕は……、カツドーンだ、カーチスのを……、分けてもらったが……、美味かった……」
エルマーも恵比寿顔である。
みんなでぶらぶらと、下町を歩く。
爵位が高いジュリエットさんとか、エルザさんとかは下町は初めてみたいで、小間物屋さんとかに引っかかってるな。
物珍しいのだろう。
はあ、毎日楽しいね。
これで飛空艇さえ、あっさり見つかれば良いのだが。
どこにあるのかなあ。
しかも今日は探索できなくて、軍人さんの治療に放課後が潰れちゃうね。
早めに治して帰ろうっと。
青い空の下、花の王都を聖女派閥と国王派閥はぶらぶらと学園に帰るのであるよ。
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