第225話 金的令嬢は不動産関係でちょっと思いつく
晩餐も諜報連絡会も終わったので食堂を後にする。
「まー、悩んでいても捜し物は見つからねーぞ」
「そうだけどなあ」
コリンナちゃんと一緒に階段を上り205号室に入る。
壁の魔法灯のスイッチに触り灯をともす。
明るくなると我が部屋って感じよねえ。
チェストを開き寝間着を出して着替える。
制服はダルシーが出てきて持って行った。
洗濯したての制服はチェストの一番上に入っている。
いたれりつくせりであるな。
寝間着でベットに潜り込み、ライトで灯りをともし、蒼穹の覇者号のマニュアルを見る。
この、魔導頭脳の起動ってなんだろ?
コンピューター的な物か? 解らないな。
マニュアルを読んでいたらいつの間にか眠っていた。
すやあ。
◇◇◇◇◇◇◇
メイドさんの準備する音で目を覚ましたよ。
いつも通りだね。
カーテンから顔を出すと、カリーナさんとマルゴットさんが着換えをしていた。
「おはよう、カリーナさん、マルゴットさん」
「おはよう、マコト」
「おっはよぉ~、ふわあ、お嬢様が帰ってきて忙しくなって困るわ~」
「それが、普通だよ、マルゴット、さあ、いくよ」
何時も元気なカリーナさんが、寝ぼけ眼のマルゴットさんを押すようにして、出勤していった。
ふわあとあくびをしてからハシゴを降りて、洗面所で洗顔などをする。
用をたして部屋に帰ると、ダルシーがお茶を用意してくれている。
今日は良く晴れて良い天気になりそうね。
コリンナちゃんと向かい合ってお茶を飲む。
「今日もマコトは飛空艇さがしか?」
「基本的にそうだねえ」
「王家は秘蔵してないか?」
「光魔法でしか飛ばないから秘蔵してないだろうなあ。それに王宮にあったならマリアさまの時代に出したでしょ」
「それもそうか、二百年前に行方不明になった飛空艇か、雲を掴むような話だな」
「まったくだね」
お茶を飲み干して席を立つ。
ダルシーが現れてカップを片付けてくれた。
三人で外にでて部屋を施錠する。
階段を降りていく。
外を見ると良い天気でぴかぴかだな。
エレベーターホールに行くと、みんなもう来ていて、口々に挨拶をする。
だんだんと日常になっていき、何時もの光景になっていくね。
なかよしが増えるのは良い事だ。
食堂に入り、カウンターに並ぶ。
クララが笑って挨拶をしてくる。
「昨日は普通のお風呂だったわ、金的令嬢風呂は毎日やらないの?」
「しません、今のところ、月曜と水曜よ」
「そっか、残念だなあ」
メリサさんに塩ポリッジを頼んで受け取る。
今日の副食はハムエッグだね。
おいしそう。
みんなで席に付き、食事のご挨拶である。
「いただきます」
「「「「「女神様に日々の粮を感謝します」」」」」
もういい、拝まれるのは慣れないが、しょうが無いと思うことにしたよ。
パクリ。
ああ、塩ポリッジ美味しい。
ハムも美味しいね。
うまうま。
「マコトは今日も飛空艇探し?」
「そう、だけど、調べるところが無くなってきたよ」
カロルは人差し指を頬に当てて考えこんだ。
「そうねえ、邸宅の格納庫にないんだから、別荘かどこかの格納庫かしらね」
「別荘か……、あ、そうか」
おっと、ビアンカさまが、表向き処刑されたってのは秘密だ、言いそうになったよ。
あれだけ便利な飛空艇なんだ、隠居する場所に持って行ったんだよ。
そこの格納庫にあるね。
で、その別邸はどこにあるのだろう。
不動産登記の書類って二百年にわたって保存されてるものかね?
「コリンナちゃん、不動産登記の役所って、どこ?」
「ん? 法務局だろう」
こっちの世界でもそういうのがあるのか。
登記簿とか作るのか?
「二百年前の土地建物登記とかの書類は残ってるかな?」
「登記系の書類は結構残るけど、二百年はキツいかなあ」
そうだろうなあ。
この世界は、羊皮紙が記録媒体だからねえ、巨大サーバーに情報が残る事は無いのだな。
とりあえず、どこかに残ってるかもしれないから法務局に問い合わせるのも手だね。
「なにか、思いついた?」
「ありがとう、カロル、思いついたよ」
「そう、なら良かった」
みなでの食事が終わって、聖女派閥登校だ~、という感じに食堂を後にする。
で、校舎の出入り口に来たら、人だかりがしておる。
「私が手配しておきました」
「ヒルダさん、何を?」
壁を見ると壁新聞が張ってある。
しかも、新貴族速報である。
なんだよ、デマ新聞がなにを報道してんだ。
『豚足令嬢、聖女派閥に喧嘩を売る。なんとドレスに十五倍の関税!!』
わあ。
「口は悪いですが事実ですので」
「さいですか」
そうか、新貴族速報を作ったのはヒルダさんだったね。
マスコミに命令さんを攻撃させるか。
まあ、別に間違いじゃないからね。
記事を読んでみると、面白おかしく命令さんとデボラさんを馬鹿にした感じで事の顛末がくわしく書いてあった。
「衣料品に十五倍の関税とは、ホルスト家にどんな無茶苦茶を言うとこうなるのだ? キンボール」
ジェラルドが問いかけてきおった。
記事よめよ。
「ケリーさんはいろいろ伯爵家として命令してきてね、それを断ったら根にもたれた」
「ふむ、経済封鎖か、根回しがワイエス家のやり方だな。意外に上手い手だ」
「感心すんな、国王派は動いてくれないよね」
「その通り、関税は領主の権利だからな、くちばしは突っ込めない。どうするつもりだ?」
「ちょっと考えてる事があるけど、駄目だったら新入生歓迎ダンスパーティは古いドレスで出るよ。二学期のダンスパーティは普通に揃えられるしね」
「ふむ、被害はそれほどでもないか」
「男性と違って、女性にとってドレスは大事なんです、それほどでもない被害ではないですよ、ジェラルドさま」
ジェラルドは意外な物を見るような目でコリンナちゃんを見た。
「そうか、ふむ、すまなかった、失言だ」
「い、いえ、こちらこそ言い過ぎました」
「確かに、あの人にドレスが届かないと想像すると、大変な被害か……」
なんだかジェラルドがぼそぼそとつぶやいた。
あの人って誰じゃい?
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