第224話 晩餐の後にカロルが飛空艇の装備に気がつく
食堂のカウンターに並んで今日の晩餐をトレイにのせる。
今日のメニューはと。
チキンカツに、キノコサラダ、コンソメスープ、それに黒パンだね。
美味しそう。
イルダさんのコンソメスープはそれだけでご馳走だからなあ。
お茶をコップにつぎ、いつものテーブルに持って行く。
カロルが左に、コリンナちゃんが右、エルザさんが前、その横にヒルダさん、その隣がジュリエットさんだな。
みんなが席についたら、いただきますだ。
「いただきます」
「「「「「女神さまに日々の粮を感謝します」」」」」
もう、私を拝むのはやめろー。
パクリ。
ふおっ、サクサクで暖かい。
チキンカツ美味しいなあ。
中濃ソースっぽいソースがかかってるね。
うまいうまい。
キノコサラダも食感が不思議で美味しい。
えのきだろうかね、これ?
ショキショキします。
「おいしいですわね~」
「ジュリちゃんは上級食食べれるのに」
「みんなで食べるから美味しいのですわ」
それはあるね。
「そうね、みんなで食べる経験ってあんまり無かったから、こんなに楽しいってしらなかったわ」
カロルが笑って言った。
まあ、貴族のお家は孤食が多いし、カロルはお父さんが飛び回ってるしね。
ヒルダさんと、エルザさんもうんうんとうなずいた。
「エルザさんのお家も一人でお食事でしたの?」
「はい、私は末っ子なので、あまり皆での食事はしませんでしたね。お父様、お母様はタウンハウスに行ってる事が多かったですし。女神祭とか建国祭にタウンハウスで家族みんなで食事するのが子供の頃の楽しみでしたわ」
貴族さんたちは大変だねえ。
「ヒルダさんは?」
「うちは父がろくでなしでしたので、一緒に食べるのが苦痛で、中等舎から学園に来てほっとしましたわ」
まあ、そうかもしれないね。
アップルトン魔法学園には中等舎と高等舎があって、知り合いの半分ぐらいは中等舎からの持ち上がりだ。
最初はエルマーの婚約者のプリシラ嬢が高等舎へ暴れ込んでくるかなと思ったが、彼女は領地の中等学校に行ってるようだ。
なにより。
ご飯を食べ終わったので、食器を返却口に返してお茶を飲む。
ダルシーが現れて、私とコリンナちゃんに暖かいお茶を出してくれた。
「用が済むとメイドが消えるのは良いですわね~~」
「お嬢様、わがままを言わないでください、あれはメイドの里卒業者の特権です」
ジュリエットさんのメイドのクレアさんがお茶を入れながらそう言った。
総合メイドさんでも出来ないのか。
「シャーリーはおおむね満足してるけど、メイドの舘出身だから、あれはできないのよね」
「もうしわけございません」
ふふーん、ヒルダさんにうらやましがられると嬉しいね。
アンヌさんも現れて、カロルにお茶をついで消えた。
「マコト、飛空艇のマニュアルを見せて」
「いいよーん」
カロルにマニュアルを渡した。
「もう、飛空艇お見つけになられましたの?」
「まだー、マニュアルと格納庫だけだよ、エルザさん」
「格納庫もありましたの」
「廃教会の地下にあったよ。飛空艇本体はどこにあるのかなあ」
ヒルダさんが顔をこちらに向けた。
「やっぱり大神殿ではないですか、あそこも歴史が古いですし」
「マリアさまの頃に探したけど無かったって、リンダさんが言ってたよ」
「かなり大きい物だから、隠せる場所は限られていますよね」
ぶほっと、カロルが吹き出した。
「なによ? カロル」
「大砲と機関砲付いてる」
「はあ?」
カロルが開いた武装操作のページを見た。
光魔法の大型ビーム砲一門が格納されていて、いざという時にがっちゃんと外に出るようだ。
あと、光魔法のビーム機関砲が船首にあって、ガガガガガと撃てる模様。
何と戦う気だったんだ、ビアンカさまっ!
「ほら、空を行くと、たまにワイバーンとか大鷲とかと行き会うから、黄金の暁号にもついているはずよ」
「あちらは魔導巻き上げ式バリスタでしたわよ。大砲とか機関砲とか凄いですわね。昔の飛空戦艦みたい」
カロルの言葉をヒルダさんがつないだ。
いーけどさあ、いーけどさあ。
エッケザックスとか、ビーム発射聖剣あるから今更驚かないけど。
私はこの重戦闘機で何と戦えばいいんや。
ポッティンジャー公爵領とか、ヒルムガルドを爆撃しまくるかー。
過剰武力だなあ。
あー、マリアさまに渡さなかったのはこのせいかー。
すぐ冒険終わっちゃうしなあ。
だが、マリアさまの逸話だと、自力の聖女ビーム魔法で、魔王様をぶっ飛ばしたそうだが。
私の代でなんかあるのかね?
こわいこわい。
「それでは失礼しま~す」
「おやすみなさいませ」
お洒落コンビが食べ終わって私たちに挨拶をして食堂を出て行った。
「それでは本日の諜報報告です」
「一週間ぶりだねえ、どうぞー」
「やはり、ケリー・ホルストの後ろにはデボラ・ワイエスがおります、関税封鎖の方法を祖父から教えてもらったようですね」
「おじいちゃんご存命なの?」
「はい、元気にしているようです」
ジェイムズ・ポッティンジャーの世代の人はどんどん死んでいるのにねえ。
元気だな。
「デボラ・ワイエスの祖父、ランディ・ワイエスは関税封鎖の工作でポッティンジャー公爵派閥に取り立てられた人物なので、作戦に隙はないですね」
「専門家かあ、やっかいな。迂回ルートも駄目よね」
「ありませんね、我がマーラー領の紡績製品は現在東の山越えルートで運んでおります」
ルートを変えれば時間は掛かるけど、王都には届くのね。
なかなか嫌らしい所を突いてくるねえ。
飛空艇が見つからない、もしくは見つけても修理が必要な場合は、今回の新入生歓迎ダンスパーティは新しいドレスは無理になる。
だけれども、今後は時間が掛かるのを折り込めば陸路で輸送は可能ね。
まあ、飛空艇で山を飛び越えちゃうのが一番早いんだけどさ。
最悪の場合は古いドレスに光るリボンで出るしかないか。
うーんうーん飛空艇はどこにあるのかなあ。
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