第219話 ジョンおじさんから船籍簿の事を聞く
さてと、私の学園生活の午後は、エルマーとジョンおじさんに実験される毎日であるな。
のろのろと魔術実験室に行こうとしたのだが、エルマーが一緒なので牛歩戦術もきかない。
そろそろー、実験はやめにして欲しいのだが、魔術馬鹿の人たちは無限に実験の種があるようで、離してくれないのであるな。
まあ、その分、魔術系の相談にも乗ってくれて助かってる面はあるんだけどさ。
とりあえず魔術実験室でジョンおじさんに挨拶である。
初手、問い合わせである。
「ビアンカ様の飛空艇について、魔術塔で何か解りませんか?」
「うん、どうしたのかね、ビアンカ様の飛空艇?」
「飛空艇……は、……交通局が……管轄……だ」
魔法塔に交通局とかあるのか。
「何してる部署なの?」
「今は飛空艇の管理が主だな、将来的には魔導具の信号で馬車の交通を制御したいと研究しているが」
おー、王都の馬車交通の制御かあ。
確かに行事とかあると渋滞が酷いからねえ。
「ビアンカさまの時代からあるの? 交通局は」
「そうだな、昔はもうすこし飛空艇が多かったから、もうすこし忙しかったと思うぞ、今では左遷先であるがな」
うは、閑職なのか。
それはそうだろうな、アップルトン王国で二隻しか飛空艇はないし。
そりゃ暇だわ。
「飛空艇には船籍簿があったはずだ、今日魔法塔に行ったら聞いてみてあげよう」
「おお、それを見れば色々解りますか?」
「そうだね、メンテナンスの時には船籍簿を出さないといけないから色々解るかも。あと廃船時にも出すから、もしもビアンカ様の飛空艇が廃船されていたら、解るね」
「廃船されて無い時は?」
「それも解る。ビアンカ様の刑死後、誰かが手に入れただろうから、おおまかな流れは掴めるだろうよ」
意外な所から情報が掴めそうだなあ。
船籍簿が存在してるとは思わなかった。
これは明日が楽しみ。
で、今日も、エルマーとジョンおじさんに色々と実験をさせられた。
ぐぬぬ。
午後の授業が終わったので、ジョンおじさんに別れを告げて、エルマーと共にA組に帰る。
「船は……、あるの?……、本当に……」
「ビアンカさまが言ってきたんだよ、だから現存してるとは思うけど、どんな状態かはわからないなあ。下手をすると修理が必要で、ダンスパーティまでには間に合わないかもしれないしなあ」
「間に合うと……いいね、……マコトの……ドレス姿は……見たい」
「えへへ、ありがと、エルマー」
エルマーははにかんで笑った。
まったく、良い奴だぜ。
そういや、新入生歓迎ダンスパーティはエルマーが私のエスコートか。
エスコートする女の子がボロいドレスじゃ、エルマーも困るもんな。
うんうん。
A組に帰り、終わりのホームルームである。
ダンスパーティに参加希望の人は、これから配る用紙にエスコート役と二人で記入して後日出すように言われた。
だんだんダンパが近づいてくるなあ。
緊張する。
飛空艇を探さないとなあ。
起立礼で、今日の授業は終わりだ。
さーて、探すぞう。
「カロルは錬金?」
「うん、ごめんね、飛空艇探しを手伝ってあげたいんだけど、二年生が帰って来たから薬品の在庫が減っちゃってて」
「いいよいいよ、また晩餐で会いましょう」
「最初の大迷宮で死人が二人も出たんで、みんな真剣になっちゃって、ポーションが飛ぶように売れるわ」
たしかに、同学年の生徒が遭難したって聞いたらマジになるよなあ。
「そういや、次のガドラガ大迷宮の実習に来てくれないかって言われてるけど、カロルは行けるかな?」
「え、うーん、一週間学校を空けるのはきついかなあ。薬品は切れちゃう時があるから」
「そうかー」
残念だなあ、カロルと一緒に旅行に行きたかったけど、まあ、後でも良いかな。
「じゃあ、また後で、ごめんねマコト」
「いや、いいよいいよ、大丈夫」
カロルは鞄を持って教室を出て行った。
入れ替わるようにコリンナちゃんがA組に入ってきた。
「マコトー、探索だろ、手伝う」
「お、コリンナちゃん、助かるよ」
カロルに振られても、私にはコリンナちゃんという心強い味方がいるから大丈夫。
コリンナちゃんは探索向きな感じだしね。
「まずはどこだ? 図書館?」
「図書館で資料をあたろう。その後廃神殿でビアンカさまの映像、あと有りそうなのは大神殿かあ」
「大神殿は土曜にいったとき調べれば?」
「そうだね。そうしよう」
リンダさんの顔を見るのは後回しにしよう。
絶対入浴剤をくれと言うに決まってるし。
わたしたちはA組を後にして、図書館に向かった。
ガラス窓越しに見る空は暗くて、雨がしとしと降っていた。
「寒いねえ」
「寒いよねえ」
日が陰って雨が降るとてきめんに寒くなるね、この季節は。
廊下を二人で歩く。
「そういや、魔法塔に交通局というのがあって、飛空艇の船籍簿があるそうだ」
「お、ビアンカ号の書類も残ってる?」
「蒼穹の覇者号ね、ジョンおじさんが聞いて見てくれるそうだよ」
「よく考えたら、マコトの交遊範囲はすごいよなあ、王様から、魔法長官から、教皇さままで、社会のトップと繋がっているな」
「まあ、聖女候補だからねえ、痛し痒しだよ」
「ちがいない」
コリンナちゃんと顔を見あわせて笑った。
まったく、変な立場だよねえ。
よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。
また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。




