第218話 その名は『蒼穹の覇者号』
美術室から戻るとお昼であるな。
「今日はどうするんだい、キンボールくん」
「ひよこ堂ですね、でもケビン王子とジェラルドは上級レストランでビビアン様のお守りです」
「ぐっ」
「ばれてますな、王子」
そう、何回も騙されんぞ。
そして、あまり度々になると、ビビアン様が怒鳴り込んで来るからね。
「わ、わかったよう。明日はどこに行くの?」
「明日はまたどこか安いランチを探しますかね」
「ふむ、王都のランチ事情を知るのも、王族の勤めですな、王子」
「そうだね、ジェラルド、じゃあ、明日ねキンボールさん」
ケビン王子とジェラルドは席を立って、教室を出て行った。
なんで、ケビン王子に懐かれてるかなあ。
「おっす、マコト、今日はひよこ堂か?」
「ああ、そうだよ、カーチス」
B組にいる派閥員がやってきた。
ついでに、つやつやのロイドちゃんも。
「ロイド王子はポッティンジャー派の昼食会には行かないんですか?」
「行かないよ、あそこつまんないし、聖女派閥の方が面白いからね」
「ジュリエットもロイドさまがいる聖女派閥が好き。それで、今日はロイドさま、つやつやで良い匂いで好き」
「ああ、そういや、昨日、ロイド王子が浮気してたよ」
「ぎゃあっ! なんでチクるんだよっ、マコトっち!!」
「まああっ! わたくしという者がありながらっ!! きいいいっ!!」
「いたいいたいっ!!」
ロイドちゃんはジュリエット嬢にひっかかれた。
いいきみである。
「さてと、じゃあ、みんなでひよこ堂へいこー」
「「「「おーっ」」」」
聖女派閥がぞろぞろと廊下を行くのである。
そこのけそこのけ。
とはいかないが、ほどほどに広がって歩く。
階段の所で、ヒルダさんと合流し、出入り口の所で、ゆりゆり先輩が合流した。
今日はライアンくんも来たぞ。
みんなでぞろぞろとひよこ堂まで歩く。
空は曇ってるなあ。
公園でご飯を食べるつもりだけど、雨が降ったらやだなあ。
ひよこ堂へみんなで入る。
今日は早かったからか、すいてるね。
王子様がいないのでクリフ兄ちゃんがあからさまにほっとした顔をしておるな。
ロイドちゃんはおるぞ。
ライアン君が店内で迷ってる感じなので声をかける。
「どうしたの?」
「あ、領袖、何を買おうか迷ってしまって」
「甘いのは大丈夫?」
「わりと甘い物も好きです」
「じゃあ、聖女パンと、あとは好きなパンを選んで、ソーダを買えば良いと思うよ」
「そうですか、そうします」
ライアン君は聖女パンとクリームコロネを頼んでいた。
甘い物好きなのね。
私は聖女パンと、卵ベーコンにしておくかな。
分厚いベーコンが食べたい。
北方食堂には、また行こう。
パンを持って、みんなで自然公園へ。
まいどまいどで何時もここの芝生だね。
「空が持てばいいけどなあ」
「午後から雨って聞いたから、あぶないかも、早く食べましょう」
「そうだね、とっとと食べて学園に戻ろう」
まだ、春と言っても、雨が降ると冷えるしね。
芝生に敷布を引いて、パンを食べる。
うまうま。
聖女パンはどうして何時も美味しいのか。
「わ、これ美味しいですね」
ライアン君がエルマーに話しかけていた。
「聖女パン……も、おいしい……が、マヨコーンも……いいよ」
エルマーはマヨコーンをちぎってライアン君にあげていた。
「あ、不思議な味ですね、これは次食べよう」
「マヨコーンは……真理」
どんだけエルマーはマヨコーン好きなんだろうか。
午後は、エルマーとジョンおじさんにビアンカさまの小型飛空艇の事を聞こう。
魔法塔になにか情報は残ってないかな。
みなが食べ終わったぐらいの時にぽつぽつと雨が降り始めた。
「わ、早く帰ろう、マコト」
「そうね、みんな、学園に帰るわよ」
「「「「はーい」」」」
みな、小走りで学園に戻る。
まあ、すぐそこだからそんなには濡れないね。
みんなが校舎に入った瞬間、ざあああっと降りが激しくなってきた。
雨の降る匂いがするね。
あれは、雨粒と土が反応して出る物質の匂いだそうだ。
前世の豆知識番組で見た。
さて、時間が少しあるな。
図書館でも行ってみるか。
「私は図書館行くけど、みんなは」
「私も行こうかな」
「いくよ」
付いてくるのは、カロルとコリンナちゃんのようだね。
派閥のみんなに手を振って別れる。
みな、思い思いの所で昼休みを過ごすようだ。
校舎から図書館へは屋根付きの渡り廊下でつながっている。
昼休みなんで、意外と人がいるな。
中に入るとルカっちがカウンターで貸し出し処理をしていた。
私に気がつくと、にやっと笑って手を振ってくる。
うーん、ルカっちに聞くのは放課後がよさそうだね。
「うん、意外に錬金の本が揃ってるわね」
カロルが錬金術の棚の前で独り言を言った。
「珍しい本とかは無い?」
「そんなに無いわね、大体読んだ事がある本だわ」
カロルはどんだけ読書家なのか。
コリンナちゃんは数学の棚で本を引っ張り出している。
乗り物の棚、飛空艇の本を探す。
あったあった、飛空艇図鑑だって。
引っ張り出して読んでみる。
絵が多くて良いな。
へー、一隻ごとにデザインがずいぶん違うな。
昔は沢山あって、戦争にも使われたそうだね。
軍艦なんかもある。
いまは数が少なくなったので、国家の行事ぐらいにしか使われないそうだ。
お、ビアンカさまの飛空艇の絵もある。
意外に大きい。
小型車ぐらいかなと思って居たけど、前世の漁船ぐらいはありそう。
プロペラが上部に四つついている。
飛空艇の名前は『蒼穹の覇者号』だそうだ。
かっけー。
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