第208話 放課後は入浴剤制作の準備
キーンコーンカーンコーン。
「んくっ!」
やっと実験の時間が終わったので背伸びをした。
やれやれ。
そろそろ飽きてるんだけど、午後の授業は他にする事も無いからなあ。
こんな事なら入学までに中級光魔法を全部覚えないで、ちょっと残しておけばよかったなあ。
「おつかれさま、マコトくん」
「はい、ジョンおじさんも、エルマーも、お疲れ様」
「おつかれ……」
二人はこちらも見ないで羊皮紙に数値を書き込んでおる。
まったく、研究馬鹿どもめ。
エルマーと一緒にA組まで歩く。
あー、しかし、飛空艇に乗り込んだのに見て回る事ができなかったな。
船室が良いのは解ったが、私とかコリンナちゃんは三等船室で狭そうだ。
しかし、コリンナちゃんは大迷宮に行って大丈夫だろうか。
戦闘力皆無だし、かといって魔法が得意なわけじゃなし、計算は迷宮ではあまり意味が無いし。
あぶないよなあ。
うーむ。
まあ、考えて居てもしょうが無い、二年になる前に考えよう。
A組についたので、席に付く。
カロルはもう帰っていた。
「錬金はカロルの錬金室で? 錬金実習室?」
「私の所の方が素材が揃ってるから良いと思うわ」
まあ、そうだね。
錬金実習室といっても、薬草を完備してる訳じゃ無いから、どっかから買ってこないといけないし。
カロルの所なら、素材は揃ってるよね。
アンソニー先生が来て、ホームルームだ。
今日から二年生が戻ってきたが、あまり一緒になって大騒ぎしないように、との事。
迷宮という非日常な場所から帰ってきた生徒は往々にして馬鹿騒ぎをするらしい。
パーティに死人がでなかったらそうなるわな。
夜のレストランとか、予約で一杯になるそうだ。
起立、礼、をして放課後だ。
んー、やっぱり放課後の雰囲気は良いなあ。
あれ、エステル先輩が入ってきた。
「いいかね、マコトくん」
「私ですか、なんでしょう」
エステル先輩はなんだかげっそりしていた。
ああ、聖女の湯解放戦線につるし上げられたかな。
「一部の女生徒達がだね、聖女の湯を毎日やれとねじ込んできてだね」
「はい、結果どうなりました?」
「週に二回、月曜日と水曜日に執り行う事になったが、薬剤の作成は可能だろうか」
「ええ、大丈夫、準備しときましたよ」
「ありがたいっ、強硬派の子は、金曜の夜も絶対、デートに行くからっ、て聞かなくてねえ」
「大変でしたね、エステル先輩も」
「あと、ユリーシャがミーシャと入るから小瓶をくれと泣いていた」
あの人はもう。
お風呂出禁になったのは自業自得だからなあ。
「小瓶ねえ、カロルある?」
「分包瓶はありますよ。上位貴族向きに売りましょうか?」
「うん? 安く卸してくれるのでは?」
エステル先輩がいぶかしげな表情を浮かべた。
「地下大浴場には安く卸しますけど、分包は高く売ります、わがままな要求ですからね。あと王家には一回分五金貨で卸しますよ」
「五金貨!! それはむしり取るね」
「安くすると、絶対に転売されますので、それの予防です」
「ああ、確かにね、それはあるね。で、分包の方はいくらにするのかね」
カロルはふふんと笑った。
「金貨一枚で一回分です」
「そ、それは高いのではないか?」
一回一万ドランクかあ、豪華なお風呂だなあ。
「だが、まあ、上位貴族なら買うか。文句があれば地下大浴場に行けばいいのだしね」
「そうですよ。あと、これを転売されているのを見つけたら、その人には二度と売りません」
「あ、瓶にシリアルナンバーを入れるのか」
「はい、そういう分包瓶がありますので」
「儲かりそうだね、オルブライトさん」
「儲けます。で、マコトに渡します。聖女派閥のメンバーにおごったりするのにお金がいりますからね」
「わー、それは嬉しいなあ」
わーい、お金儲け~。
っても、一番儲かるのは賞金首狩りなんだろうけどな。
でもそんな血生臭い儲けはいやである。
「在庫管理にコリンナも使いましょう、いい稼ぎになるはずよ」
うんうん、コリンナちゃんには積極的にお金をおとさねばね。
「解った、じゃあ、後でペントハウスに薬剤を届けてくれたまえ。ユリーシャには私から言っておくよ」
「おねがいします、エステル先輩」
ふらふらと、エステル先輩はA組を後にした。
「さ、錬金室に行こうか」
「そうね、ちゃっちゃと作って配ろう。エルマー、後で入浴剤渡すから、男子寮の舎監生の人に渡してね」
「わかった……。あと……、僕も……、分包瓶が……欲しい」
「なんでよ。個室のお風呂で使うの?」
「僕は……、昨日……、大きなお風呂に……入って、……とても……快適だった……から、……いらない。……お母さん……よろこぶ」
「わかったわかった、親孝行だねえ、エルマーは。一本でいい?」
「とりあえず……、一本……、多分……、いっぱい……欲しがると……思う」
……この入浴剤さあ、大ブームにならないか?
今からヤバイ感じだな。
「売れるわねっ!」
カロルがぐっと握りこぶしを作った。
意外にカロルも商売人であるよ。
よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、評価とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。
励みになりますので。
下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと、この作品が成長して、いろいろな展開に繋がるので、是非ご検討くださいませ。




