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第207話 最凶と思っていた寄生魔獣はそんなでもなかった

「やあ、君が聖女候補のマコト・キンボール嬢かね」


 なんか、キラキラとした金糸のついた肩当てのおっちゃんが来たぞ。

 ゴツい帽子もかぶっておる。


「私は、黄金の暁号の船長、アーヴィング・クーパーだよ、お見知りおきを」

「あ、どうも、着陸前に飛び込んで来てごめんなさい」

「いやいや、それはいいよ。それで、寄生魔獣を殲滅したと聞いたが、本当かね」


 ああもう、このオヤジは、こんな人の多い甲板で、そんなデリケートな話を……。


 ん?


「ええと、寄生魔獣が付いた患者を搬送するのは国法に……」

「え? ああ、それは北の迷宮に居る種だ、ガドラガ大迷宮の寄生魔獣はそれほど繁殖力はないよ。なんだね、廃都になるかと思ったかね」


「「なーんだ」」


 ヒルダ先輩と一緒に胸をなで下ろした。


「注意は必要だが、それほど強い種ではないからね、そうで無かったら船に乗せる事は許可しないよ」

「都市を破滅させたと聞いてましたから、焦ってしまいましたよ」

「帝国が使った種は北の物に更に手を加えた凶悪な物なんだ、大迷宮の奴はそれほどでも無いね。そうでなければ、ガドラガ迷宮都市など生まれないよ。結構な割合で寄生型魔獣の幼虫が冒険者にくっついて街に入り込むからね」

「どうするんですか、そういう時は」

「なに、魔法使いが感知の魔法で探して、焼くね。あいつらは迷宮でも嫌われ物だから、よく道中に冒険者に焼かれてるよ」


 はあ、びっくりして損した。

 そんな脅威な物でもなかったのか。


「寄生されていた生徒は治療して治しました。船の中に居た寄生魔獣は殲滅しましたよ」

「そうか、ありがとう、どうかね、キンボール君、学園を卒業したら、この船の船医として働かないかね?」


 わあ、飛行艇の船医さんかあ、世界中回れて楽しそうだなあ。


「かんがえておきますね」

「うむ、職に困ったらいつでもきなさい」


 船長さんは笑いながら艦橋らしい部屋に向かって歩いていった。


 ヒルダ先輩と見つめ合った。


「空騒ぎ」

「正直すいません領袖」

「まあ、そういう事もありますよ」


 世間に寄生魔獣の恐ろしさが伝わりまくっているのがいかんよな。

 過剰反応であったよ。

 本当にやばかったら、アントーン先生が何を言っても船長さんが搬送させてくれないよな。



 私は下ろされたタラップを一番に降りた。

 ヒルダさんは組のみんなと降りるといって別れた。


 階段を下まで降りると、聖女派閥のみんなとバッテン先生がいて、私を見て手を振った。


「いや、私は迷宮から帰ってきたわけじゃないから」

「なんとなくみょん」


 コイシちゃんが笑って言った。


「どうだった、キンボールさん、重傷者は助かったか?」

「ええ、助かりました、教えて頂いてありがとうございます、バッテン先生」

「礼を言うのはこっちだよ、学校行事で何人も死んだら困るし」


 バッテン先生は安堵の表情を浮かべた。

 先生も良い先生だよね。


「迷宮実習って、そんなに死者が出るものなんですか?」

「まさか、普通の年は一人も出ないよ。よほどの事故の時だけだね。浅い階で冒険の基礎を学ぶ実習だからね。今回はとんでもなく運が悪かったんだろう」


 そりゃまあ、アップルトンは、お貴族様の魔法学園で、冒険者を育てるガチの学校じゃないからなあ。


 五時限目の予鈴が鳴った。


「あ、魔法実習に行かないと、マコト、また放課後ね」

「うん、カロル」


 放課後はカロルと入浴剤作成だな。


「その前に……、実験……」

「はい……」


 正直、もう光魔法の実験は飽きてるんだよなあ。

 でも、ジョンおじさんとエルマーは飽きることの無い知的好奇心で私の光魔法を実験したがるのだ。

 よくもまあ、実験の種が尽きないな。


 私は、エルマーに引きずられるようにして魔術実験室に向かうのであった。




「はっはっは、ガトラガ大迷宮の寄生魔獣を伝説の凶悪寄生魔獣と間違えて慌てて殲滅せんめつしたのかい、そうだなあ、知らなければ怖いと思うだろうな」

「笑い事じゃないですよ、ジョンおじさん」

「ははは、ごめんごめん。しかし、アントーン先生は良い判断だったな、なかなか出来ることじゃないね。偉い先生だ」

「職を……、なげうつ……覚悟で……、飛空艇に……、瀕死の……、生徒を……のせる……、偉い……」

「まあ平然と最下層に寝かせていましたから、ちょっと変だなとは思ったのですけどね」

「生徒が死んだら、最下層で焼こうと思ったのだろうね」

「あ、やっぱり……」


 先輩に蟲をたからせたままにしていたのは、体が攻撃魔法に耐えられないと判断したからだろう。

 本当にイルッカ先輩はギリギリだったんだな。


「しかし、生徒二人が死んだとは、なんとも痛ましい、アップルトン魔法学園としては、十年ぶりぐらいの迷宮実習での死者だね」

「十年……ですか」


 ベロナ先輩は運が悪いなあ。

 できる限りの事はしてあげたいけど、ガドラガ大迷宮かあ。

 二年になって、自分のパーティで行きたかったけどなあ。

 ちょっくら覗いてくるのも有りかもなあ。

 でも、一週間かあ。


 カロルは来てくれないだろうなあ。

 一週間も離れるのはいやだなあ。

 他に誰か一人呼べそうだけど……。

 コリンナちゃんは論外だし、カーチスか、カトレアさんか、コイシちゃんか、エルザさんか。

 剣術部の人たちだったらエルザさんかなあ、あまり仲良くなってない気がするし。


「あー、カロルが一緒に来てくれないかなあ」

「真面目に……、実験……」

「あ、さーせん」


 エルマーに怒られちゃったよ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 似てても脅威度が違う種!あーびっくりした。 多分冒険者に迷宮都市やその近隣の住民、関係者なら知ってるけど、他の人達がビビってる分には「脅威を過小評価されるよりはいい」くらいでそこまで周知…
[良い点] 作者さん、更新はお疲れ様です! なるほど、寄生魔獣はそこまで恐ろしいではないですか。しかし、またも帝国、どんだけエグい国ですかね!? 危険のキメラを安全確実に殲滅するなら、三年生の精鋭や教…
[一言] >アップルトン魔法学園としては、十年ぶりぐらいの迷宮実習での死者だね 過去話で毎年メイドの殉職が出てるとか言ってたと思うけど生徒以外は集計対象外かな? と言うか護衛メイドや諜報メイドなら今回…
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